表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/7

File4 新入社員

ゴールデンウィークも終わり、5月も中盤にさしかかった頃。


「慶、慶、6月以降の生産数大体見えてきたぞ〜〜」


「お、ついにわかってきましたか〜〜!」


慶と亮輔は、6月の生産に対する人員不足数を早速計算し始めた。


「やっぱ、こことここは絶対1人ずつは欲しいですね」


「うん、やっぱそうだな〜」


「あと俺的にはここにも1人欲しいんですけど・・・」


「う〜〜ん、そうか。そこは係長に相談してみないとわからんな〜」


亮輔は2人の補充で当分はどうにかできると思ってはいるのだが

慶はあと1人追加した方がいいと判断している。


「なんでさ、そこあと1人必要なわけ?」


「ああ、ここですね、意外とストップ多いんですよ。

 で、準備っていうかそこをストップさせないための

 準備+余った時間で他の工程の育成とか

 ま〜、他の工程の準備とかできたらいいな〜〜って」


「ああ、なるほど〜〜。 そういうわけか・・・」


亮輔はしばらく考え、

「んじゃ、やっぱ係長に3人必要って強く言ってみるわ」


「お願いします!」


亮輔は慶を信頼しているせいか、慶の意見にはよく耳を傾けてくれた。



それから1週間後



「慶、昨日言ったけど、今日の昼から新人3名引渡すからな」


「あ、はいはいお任せあれ」


「今、有る程度の教育してるんだけど、3人とも女の子でさ

 2人はめっちゃかわいいぞ!」


「えっ、まじっすか!?」


「ああ、特にな岡本って子、超かわいい」


「おお、それは楽しみだ・・・」


「まぁ、それはさておき昼からは現場の方の説明と注意事項

 オマエが全部指導するように」


「えっ、俺そんなのやったことないっすよ〜〜」


「ま〜、大丈夫頑張ってくれ」


慶と亮輔は、新人3名のスケジュールを軽く打ち合わせた。



午後になると、早速亮輔が新人の女の子を現場へ引き連れてきた。

「え〜と、紹介します。

 君達が配属される工程のリーダー 中野 慶 君です。」

亮輔は早速、新人に慶を紹介した。


「中野です。まだ新人リーダーなんですが、皆さんのお役に立てるように

 頑張りますので、皆さんも是非期待に応えてくださいね」


「なんじゃ、そりゃ・・・。なんの挨拶だよ・・・」

亮輔が慶に少し意地悪を言ってみた。


「いいじゃないっすか、挨拶ですから〜〜・・・」


それを見ていた3名は緊張の糸がほぐれたのか

クスクスと小さな声で笑いながら顔を見合わせていた。


「えーとじゃあ、中野に君達の紹介をするね」


と言うと、一番左側の子を指し、順に

「山田君、次が岡本君、で西田君ね」

と紹介した。


「よろしくお願いします。」

3人は少し声を合わせながら、慶に挨拶した。


「いえいえ、こちらこそ」

慶もそれに笑顔で応えた。


「では、あとは中野が全部君達に教えるから

 朝教育したこと、これから中野が教えること

 全てこの工場では守るようにして下さいね」

亮輔は真面目な顔に戻り、3人にそう言った。


「んじゃ、慶、あとはよろしく!」

そういうと、亮輔は事務室の方へ戻っていった。


「・・・・・」

「え〜〜と、あ〜〜、一応どういう順番で教えようかと考えてはいたんだけど

 いざ本番となるとなんか緊張しちゃうな〜〜・・・」

慶は思わず本音を漏らした。


すると真ん中に立っている岡本が

「がんばってください!」

と笑顔で、慶を励ましてきた。


(まじで、この子かわいいよ・・・

 なんて、綺麗な瞳と顔立ちしてるんだ・・・)

慶は流石に声には出さなかったが、心の中でそう囁いた。


「お、おう、頑張ります!」

慶は少し、声が裏返りながらも、なんとなく真面目に答えた。


「うふふ」

岡本と山田か顔を見合わせながら、そんな慶を見て笑っていた。


「じゃあ、まずは・・・   」

慶は順番に工程を案内したり、注意事項や禁止事項を説明

また、誰がどの工程を担当するかなどを説明した。


16:30頃になると慶は新人3名を教育ルームへ連れ出した。

「それじゃ、この紙に今日1日で教えてもらったことや

注意すべきこと、わかるだけ書いて下さいね。

16:55になったら集めます」

と言うと、紙を1人1枚ずつ渡した。


工場内では帽子をかぶっていた新人も

ここでは帽子を脱いで素顔がよくみえていた。


(まじで岡本かわいいな・・・。

 山田もなかなかのもんだぞ、これ・・・。 西田は・・・)

といつの間にか男の目になっている自分に

(いかんいかん、俺は今は教育者だ・・・)

といろいろな思いを巡らし自分と格闘していた。


「リーダー!! 終わりました!!」


「お、早いね〜〜」

岡本は時間より少し前に、書き終わったことを慶に告げた。


「でもさ、岡本君・・・。

 リーダーは辞めようよ・・・。

 なんかさ、TOKIOのアレみたいでしょ・・・」

と慶が軽く岡本に突っ込んでみると


「だって、中野さんリーダーでしょ??

