あやかし商店街(二) 二
そして、二人は商店街の中に入ると、次から次へと魚やら野菜やら買ってもいないのにくれる妖の住人達に会うと真司の両手は更に塞がってしまったのだった。
勿論、菖蒲も同様である。
真司と菖蒲は、なんとか菖蒲の店(骨董屋)に着くと裏口へと回った。
「「ただいま」」
ガラッと裏口の戸を開けると
「お帰りなさーい!!!」
と、陶器の付喪神である雪芽ことお雪が真司に突進したのだった。
「うっ」
と、またもや鳩尾に頭が当たり軽く呻く真司。
真司は、その衝撃で抱えていた荷物を落としそうになった。
(いや・・・もう、慣れたからいいんだけどね・・・)
そう、お雪は真司が商店街に来訪する度に、いつもこうやって突進されるのだった。
「えへへー☆」
真司に抱き着きながら顔を上げ、ニコリと笑うお雪。
「ほれ、二人とも。寒いから中に入るよ」
「はーい♪」
「はい」
「あ!私、一個持つ~!」
そう言って、真司の荷物の一つを抱えるお雪に、真司は優しく微笑みかけた。
「有り難う」
お礼が嬉しかったのか、お雪は花のような笑顔で
「うん♪」と言うと、真司の隣に行き、二人は店の中へと入ったのだった。
§
ドンッと持っていた荷物を全てがテーブルに乗せると、真司は深いため息をついた。
「重かったぁ~・・・」
「今日は一段と多いね!全部貰い物なの?」
リスのように首を傾げるお雪は真司と菖蒲を交互に見た。
菖蒲はクスリと笑い、お雪の小さな頭に手を乗せた。
「今日は違うぞ?いや、貰い物も確かにあるがな。お雪や。そろそろ、感じぬか?」
「???」
お雪はつぶらな瞳をパチパチとさせた。
そして、やっと気づいたのか
「あ!」と声を上げた。
「もう帰ってくるの?!くるの?!」
グイグイと菖蒲の袖を引っ張るお雪を、菖蒲は優しい手つきでお雪の頭を撫でた。
「うむ。」
「やったぁ!!白雪お姉ちゃんが帰ってくる~ぅ♪わーい!」
お雪は、着物の柄や髪飾りの雪兎みたいぴょんぴょんと菖蒲と真司の周りを跳ね歩く様を見て、二人はクスクスと笑ったのだった。
「さて、と。」
菖蒲は細長い紐をどこからか取り出すと、あっという間にたすき掛けをした。
「白雪が帰ってくる前に、鍋の用意でもしようかねぇ」
「お鍋~♪」
「でも、白雪さんって雪女なんですよね?大丈夫なんですか?」
真司は学ランの上着をハンガーに掛けながら言った。
「うむ。そこは問題ないぞ。寧ろ、熱いものは白雪の大好きなものだからな」
「うん♪」
「へぇ。てっきり僕は、雪女は熱いのが苦手だと思ってました」
「ん?そうだぞ?」