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File6 夢のあと

翌朝



「ケイ! ほらケイ!

 起きなさい! 朝だぞ!!」


熱が下がって少し元気になった香織は

慶よりも早く起きて、慶を起こしていた。


「う〜〜ん、なんだよ〜〜・・・」


「遅刻するぞ!もう8:00だぞ!!」


「ええええ!! まじ!?」

慶はさすがに飛び起きた。


「うっそで〜〜す、今6:30」


「なんだよ、まじでびっくりした・・・。

 それよりオマエ熱下がったのか?」

そういうと、また左手を香織の額へあてた。


「うん、もう大丈夫!

 全然熱くないでしょ??」


「おお、結構下がるもんだな、オマエはやっぱ人間じゃねぇ・・・」


「朝から何よ!」

またいつもの二人に逆戻りしたかのようだった。



「ねぇ、ケイ・・・。

 昨日の夜の話、覚えてる?」


「ん?ああ、途中までは・・・」


「え〜〜? また〜〜? ・・・。

 やっぱりね・・・」

香織はさっきまでの元気が嘘であるかのように落ち込んでしまった。


「どうした、香織、気分でも悪くなったか?」


「ううん、何でもない・・・」

香織はそういいながら、昨日慶が買ってきたヨーグルトと

買い置きされていた、食パンにマーガリンを塗って慶に差し出した。

「はい、朝食」


「あ、ありがと・・・。

 ・・・。

 てか、何だよさっきまでの元気は!!

 どうした?香織」


「だって、昨日の事が夢みたいで・・・。

 なんか夢から覚めた気分・・・」

そう言うと、香織は大粒の涙を流した。


「あ、香織・・・・。

 ごめん・・・。

 そだ、また今度さ、昨日の話の続きしよう!

 ね、時間はいっぱいあるしさ!」

慶は香織にとって昨日の話がどれだけ大切なものだったのか

改めて知った。


「だって、ケイがここから仕事に行ったら、

 こんどはいつ連絡してくれる?

 会ってくれるの?」

香織はまた以前のように自分の目の前から消えてしまうような気がして

慶と離れてしまうのが怖かった。


「わかったから、んじゃさ、毎日・・・。

 毎日メールくらいする。

 それから電話も!」


「ほんとに?・・・」


「ああ、ほんとほんと絶対する。

 だからそんなに泣いたりさ、落ち込んだりすんなよ」


「わかった・・・」


そういうと、香織はテーブルの椅子に座り


「私も食べる・・・」


慶に出したはずのヨーグルトを食べだした。


「ケイも早く食べてね、ホントに遅刻しちゃうよ?」


「あ・・・、忘れてた・・・。

 てかさ、それ、おれのヨーグルト・・・」


「エヘヘ、悪いわね!

 でも、ちゃんと冷蔵庫にもう1個あるでしょ?

 私の分が」

香織は頬に溢れた涙を拭きながら、慶に明るくそう言った。


「ああ、そうだ2個あったんだ」

そういうと慶は冷蔵庫からもう1つのヨーグルトを取り出し

テーブルに戻ると食べだした。


香織は少し気が休まったのか、笑顔を取り戻し

慶がヨーグルトを食べる姿をじっと見つめながら

ヨーグルトを食べていた。



「ケイってさ、昨日お酒飲んでたんでしょ?」


「ああ」


「ここまでどうやってきたの?」


「あ・・・、タクシーだ・・・。

 セントラルホールの駐車場に車止めたまんまだ・・・」


「仕方ないな〜〜、じゃあご飯食べたらそこまで送ってってあげるね」


「だって、オマエまだ熱あるだろ、いいよ、どうにかするから・・・」


「これくらい大丈夫!

 少しでもケイと一緒にいたいから・・・」


「えっ・・・。

 あ、そう・・・。

 それはどうもありがとう・・・」

素直にそういわれると、慶はなぜか少し緊張してしまった。


「アハハ、ケイってほんとかわいい」


「なんだよ、かわいいって・・・」


二人は朝食を終え、香織は慶を送るための身支度をし

慶はそれを玄関で待っていた。


「お〜い、ちょっとやばいから急いでな!」


「はいはい、もうちょっと待ってね!

 すぐ行く」


そういうと、髪を整え、少しラフな服装に着替えた香織が

玄関へやってきた。


(あれ、香織ってこんなに美人だったっけ?)

慶はあらためて、香織の美しさに気づいた。


「ねぇ、ケイ、ちょっと待って。

 昨日のお礼したいんだけど・・・」


「あ、別にいいよそういうの」


「違うの、ちょっと、少しだけかがんで欲しいな・・・」


「ん?こうか?」

そういうと慶は膝を少し曲げ、香織の顔の高さまで

自分の顔の高さを合わせた。


香織は少し照れながら、慶の額にキスをした。


慶はそれに驚いた。

「わっ、びっくりした!!」


「エヘヘ〜〜、昨日はありがとう!」

香織は何事もなかったかのようにお礼を言った。


「でも、久しぶりだな・・・」


慶は我に返り、とにかく時間が無いことで頭がいっぱいになった。

「てか、早く出るぞ、まじ遅刻しちゃう・・・」


「ああ、そうだったね、急がなくっちゃ!」

そう言うと、二人は香織のアパートを出た。



香織のアパートから、セントラルホールまでは

市街地の中を通る道で、多少混雑していた。



「ところでさ、何がひさしぶり?」


「え?」


「さっき、家出る前

 オマエ言ってただろ?」


「ああ、あれね・・・」


「うん、それ」


「あのね、ケイにチューしたの・・・」

「きっと4年半振りくらい?・・・」


「ああ、そっか・・・。

 もうそんなになるんだな・・・」


「うん・・・」


「でもさ、それから今まで1度も会わなかったって

 不思議だよな・・・。

 こんなに近くに住んでるのに・・・」


「私はね、何度かケイを見かけたよ・・・。

 でも、声掛けるのが怖くって、

 隠れたりしてた・・・」


「そうだったんだ・・・」


少し車の中の空気が重くなった。

二人はもうすぐ、別れてしまうため今はそういう話をしている時間が無い。

お互いにそれをわかっていてか、それからの会話ははずまなかった。


「もうすぐ着いちゃうね・・・」

香織が口を開いた。


「ああ、いいじゃん、どうせまた会えるさ」


「ほんとに?」


「ああ、ほんとほんと」


「絶対だからね!」


「ああ、わかってるって」


「メールとか電話もしてよね!?」


「ああ、するする、ちゃんとするから」


「約束だよ!?毎日だからね!?

 忘れたら絶対許さないからね!?」


そういう会話をしているうちに、慶が車を止めている場所に到着した。


「それそれ、俺の車」


「へ〜〜、なんかカッコいいじゃん」


「ああ、今度乗せたげるな!」


「ほんと?」


「ああ、それじゃ、時間ないから俺行くな」


「うん!

 ケイ・・・。

 ホントありがとう!」


「ああ、いいから、いいから!」


そういうと慶は香織の車を降りて、自分の車へ急いで乗り込んだ。

香織は慶が駐車場から出てきて、慶の顔が見えなくなるまで

手を振り続けた。


「はぁ〜〜あ、帰っちゃった・・・」

「でも、な〜〜んかよかったな〜〜」

香織はそう思いながらアパートへ引き返した。

香織の心はいつもより晴れ晴れしていた。

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