あやかし商店街(二の伍)~その後~ 二
そして真司は、ふと、思った。
「その蝶は、今は何処にいるんですか?」
「ここに」
と、白雪が指さした場所は自身の帯だった。
「え?帯の中?」
「はい」と、白雪は微笑んだ。
「出ておいで、お前たち」
そう白雪が言うと、帯の中からフワリと例の数匹の白い蝶が現れた。
帯から出ると、白い蝶はパタパタと白雪と隣で座っているお雪の肩に止まった。
「あはは~♪」
お雪は白い蝶が肩に止まると、楽しそうにしてツンツン突つき始めた。
お雪の肩に止まっていた蝶は、まるでお雪と遊んでいるみたいに周りをパタパタと飛び始めた。
お雪は、捕まえようとして炬燵から立ち上がり蝶を追いかけ、家の中をグルグルと走り回った。
「まてまてーぇ!」
真司・菖蒲・白雪は微笑ましく思いながらお雪を見ていた。
「この蝶は、雪女が生まれると同時に現れるんです。だから、この蝶達は私の家族でもあるんですよ」
「家族ですか」
「はい。名前もありますよ?」
と、白雪はまずお雪の周りを飛んでいる蝶を指さした。
「あの蝶は、露。私の肩に止まっているのは花。そして、あれが菊。紫」
「へぇー。僕には同じ蝶にしか見えないですけど、ちゃんと名前があるんですね」
「普通は付けません。ただ・・・私は、ずっと一人でしたから」
と苦笑する白雪に露以外の蝶は、まるで白雪を励ますみたいに白雪に集まり始めた。
「ふふっ、有り難う皆。」
白雪は蝶の気持ちがわかるのだろうか?白い蝶に向かって優しく微笑みかけ、撫でるように優しく触れた。
ーその時だった。
「あー!!」
と、お雪の驚く声が聞こえた。
話していた真司と白雪、そして、話を聞きながらも、のんびりと茶を啜っていた菖蒲はお雪の方を見た。
お雪は、いつの間にか庭に出て空を見上げていた。
「ゆきだー!!」
お雪は、手を空に掲げて楽しそうにしてはしゃいでいた。
「あ、ほんとだ」
「初雪じゃな」
「綺麗ですねぇ」
三人は、ちらちらと降り続ける雪を家の中から見ていた。
真司は、いそいそと炬燵から出ると庭に出て夜空を見上げた。
「・・・・・・・・・」
ほぅ、と息を吐くと、息は白くなった。
「冬だね♪」
はしゃいでいたお雪は、庭に出てきた真司を見てニコリと笑って言った。
真司もニコリと笑った。
「そうだね」
そして、また雪が降る空を見上げた。
(明日からは一段と賑やかになりそうだな。)
そう思い、クスリと笑った真司だった。
(終)
next story→あやかし商店街(参)
【予告】
季節は、まだ冬…しかし、ある妖怪の心だけは既に春が訪れていた…あかしや橋のあやかし商店街(参)では新キャラ登場か?!
※新規小説作成で投稿します。
宜しくお願いします。