10.麗しの転校生は私の護衛なんですが・・・!
どうも!お久しぶりです、すいません!
「よし、んじゃー如月は桜麒の横の席が空席だからそこへ、笠木はー」
「はいはい!!私の横、空いてますよ先生!!」
勢いよく手を挙げたのは私をイジメをしてくれちゃってるグループのリーダー、松宮ヤヤコ。このご時世珍しくて、名前がカタカナで、このクラスのリーダー。だから私のことを誰もかばわない。
「おう、そうだな。それじゃあ笠木、お前は松宮の横だ。桜麒、松宮はしっかり教えてやるんだぞー」
「はい」「はーい!」
明らかヤヤコは波賀さんを自分の何番目かの彼氏にしたいんだろう。
「それじゃあ次の授業用意しとけー」
「星凛って呼んでもいい?」
如月さんが話しかけてくれた。
「うん。じゃあ私も莉子ちゃんって言います」
やっぱり年上なので最低でも「ちゃん」付けをしてしまう。私が次の授業の用意について話そうとした時、ヤヤコの弾んだ声が聞こえた。
「柳水くん!何でも教えるから全然聞いてくれて構わないよ!あっ、それならメール繋いだ方が早いかな?メアド教えてよ~」
どんどん詰め寄るヤヤコ。でも・・・
「嫌だけど。何であんたみたいな奴と話しなきゃいけないの?最悪」
「えっ?」
やっぱ波賀さん、ヤヤコのような性格は絶対に嫌われ一直線だろうなぁって思ってたんだよねぇ。
「それに、俺、いつあんたに名前で呼んで良いって言ったの?頭大丈夫?」
「な、何よそれ!!」
「はぁ~。・・・黙って?」
は、波賀さんの目が獰猛な獅子みたい。あのヤヤコが怖気づいてる。
「り、莉子ちゃん、次の授業は数学だから教科書見せますね。ノートはありますか?」
「ええ。それと星凛、敬語じゃなくて良いよ?」
「努力します・・・」
こそっと言ってくれたけど、私はやっぱり敬語脱退は無理だなぁと思った。
するとタイミングよくチャイムが鳴った。数学担当の鈴木先生が入って来た。
「お前ぇら席に着け。えー、今日は転校生がいるんだろ?手ぇ上げてくれねぇ?」
ちょっと癖の強い男性教諭で、あだ名は「893の人」で少し荒いんだけど、何故か生徒からの人気が熱くて、ここの学校の生徒が裏でつけてる教師人気ランキングで毎回上位に入る人気教師。
如月さんと波賀さんが手を上げる。
「えぇーと、如月と笠木ね。まぁよろしく頼む、俺は数学担当の鈴木伊代」
「よろしくお願いします」
返事を返したのは如月さんだけ。波賀さんはいつも通り安定だけど、鈴木先生もそんな感じなので気にしない。
「それじゃあ授業始めんぞー」
チャイムが鳴り、45分間の授業が終わった。
「授業は終わり。次の準備しろよー」
「ふぅ、終わったー」
「どうですか?鈴木先生は?」
授業終わりの如月さんに聞いた。
「ん~、この時代に珍しい強面な教師だなーと思ったよ。程よいてきとーさが良いんだろうね」
「そうですね。次は担任の木野先生の授業で国語です」
「ああ、あの担任ね」
私が如月さんの次の授業準備を手伝っていると、またヤヤコが波賀さんいに懲りずに話しかけてる。ちなみに何でヤヤコしか話しかけないかと言えば、波賀さんに話しかけて、もし仲良くなってしまったら確実にイジメのターゲットになるからだ。
「ねぇねぇ、柳水くん!やっぱりメアド教えてよ!わたしなら色々教えれるし、勉強だって!」
嘘つけ!と言いそうになり口を軽く抑える。ヤヤコは成績がこのクラスだと上位。だけど、それはみんなが手加減してるから。実際は赤点ギリギリのお及第点。とても人に教えるなんて無理に決まってる。
「いい。どうせあんたの能力なんてたかが知れてるし」
この言葉が物理的に人に当たるなら絶対ヤヤコにクリティカルパンチだかキックだかしてると思う。
「で、でもわたしはこのクラスで成績上位?それにこのクラスはわたしの言いなりよ!そんなわたしにたてつくなんて得策ではないと思うけどっ」
それは、そう。
「あっそ」
私、今ならこのクラスにいる人の声が聞こえるなぁ。多分全員『まじか・・・』って思ってる気がする。
ヤヤコが波賀さんをにらみ続けていると、二時間目を知らせるチャイムが鳴った。
「はい、お前らー席付けー」
担任が入って来た。
ヤヤコは苛立ちながら席に着いた。そこから号令をかけて授業が始まった。
それからヤヤコは休み時間の度に波賀さんに絡んでいた。そして昼。
「如月さんはお弁当?それとも購買に行きますか?」
「私はお弁当よ!ここだけの話、私が自分で作ったの!」
「本当ですか!すごいですね。それじゃあ私のおすすめのお昼スポットに案内しますよ?」
「いいわね!連れてってちょうだいよ!あっ、それならあいつも連れていきましょう」
「あいつ?」
あいつって?
