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File7 受付

慶は、一度自宅に戻るとシャワーを浴びてすぐに会社へ向かった。

取り合えず時間内には会社に着くことができたが、これからが勝負だ。

チャイムが鳴る8:15までに、更衣室で一旦社服に着替え、

自分の受け持つ現場に行かなければならない。


慶は焦りながらも、焦っていることを表に出さないようにし、

当然であるかのように更衣し、現場へ向かった。


(ふ〜、なんとか間に合った・・・)


現場へ到着するとすぐ

「お、慶、今日は遅かったな〜〜。

 昨日なにかいいことでもあったのか?」

すぐに亮輔が擦り寄ってきた。


「いや、何もないっすよ、まじで。

 ちゃんと看病してきただけですから・・・」


「な〜〜んだ、オマエら面白くないの!!」


「亮輔さんこそ昨日は」


(キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ン)


「あチャイムだ」

慶は亮輔が昨日あゆみとどうなったのかと聞こうとしたが

結局聞けなかった。


朝礼が終わると、慶はさっそく新人を集め

今日の作業の説明を始めた。

簡単な説明が終わると、あとは現場の担当者へ付かせ

作業内容を慶が確認するという形だ。



10:40



慶が亮輔と休憩室で休憩していると、岡本と山田が休憩室へ入ってきた。


「ああ、ちょうどよかった!!」

実は岡本は慶が休憩室へ向かうのを見計らって、休憩に来たのだ。


「中野さん!朝帰りお疲れ様!!」


「ぶっ!!」

慶も亮輔も飲んでいたお茶を噴出した・・・。


噴出して口の周りについていたお茶を手で拭きながら

「なんだよ、急にびっくりするなぁ!」

慶は動揺を隠すかのように言った。


「朝、見ましたよ〜!

 綺麗な女の人の運転する車で、セントラルホールの

 駐車場に入っていったでしょ!」


「えっ?、なんでそんな時間にそこ目撃するかな〜〜」


「だって、新入りは会社に早く来なくっちゃね!」


「てか、それ早すぎだろ?」


「いいんです、いいんです!

 それよりも彼女ですか?

 やっぱり彼女ですよね〜、朝帰りだしぃ」

岡本はニヤついた顔で慶に言った。


「残念ながら違います!

 彼女ではありません!」


「え!? じゃあ何なんですか?

 あんな綺麗な人滅多にいないし、

 だいたい、彼女じゃない人と朝帰りなんて変ですよ?」


「ん・・・。 それを言われると困るな・・・」


見かねた亮輔が

「ああ、慶の幼馴染でね、彼女今一人暮らししてるらしいんだけど

 昨日、熱があったみたいで、慶にヘルプがかかったの

 だからその時慶と一緒に居た俺が言ってこいって

 無理やり彼女ん家に泊まらせたわけ」

半分本当で、半分嘘の話を即座にでっちあげた。


「ふ〜〜ん、なぁ〜んか怪しいけど

 そうだったんですかぁ〜

 折角ネタができたと思ったのになぁ!」


「なんだよネタって!!」

慶は思わず突っ込んだ。


「でもあの人綺麗だったな〜」


「ん?誰?誰?

 誰が綺麗だったの?」

丁度そのタイミングで山下が休憩室に入ってきた。


「をっ!!」

山下は思わず声を上げたが、すぐに我に返った。

(この子達超かわいい・・・)

山下も岡本と山田の可愛さに驚いた。


「んで、慶さん、誰が綺麗だって?」


「ああ、この工場の受付をされてる女性の方の事を話してたんです」

岡本がすぐさまフォローを入れた。


「ああ、京子さんね!」

山下は慣れ慣れしく京子さんとか言っているが

実はほとんど面識はない。

工場でも一番の美貌の持ち主として有名な受付嬢だ。


「ああ、京子さんね・・・」

慶がなんだか暗そうな声で答えると

「さ、行くか〜〜」

亮輔がそれに合わせるかのように言い二人とも休憩室から出て行った。


「なんだ?あの二人・・・、ねっ!」

慶と亮輔の雰囲気が少し変わってしまったことに誰もが気づいていた。


それから山下は話題を変え、やたらと自分をアピールしようと、

5分ほど一方的にしゃべり続けた・・・。




「あ、それで昨日はあゆみちゃんとどーだったんですか?」

慶は亮輔と一緒に事務所へ向かいながら、亮輔に尋ねた。


「ああ、昨日? まあね!」


「なんすか!? そのまあね!って!

 いいな〜、亮輔さんはいつもモテモテで

 ゆきさんでしょ〜〜、あゆみちゃんでしょ〜、

 この前のプラネタリウムの彩ちゃんともいい感じだったし!」


「ははは、そうかね・・・

 きっと騙されてるだけだよ俺達!」

亮輔は自分がホステス達にモテテいるとは、自分ではまったく思っていない。

ただ、これが普通だと思っているようかのようだ。

人から好かれると言うことに関して、小さな頃からそうだったために無頓着なのだ。


「でも、いいっすよ、亮輔さん絶対モテモテだって!」


「でも香織ちゃん、俺が知ってる女の中じゃ一番綺麗だけどな〜」


そんな雑談をしている間に、事務所のドアの前まで来ると


(ガチャ)


