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オヤジの回転  作者: ウィリアム輝夫
白い部屋
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 六時の目覚ましがけたたましく鳴っているので、目が覚めたら密閉空間のようなところだった。天井と白壁は漆喰でできており、床には灰色のカーペットが敷き詰められている。それらは、十畳くらいあるこの部屋を殺風景にはしていたが、幸いなことに私はここに一人いるだけ、ということではなかった。


 四人の人物が他にいたのである。まず、一番近くにいたのが、西洋人、おそらくフランス人の男だった。凶暴そうな顔つきで、尻顎で、ハリネズミのように金髪を毳立たせて灰色のセーターを着て白いズボンを履いている。その奥にいたのが、やけにグラマラスな黒髪の女性で、どうやらロシア人らしく目は青くて、とてもグラマラスな割に手足がとても長くてシャラポワというテニス選手を思い出したが、顔の造作はどこか雑なところがあってそれがへんな親近感を誘発していた。肉感的な身体に吸い付くような、赤いカーディガンをはおっていた。その奥が、これはクラインの壷のように、男なんだか女なんだかわからない人だった。この人は、ピンク色のシャツ、虹色のズボンを履いていたが、そこでもどっちかはわからなかった。その奥にいる小柄な人物は白髪頭で、子泣き爺と砂かけ婆が合体したかのような生き物であったが、置物のように何も動かなかった。


 この四人は無言でそれぞれの何か作業みたいなことをしていた。他には、この部屋には、テーブルのようなものが設置されてある。それも30センチの高さのテーブルで、奥行きは50センチくらい、幅は二メートルくらいあった。まるで、脚のないベンチのようなものだった。壁に固定されているのであった。下の方を見ると、鉄の金具で支えてある。


 他にはこの部屋は全く何もない長方形の地下牢のような感じであった。一方、私の方は記憶というものが一切なかった。何かであって現世を生きていたようなそんなぼんやりとした思い出しかなかった。そもそも私は自分がその四人からどう映っているかもわからなかった。私が戸惑っていると、ロシア女が手鏡を出してきた。そして、鏡に映った自分に驚いたのだった。


 頭頂部はハゲかかっており、末は何故か長髪の落武者カット、鼻は少し曲がっているが、それよりも頬のところに黒い黒子があって間抜けに思えたし、歯は黄色い乱杭状になっていて、泥棒髭が生えており、頭の悪そうな中年男性だった。東洋人であり、どうやら日本人らしかった。灰色のスウェットを着込んでいる。


「うわっ。何これ。オッサンじゃん!」


と私が叫ぶと、男と女がクククと笑うのであった。誰もが笑うかもしれないが、私はショックを受けたものの、もとが何であったかわからなかったから、すぐに、「そういうものか」と受け入れたのだった。

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