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File1 昇進

昔、この町は城下町として栄えていたそうだ。

でも、今はただの田舎町。


山脈の終点に位置し、裾野から平野が広がる。

平野には田園があり、そこにポツリと巨大な建物が存在する。

そこは電器関連の工場。


大手家電メーカーの工場であり、高卒就職が一般的な

この町では、この工場で働くことがステータスとなっている。


この町にも、そして工場の中にも、様々な人間がいて、

その人々が様々な「想い」を日々育んでいる。




「慶、おめでとう!!」

慶の先輩で、現場リーダーの亮輔が突然そう言ってきた。


慶は何の事だかさっぱりわからないが、「あ、どうもっす」

っと、適当に返事してみる。


「へぇ〜〜、もう知ってるんだ!?」

亮輔が少し意地悪そうに言う。


「ちょ、まってください、すいません、何の事か教えてくださいよ〜〜」

慶は焦り気味に亮輔に問い返す。


亮輔は少し嬉しそうな顔をしながら、

「オマエ、4月からリーダーだ! よかったな!!」

と、4月から昇進することを告げてきた。


「俺が現場の責任者になることになったんだ。

 そんで、オマエが俺の後を継ぐってこと」


「正式な辞令がもうすぐでるだろうけど、早くオマエに

 知らせたかったからね」

亮輔も自分の事のように嬉しそうに言ってくれた。


「あ、亮輔さん責任者になるんだ!!

 それは亮輔さんこそおめでとうございます」

慶は自分と亮輔が一緒に昇進することがすごく嬉しかった。


慶と亮輔は、田舎にある電子部品製造工場で働いている。

お互いに高卒で就職し、亮輔のいる現場へ慶が新卒で配属されてきた。

それからはお互いに親友であり同僚であり、上司と部下でありと

親密な関係を保ってきていた。

慶の相談にいつものってくれる亮輔は、慶の心強い兄貴分でもある。


「慶、これからは俺たちがこの現場を引っ張っていかなくちゃいけないから

 お互い頑張ろうな!」

亮輔も慶をパートナーとして、これから仕事をしていくことが嬉しかった。



4月



「中野 今日から現場のリーダーとして責任をもって職務にあたってくれ。

 森山も責任者になったことだし、お前たちは仲がいいだろ?

 森山を盛り上げていってやってくれよ!」

田中課長は慶と亮輔を呼び出し、二人を激励していた。


「森山 お前は今日からもう1ランク上から物を見なくちゃならない。

 園田君はこの現場は初めてだから、しばらくは君も係長並に

 働いてもらわなくちゃいかんぞ。

 中野もリーダーになったことだし、仕事はきっとやりやすいはずだ。

 二人で力をあわせて現場を盛り上げていってくれよ」


「はい!」

二人は示し合わせたかのように「はい」の声が重なった。


「ほんとお前らは仲がいいな〜、はははぁ」

田中課長は高笑いすると同時に二人の仲の良さと

互いの信頼関係が頼もしく思えた。


「頑張らせて頂きます!」

亮輔は気合の入った声でそう宣言した。


「僕も頑張ります!」

慶も負けずと大きな声で言う。


今日から二人で現場を管理していかなくてはいけない。

プレッシャーを感じながらも、これからの仕事が

二人にとっては充実した仕事になることが

手に取るようにわかっていた。



二人は昇格後のまだ慣れない初仕事も順調に進め、

生産の遅れも、大きな問題も無く4月度の生産を終える事ができた。



「6月から、生産増えるらしいぞ」

亮輔は係長から6月の生産状況を聞いてきていた。

「人も増やさないと、今は結構ギリギリだな〜〜」


「そうですね、数次第ですが、こことここに1人ずついないと

 すでに限界近いからですね〜」

慶はパソコンの工程図を指差しながら亮輔に言った。


「そうだよな〜、数わかったらすぐに人員補強の要請しよう

 ま、そうは言ってもまだ5月がある。

 5月を順調に進める事もまず大事だぞ」

と亮輔は上司らしく慶に言ってみた。


「お、そうですね、亮輔部長!!」


「何言ってんだオマエ、ま〜いい。

 今日は久しぶりにメシでも食いにいくか〜〜!」

慶の冗談を軽くあしらうと亮輔は慶を夕食に誘った。


「じゃあ、山下達も誘ってぱぁ〜〜っと行きましょう!!」


「な〜に親父みたいな事言ってんだか・・・。」

亮輔は自分の誘いにいつも応えてくれる慶が

本当の弟のように可愛く思えた。

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