丁度、事務所の中から1人の女性が出てきた。


「あ・・・、森山さん、中野君、こんにちは・・・」


(げっ・・・。)

慶は思わず心の中でそう思った。

事務所から出てきたのは、休憩室で丁度話の出た畑野 京子であった。


「ちわっす・・・」

慶は小さな声で挨拶を返したが、亮輔が挨拶を返す事は無く、

ただ、目を合わさないようにしていた。


京子は、軽く会釈をするとすぐに早歩きで去って行った。


「俺は京子さんが一番綺麗だと思います・・・。」

慶は小さな声でそう言ったが、亮輔は黙って事務所へ入っていった。



今日はノー残業デーであるため17:00になると、従業員は全員帰っていった。

慶と亮輔は、少し仕事が残っているため、まだ事務所に残っている。

慶の方が、少し早く仕事を済ませ、それから10分くらいして亮輔も仕事が終わった。


「亮輔さん、歓迎会しませんか?」


「ああ、そうそう俺もそれ考えてた」


それから二人は、次の土曜日に新入りの歓迎会を計画することにした。


「じゃ、これから歓迎会の打ち合わせに行くか!?」


「ああ、打ち合わせですね!?」


打ち合わせという言葉に意味は無く、これから外食に行こうかと亮輔が誘い

慶もそれに応えただけのことであった。


二人は結局いつもの居酒屋へ来ていた。

居酒屋へ着くと、慶がおもむろに携帯を取り出しメールを打ち始めていた。


「お、めずらしいな、オマエがメールするなんて」


「あ、すいませんちょっと待ってください。」

(約束だから仕方ない・・・)


「ははぁ〜〜、香織ちゃんか・・・」


「知りません!!」


慶は香織に香織の体調のこと、仕事が終わり亮輔と居酒屋にいることをメールした。

すぐに香織から返信があり、店に出勤する前にここにくると書いてあった。

そのメールを見た慶は

「げっ!!」

思わず声に出してしまった。


「ん?どうかしたのか?」


「ああ、すいません、後からちょっと香織がここに来るかもしれません・・・」

「いいすか?」


「ああ、いいよいいよ、俺も香織ちゃん見れるの嬉しいな〜〜」

亮輔はニヤついた顔でそう言った。


二人がビールを飲みながら、晩飯を食べ始めてしばらくすると


「やっほ〜!」

香織がやって来た。


「おっ!香織ちゃん、いらっしゃい!」

亮輔がすぐにそれに気づき香織を迎えた。


「オマエ、もう店出れるの?」


「うん、昨日慶が来てくれたから、もう元気になっちゃった!!」

香織は恥ずかしげも無くそう言うと、

勝手に慶のビールを飲み干した。


「あ〜あ、見てらんない・・・」

亮輔は香織が慶にぞっこんである事を確信した。


「亮輔さん、昨日はごめんね、慶と一緒にいたんでしょ?」


「なんで知ってんの?」


「だって、慶が自分の意思だけでわざわざ家まで来るはずないも〜〜ん!」

「きっと、亮輔さんが行ってこいって言ったのかな〜って思って」


「お〜、香織ちゃん、読みが深い・・・」


「慶、昨日はほんとありがとうね!」

「それじゃ、私もう行くから!」


「えっ!?はやっ!」


「だって、もう遅刻しそう」


「あ、もうそんな時間なんだ!」


「よかったら飲みにも来てね!」

「それから慶、明日も明後日もちゃんと私にメールするんだぞ!?」


「はいはい、わかってますよ・・・

 てか、亮輔さんの前でそんなん言うなよ・・・」


「関係ない! それじゃ、またね! バイバ〜〜イ!」


そういうと香織は急いで店を出て行った。


「なんなんだ・・・」


「台風みたいだったな・・・。 でも、慶にお似合いだぞ!」

「てかさ、何?毎日メールとかなんとかって」


「ああ、今日の朝約束させられまして・・・」


「はは〜〜ん、また寄り戻したか?」


「いいえ、そうじゃないんですけど、なんかそういう雰囲気で・・・」


「オマエ、付き合う前から尻に敷かれてるんだな〜〜」


「アハハ・・・、付き合う前って、付き合うかはわかんないじゃないですかぁ!!」


「ま〜いいじゃん、いいじゃん、オマエらいいコンビだよ、まじで」


そう言いながらも、慶は少しだけでも香織と会えたことが嬉しかった。


「しかし、店に出る前の香織ちゃん、マジで綺麗だったな〜」


「そうでしたかね?」

そうは言っているが、慶も同感だった。


「ねぇ、亮輔さん、言っていい?」


「ん? 何の事?」


「京子さんのこと・・・」


「ああ、それはいい」


「でも・・・」


「でもも、くそもない。 俺はふられたんだから・・・」


「でも、きっと京子さんだって今でも亮輔さんの事が好きだって思いますよ?」


「うるさいなぁ〜、もういいから。

 俺にはあゆみとかいるからいい!!」


「あ〜あ、そうやってあゆみちゃんに逃げてるんだ!?

 もしそうだったら、あゆみちゃんがかわいそうじゃないですか?」


「いいの、俺はあゆみが今好きなの!」


「へぇ〜〜、そうなんだ・・・。 うそつき!!」

慶はそうやっておちゃらけると、それ以上京子のことで話すのをやめた。


結局その日は、居酒屋を出ると二人とも帰ることにした。

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