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File2 再会

慶と亮輔は、現場の作業者数人の若者を連れて

いつもの居酒屋へ足を運んだ。


居酒屋は6人入る個室が6部屋あり、

フロアにテープルが数個、カウンターに数席と

よくある程度の居酒屋だが、焼酎の品揃えがよく

焼酎を好んで飲む慶と亮輔には丁度いい居酒屋だ。


「おまえら好きなだけ注文しろ!!」

上司らしく威勢がいい亮輔に


「お、今日は亮輔さんのおごりだぞ、ラッキ〜〜」

と慶は皆に意地悪そうな顔をして言った。


「やった、亮輔さんありがとうございます!」

まだ入社して3年目の山下も喜んだ。


「ばっかか、おまえら。

 今日はな、俺と慶のおごりだ。

 俺一人が奢るわけじゃないぞ?」


「な〜〜んだ、俺もかよ〜〜」

亮輔が勝手に決めた割り勘も慶は嫌々ながらもそれを断ることはなかった。


「ま〜〜、そうと決まったらお前ら遠慮せず注文しろよ」

慶は後輩たち3人に少し太っ腹な所を見せる。


「心配するな、ここは俺が出しておくから。」


「まじですか、俺も出してもいいんですけど・・・」

亮輔は慶にも先輩らしく気を使い、割り勘の話は冗談であることを告げると

慶はそれは悪いと思ったのだが、正直あまりお金は持っていなかったので

自分も出しますとは言い切れなかった。


「心配するな、オマエこの前、車の部品なんか買ってただろ?

 俺はよくわからんが・・・。 今月は苦しいだろうが。」

亮輔は慶の事をよく知っていた。


「じゃ、お言葉に甘えて・・・、すんませんいつも」

慶は亮輔の面倒見の良さには世話になりっぱなしだった。




居酒屋で一通り盛り上がって、店を出ると慶が

「さ〜て、次はどこに行きますか??」

とやる気満々。


慶はこういう雰囲気が好きで、飲みだすと止まらない。

また亮輔も同じで二人が一緒に飲みだすと朝になることもしばしばだ。


後輩3人もそういう二人が好きでよく遅くまで付き合うが

最後まで残ったことは未だ無いほどだった。


「じゃあ、クラージュ行くか!?」

亮輔がいつも行くスナックに行くことにした。


「んじゃ、そうしましょう!」

「クラージュのママとゆきさんとも2週間ぶりっすね!」

慶はニヤついた顔でそう言いながら、クラージュへ向かった。


しかし、クラージュに到着すると、店のドアに

「4月28日〜5月2日まで休業致します。」の貼紙があった。


「なんだ休みかよ〜〜」


「あ〜、なんかママこの前来た時に旅行にいくとかど〜とかって言ってなかったっすか?」

亮輔が残念がると慶が2週間前に来た時の話を思い出して話した。


「そっか・・・、んじゃさ、知らない店いってみようぜ!」

亮輔が好奇心旺盛な目をして、皆に言うと皆もまんざらではなく

これまで行ったことの無い店にいくことにした。


「じゃ、この店の2件右側」


「お、いいね、そういうの」

慶は次に行く店の選び方を適当に言っただけなのだが

亮輔もそういう選び方の適当な所が好きで賛成だった。


「じゃ、山下見て来い!!」

と、亮輔が山下を指名。


山下は仕方なく、クラージュから2件右隣にある、「深海」

と言う店を覗いてみた。


ドアを少し開けた山下は、初めての店で緊張したのか

すぐにドアを閉め皆のとこへ走り戻ってきた。

「やっぱ、はずかしいっすよ〜〜」


すると数秒の間も無く


「お客さ〜〜ん、入らないの??

 クラージュは昨日から皆で旅行に行ったみたいで、休みだけど・・・。

 よかったらウチ来ない?」

山下に気づいた深海のホステスが1人店から出てきて

クラージュの前に立っている、5人に向かってそう行った。


慶はふと思った。

「えっ??」


「あれ?、ケイじゃない?

 久しぶり〜〜! わ〜〜、こんなとこでケイと会うなんて嬉しい!

 おいでおいで! 皆さんもおいでよ〜〜」

とホステスは慶との再会をすごく嬉しそうに言った。


「なんだ慶、知り合いか?」

亮輔がキョトンとして尋ねる。


「あ、はぁ、高校の同級生で・・・」

慶もすぐにホステスが香織であることに気づいた。


「じゃあ、仕方ないな、そこ行ってみるか?

 そこのおねえちゃんも綺麗だし」

と亮輔は他の後輩3人に尋ねる。


「はい!お姉さん綺麗だからいいっすよ!!」

「慶さんの知り合いなら安くしてくれるかな!?」

と後輩達も乗り気だ。


「じゃあ、行きますか・・・」

慶はあまり行きたそうではないが、皆の空気に負けて

深海へ行くことにした。


「お、じゃあ決まりね!!