 リーダーの方が呼びやすいんだも〜〜ん」


「・・・・・・」

慶失笑。


「いや、でもね、ほら

「中野さん」とか「慶さん」とかさ

僕にも一応名前があるんだしさぁ〜〜」


「わっかりました。

 じゃあ、慶さんでいいですか?」

岡本が今度は軽い突っ込み感覚で慶に尋ねる。


「えっ・・・。いきなり慶さんかい・・・」

「なかなかヤルな、君は・・・」

慶はもうたじたじになっていた。


「アハハ、冗談ですよ、リーダー」

「明日から中野さんって呼ばせて頂きます」

岡本もさすがに慶がかわいそうに思えたのか少しは真面目に答えた。


そんなやり取りをしている間に終業時間となり、

慶は新人3名を帰社させると、事務所へ向かった。


「いや〜〜、亮輔さん。

 岡本ってかわいいけど、アイツは意地悪っすね」


「なんだ??おまえ早速何かやらかしたか?」


「いや、そういうんじゃないんですけど、初対面にしては

 突っ込みが・・・」


「おうおう、慶、いいじゃないの、活きのいいのが入って

 そういうやつは良く頑張るんだって!

 オマエだって、山下だってそうだろ??」


「え、いや、僕はそんなんじゃ・・・。

 あ、それより、これ今日のレポートです」


「ああ、サンキュ」

亮輔はレポートを受け取ると、早速目を通しながら

「へー、岡本ってなかなかしっかりしてるんじゃない?」


「え、まじっすか?」


慶は受け取った時はさらっとしか目を通さなかったが

20分程度の短い時間でA4の用紙1枚に

今日指導されたことがギッシリと書かれていた。




その夜


慶と亮輔は二人で居酒屋へ行き、一通り飲んだ後、居酒屋を出た。

「慶、ちょっとさあゆみんとこよってかない?」


「あれれ、亮輔さん、いつからあゆみちゃんのこと

 呼び捨てになったんですか?」


「ばーか、別にそういうんじゃねーよ。アイツの方が年下だし

 別にいいだろ〜〜」


「ま〜、僕はし〜〜らない!

 でもあゆみちゃん、美人ですもんね〜〜」


そんな話をしながら、プラネタリウムのあるビルに向かっていると


「あら、香織ちゃんの元カレさん!」

深海のママと偶然遭遇した。


「あ、どうも先日はお騒がせしました〜」


「いいの、いいの、それよりたまにはウチにも

 顔出してよね〜〜、香織ちゃんもなんだか

 元カレさんと会ってから少し淋しそうよ〜〜」


「えぇ、あいつが?? まじっすか?」


「う〜ん、今日はお熱が出ちゃって休んでるんだけどね。

 ほら、香織ちゃん今一人だからね、心配だから本当は

 香織ちゃんの家によって来てあげたかったんだけど、

 連絡あったのが遅くってね〜・・・」


「え、あいつも熱とか出るんですね??

 でも、一人ってあいつ母ちゃんと別々に?」


「ううん、2年ほど前にね、お母さん亡くなったのよ・・・」


「え、それからずっと一人?」


「ええそうよ」


「まじっすか・・・」

慶は言葉を失った。


「ほら、よかったら今から香織ちゃん家行ってきてあげたら?

 元カレなら家の場所もわかるでしょ?

 きっと喜んで熱なんかすぐ下がるわよ!香織ちゃん!」


「いやいや、俺はこれから亮輔さんと飲みにいくし、

 そんなん、香織も迷惑でしょう・・・」


「あ〜ら、冷たいの!だったら家の店で飲んできなさい!」


「いえいえ、もう他予約しちゃってるから・・・」


「アハハ、冗談よ、また今度、顔出してね!それじゃ」


「あ、はい、どうも〜」




「はぁ、なんか元気のいいママさんっすね」


「しかし、慶いいのか? 香織ちゃんとはあれからどうなってんの?」


「いや、どうって・・・。何もないっすよ・・・」


「俺、一人でプラネタリウム行ってもいいからさ、

 香織ちゃんに薬でも買って持っていってやったらどうだ?」


「・・・・・。 いや、でも・・・」


「オマエ本当は香織ちゃんのこと気になってるんだろ?」


「ま、まぁ・・・」


「じゃあ、今行かなくてどうする?

 行かなくともさ、責めて薬届けてやるとか

 メールくらいしてやるとかさ、なんかあるだろ」


「いや、でも、香織ふったの俺だし、いまさら・・・」


「慶、オマエ子供だねぇ! そんなの関係ないって。

 な、とりあえず今日はここで解散だ!

 俺はあゆみと仲良くやってくるからさ!」


「え〜〜、そうすか?」


慶もなんとなく香織が心配で、飲みに行く気分では無くなっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