「柳水よ!おーい!柳水ー、お昼食べよー」
ええー!?ダメダメ!だって周りはヤヤコとグループが囲ってるのに!
「・・・購買で昼買うわ、待ってて」
「ダーーメ!!柳水くんは私とお昼するの!悪いけど如月ちゃんは諦めてくれる?それにー・・・その子と一緒だと不幸になるよー」
やっぱり、ヤヤコは私が嫌いで嫌いでしょうがないのね・・・。
如月さんはちらりと私を見てため息を吐いて、強く、でも静かに言った。
「うっさいなぁ!私が言ってるの、転校生のお願いも聞けないの?ねぇ!」
こ、怖い!如月さんの初期装備はキレることなのかな・・・。
「な、何を・・・!」
「はぁー、マジでウザいから。莉子、星凛さん、少し待っててくれる?」
「は、はい」「オッケー!」
しばらくして、我が校の購買!一番人気の焼きそばパンと揚げパンを持って波賀さんが帰って来た。
「お帰り。じゃあ行こう」
私のお昼のおすすめスポットは、この学校の三棟ある内の一つ、C棟の最上階の小部屋だ。
「ここは、皆ほこりっぽいと思っているんだけど、私が掃除して綺麗にしたんだ。二人とも好きな席に座って?・・・いただきます」
二人は適当なところに座り、食事を始めた。
「あの、二人は今月末の文化祭どこ回るんですか?私たちのクラスは今年はメイド・執事喫茶なんです。多分二人もすると思います」
「そうなんだ!この学校は模擬店とか出るの?」
「出るよ。去年はたこ焼き屋とかりんご飴とか出たらしいよ?私は今年転校してきたから、詳しい事は兎秋くんに聞いたんだけど」
私はがイジメられる前は気軽に話しかけてくれてたんだけど、今はもう話しをしなくなっちゃった。
「そうなのね。・・・星凛、嫌な事を聞くけどね、今のイジメはどれだけエスカレートしてるの?」
私は、自分が一瞬暗い顔をしたのに気づかなかった。
「ええーと、トイレの個室で水が降ってきたり、靴箱の靴が消えたり、机に落書きがあったり、「死んだ方が」とか言われたり・・・んーそれくらいですね。ただ、先生は知りません」
二人は、ぎょっとした顔で私の顔を凝視していて、私は二人の反応が少し面白くて笑った。
「ふふ。どうしたんですか?そんな珍妙な物体を見たような顔をして」
「だ、だってそれ」
「イジメの度をどんどん超えていってるな」
「それは、お二人は私が自殺でもしてしまうと思っているからですか?」
二人とも俯いてしまった。
ああ、失敗したな。二人を暗い気持ちにさせちゃった。せっかくのお昼なのに・・・
「大丈夫ですよ。私はもう一人じゃないですから。波賀さんに如月さんが、いるじゃないですか」
如月さんは微笑んでくれた。波賀さんは・・・相変わらずだけど。
「もうすぐお昼も終わりですから、早く食べましょっ」
私たちは、食事を再開した。
それから十分くらいでチャイムが鳴り、昼休憩になった。
「ごちそうさまです。二人はどうします?」
「私はまだ食べ終わってないからもう少しここにいるわ」
「俺も」
「そうですか。では少しトイレ行って来ます」
◇◇◇
星凛ちゃんが出て行って、私、如月栖儺目は波賀柳水に目を向けた。
「ねぇ、柳水。私とっても腹が立ってるんだけど!」
「それは知らん。星凛様の事は、師匠様から伺っていたしな。しかし、何かしら餓鬼にお灸は据えたいな」
師匠様とは紫檀公のこと。星凛ちゃんを様付けで呼ぶのは紫檀公から頼まれた護衛対象だから。
「それじゃあ!」
「ああ。今日の夜に、一つ悪夢を送ってやろう」
柳水の鬼面は《獏》対象の悪夢を喰らったり、喰らった悪夢を渡したりする。
「やりすぎたらダメだよ」
「お前が言うのか?」
「確かにね」
今日の夜。きっとあの子たちは後悔するね。
どうも、今回はキャラたちのお話は次の話に回させていただきますね。
ではでは、改めまして、金木犀 稜です!
今回も定番!おそーい投稿ですが、どうかご勘弁を・・・うぅ。
まあ、それは置いといて、どうでしたでしょうか?
ヤヤコは柳水くん狙いみたいですねぇ。でも、そううまくいかないのが現実ですよね。
なので次回は柳水くんと栖儺目ちゃんが「お灸」を据えてくれるようです(楽しみ!)。
ところで、皆様はどんな文化祭を経験しました?
お化け屋敷?模擬店?歌?
色んな文化祭のカタチを自分なりに解釈して書いてます。
それでは!皆様次のお話で!