 さ〜おいでおいで!」

香織は嬉しそうに5人を引きつれ、お店のドアを開けると

「ママ〜〜、私の元彼氏とその他4名 ご来店です〜〜」

と、恥ずかしげも無く大声で言った。


「えっ!?」と4人ほぼ同時に慶の顔を見合わせる。


「・・・、ゲッ、こいつ・・・」

慶はなんだか恥ずかしくなり、言葉にもならなかった。


「あらあらいらっしゃい、元彼氏さん?」

とママが駆け寄ると、他のホステス3人も

「どれ〜〜どれ〜〜、香織さんの元彼って〜〜」

と興味津々で近寄ってくる。


慶はすぐに気を取り直して

「そう!俺が香織の元カレだけど、なんか文句あるか!?」

と4人に負けじと声を荒げた。


亮輔と後輩達はこいつなにやってんだ?と思っているような表情で

その光景を見ていたが、すぐに

「さぁ、さぁ、早く飲ませてよ!!」

と亮輔が声を掛け、深海になだれ込んで行った。


お店に入ると、まだお客さんはおらず

香織が大声であんなことを言えたのも

客がいないからなんだろうな〜と慶は勝手に思い込んだ。


慶がボックス席の4人掛けソファーに座ると、

慶のすぐ横に香織が割り込んで無理やり座ってきた。

亮輔の隣に1人と後輩3人に、ママと2人のホステスが付いた。


「しっかし、慶さんあんまり格好良くないのに、よくこんな美人と付き合えましたね〜」

と後輩が慶の反応を楽しむかのように言ってきた。


「ふん、こいつが俺を好きだっていってきたから、付き合ってやったんだよ」


「な〜〜にぃ〜? ケイの方から私に近づいてきたでしょ??」

慶が後輩に答えると、それを聞いていた香織が慶に少しムッとした顔で言った。


「なんだ、でもコクってきたのは香織だろ〜がよ〜〜」


「それはそうだけど、ケイがイジイジしてたからでしょ!」


二人が少しアツくなろうかなるまいかと言う間を見計らってか


「まぁまぁ、そりゃ〜君達お互い様だ」

と亮輔が冷静になだめる。


「はぁ〜、そうですかねぇ・・・」

と慶は仕方なさそうに言った。


「で?いつ頃付き合ってたの?」

亮輔は少し意地悪な顔をして、嬉しそうに尋ねる。


間髪入れず、香織が

「えっとね、高校2年の時にね、私が自転車で通学してたらね

 いきなり、隣にならんできてね

 『へ〜〜、君が3組の山野香織さん?』とか言ってきてね〜

 私はなんだこの変人って思ったんだけど、

 それから段々、隣に並んでくる回数が増えてきてね

 結局、卒業するまで無理やり一緒に通学させられてたんだよ」

と勝手に答えると、慶は自然と顔が紅潮していた。

「はずかしいからやめてくれ・・・。」


「そんで、お互い就職してから、2年後くらい、そう丁度20才くらいの時かな

 突然別れてくれだって・・・。

 ほんと信じられないよね、この人!!」

香織は聞かれてもいない別れの話まで話した。


「な〜んだそれ??」

「ひっどーーーい」

慶は大ブーイングを浴びた・・・。


そんな話から始まり、それぞれがホステスと話したり、仲間同士で話したり

はしゃいでる間に時間は過ぎて、すでに1時間ほど経っていた。

しかし、21:30頃になっても他の客は見当たらなかった。



「・・・だから、あれはね、違うの、違うんだって」


「だって、ケイが悪いもん」


香織は相変わらず慶に絡んでいる。

香織は慶と再会できたことが相当嬉しいらしく、

ほとんどの時間を慶との会話ですごしていた。


「だからね、俺は香織が・・・」


と慶が話そうとした途中で、お店のドアが開いた。


「いらっしゃ〜〜い!

 あ〜川崎さん、いらっしゃい!!」

香織は、慶と話をしていた顔とはまた別の顔に瞬時に戻り

ホステスの顔になった。


「ごめんね、ケイ。 私あっちにつかないといけないから・・・」

と少し淋しそうな顔をした。


「ああ、いいよ、いいよ、仕事だろ」

慶もまんざらではなかったらしく、香織と離れるのが

少し淋しいように思えたようだ。



それから、お店の客も次第に増え、慶達の席には

ホステス1人が残っただけになっていた。


「あ〜、もう23:00か〜〜

 じゃ、次でも行くか〜〜!!」

と亮輔がこの店を出ることをホステスに告げると

「え〜、もう帰っちゃうの〜〜?」

お決まりの返事だ・・・。



慶達がお勘定をしている様子に気づいた香織は少しソワソワし出して

慶達が店から出るや否やすぐに慶を追って、店の外まで飛び出してきた。


「ねぇ、ちょっとケイ!

 元カノに携帯も教えないのかよ!!」

と香織は強気で慶の電話番号を聞いてきた。


「なんだ、香織ちゃん! まだ慶の事好きなんじゃないの?」

亮輔がおちゃらけて言う。


「いいな〜〜、こんな綺麗な人」

後輩達も羨ましそうに見ていた。


「違いますよ〜〜、ほら、営業、営業!!」

「早く教えなさい!ケイ!」

と香織はさらりと話をかわす。

流石は、プロだけのことはある。


「仕方ないな〜・・・」


「あんまり無駄に掛けてくんなよなよ」

と言いながら携帯番号とメールアドレスを香織に教えた。


「ふん、誰が用も無いのに掛けるもんか。

 お店が暇な時だけ電話してあげる!」

香織は、相変わらずの調子だ。


「んじゃ、そろそろ行きますか」

亮輔がそう言うと、

「んじゃ、いこ〜〜」

「次行こ〜〜」

と皆も続いた。


「じゃ、また来てくださいね〜〜!」

と香織は笑顔で見送ったが、その直後少し淋しそうな顔に変わった。


「なんか最後香織さん淋しそうな顔してませんでしたか?」

それに気づいた山下が、慶にこっそり話しかけると

「えっ??めちゃめちゃ笑って、また来いっつってたろ!」


「いや、その後なんですけど・・・」

山下が言うには、見送る最後に香織が淋しそうな顔をしていたと言う。


「そりゃないだろ〜〜」

慶は笑って、前を向いた。

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