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九話 王子様はやっぱり変態なのかもしれません!変態はドMに効果はありません!

 お風呂に入りさっぱりとすることができた!

 しかも騎士姿からお手伝いさん風の恰好に変わったラウルが用意してくれたのは西洋風のドレス!か、可愛いっていうか綺麗!


 ただ心身ともにだだっ広いお風呂場で寛げたものの、またアーロン王子の部屋へ戻ることに。

 う~ん、気が重いわ。

 まだ二人してぎくしゃくしていたらどうしましょう……もしも、そうだったら……逃げるわ!!

 コンコン、とデッッッカイ扉に手をグーの形にしてノックした。普通のノックの仕方だと手が痛くなりそうだったり、中にいる人に気付いてもらえないかも……と思ったからよ。


 無事にノックに気付いてくれたらしい部屋の主が扉を開けるとなんとも穏やかな笑みを浮かべて出迎えてくれた。この部屋の主、第一王子のアーロン。

 そして室内にはまだラインハルトの姿もいたわ。が、良かった。どうやら険悪なムードのようなものはおさまっていたらしい。よ、良かったー……あ、でも逃げ出すチャンスは無くなっちゃったわね、そこは残念。



「さすがラウルだね。レンに合うドレスを見繕ってくれたようだ。……美しいよ、レン」


 ラウルを褒め、そして私の髪の毛を少し手に掬い取ると口付けしつつ普通の女の子だったらすぐにころりと落ちてしまいそうな色っぽい声で囁いてきた。い、いえ、それも十分魅力的なんだけれど!私はどちらかと言えば……『ふん、貴様にはその程度のドレスも着こなせないのか』とでも言ってもらいたかった。

 まぁ、この穏やかそうな王子様はそんなセリフ言いそうにないのだけれど……。じゃあ、ラインハルトはどうかしら?とちらりとラインハルトに視線を映す。


 じぃぃぃ


 え?


 じぃぃぃ


 な、なんか無言でめちゃくちゃ見られている。観察されているのかしら?え、えーっと……『似合わん』の一言でも良いので何か言葉を発していただけると助かるのですが……。


「ラインハルト?どうした?……まさか、レンに見惚れたのかな?」

「……まさか。やっと見られる恰好になったと考えていたところだ」


 ま、まぁボロにはじまり、簡素な衣服から一気にこんな素敵なドレスに着替えたのだもの。ビックリするわよね。……って、なんか違うわ!『やっと』?『やっと』って言った!?

 仕方ないじゃないの!

 私だって好き好んでボロをまとっていたわけじゃないわよ!まったく……このラインハルトという男は世辞の一言も言えないのかしら。



「ふっ……。安心して良いよ。あんなふうに言っているけれどラインハルト的にはレンのことを綺麗だって褒めているのだから」


 どこが、よ!?

 全然信じられないのだけれど。でもラインハルトが……『美しい……。殿下ではなく、俺の妻にならないか?』とでも言うようなタイプかしら?……まず、言わないわね!


「あ、そう言えば聞きましたよ。王子って許嫁が一人もいないらしいじゃないですか。今までずっとお城に引き籠っていたのですか?」


 貴族となれば社交界という場におもむくことも多いだろう。その場で気になる女性の一人や二人、いなかったのだろうか?この王子が、よ!?信じられないわね。


「引き籠ってはいませんが、そうですね……なかなか良い出会いというものが無くて。でも、今やっとその出会いがやってきたところなのですよ」


 甘いセリフ、ありがとうございます。

 でも、私はそっち系はあまり好みじゃないのよね……。私が普通の女子だったら『嬉しい、喜んで!』となったかもしれないが、残念ながら私は超が付くほどのドMなので。それに王子様の甘いセリフといったものは元いた世界の少女向け漫画で知識も理解もあるつもりよ。そう簡単になびいてたまるもんですか。


「ですから、私は……」


 私があまりにも普通の反応(王子様の甘いセリフに狼狽えていない様子)をみて『おや?』と不思議そうにも残念そうにもみえたアーロン。


「私は諦めませんよ。いろいろありましたが、こうしてレンはここに来てくれた。これは運命だと思いませんか?」


 うっ……


「もしかして第一王子ということを気にしていますか?もしそうなら私は次期国王の座は弟に譲っても良いと考えています。私はどんな地位にいてもレンを手放すことはしたくないのですよ」


 こ、の……


「私は本気です。言葉で理解していただけないのならば行動で表してみましょうか?ラインハルトが邪魔でしたらすぐにでも追い出し、レンと二人きりで甘い一時を過ごしていきましょう。レンの体の隅から隅まで愛してさしあげますよ」


 この……っ……


「どうします?本当に実行に移しましょうか?ドレス姿のレンも素敵ですが湯上りのレンの素肌はとても綺麗なんでしょうね……?」


「こんの、変態王子がぁぁ!!!黙れ変態!!!」


 バシッッッ!!

 今度は頬への平手打ち、ではなくキラキラ光る金髪の頭部を叩いてやった。


「あだっっ!」


 王子様にはそぐわない声が聞こえた気がしたが無視無視。無視を決め込んでいるとどこからともなく『ぷっ』と小さく噴き出す笑い声が。まさか、と思いながら声の方向へ顔を向けると必死に笑いを堪えつつ肩を小さく震わせているラインハルトの姿が。

 あ、あなたも普通に笑えたのね。


「ひ、酷いじゃないですか、レン。未来の夫に対して扱いが酷すぎませんか?」

「だーれが、夫ですか!王子様なんだから貴族のお嬢さんを見つけて許嫁にでもすれば良いじゃないですか!」

「はぁ?……温室育ちの娘たちなんて退屈なだけですよ」

「なーにを我が儘言っているんですか、あなたは!だいたい私は貴女と結婚する気はまったくありませんから!」

「な、なんで……」


 きっとアーロンは王子である自分がここまで口説いているというのに全然なびかない私を不思議がっているのかもしれない。だって私の好みじゃないのだもの。

 やっぱり王子様は『王子様』だわ。私の求める超ドS様ではない!

 ふん、と腕組みをしてアーロンから顔を背けているとからかうようにラインハルトが口を開いてきた。


「フられましたね、殿下?」

「……まだ分からないだろう?だいたい私は一目惚れだが、レンと私は出会ったばかり。レンには私の魅力を理解できるまで時間が必要なんだよ」


 いや、理解できる時間は超ドS様を探す時間にあてたいです。

 ラウルには残念な思いをさせてしまうかもしれないが、やっぱりこのアーロンとの結婚は無理だわ。少なくとも今のところは。そりゃあドキドキさせられるセリフが飛んでくることはあるけれど私の本質、超ドMの部分が言っているの!『こんなヤツでは満足できない!』ってね!



「……時間……まぁ、それは必要かもしれませんね。なので、アーロン王子。城の給仕でもお手伝いでもなんでも良いので働ける場所を提供してくださいませんか?」

「「はぁ!?」」


 おお!アーロンとラインハルトが見事にハモったわ!


「王子との結婚は考えられませんが今の私は一文無し、寝床も無し状態なので住み込みで働ける場所が欲しいです」

「な、なにを……私とともにここに住めば良いではありませんか」

「それって結婚を決められたようなものじゃありませんか!」

「それの何が不満なんです?城で悠々と過ごせるのですよ。別に働く必要は無いでしょう」

「ただ、ぼけ~っと一日中城の中で過ごせと!?そんなの無理に決まっているでしょう!そんな生活を送っていたら人間じゃなくなってしまいますよ!」



 ぎゃあぎゃあと言い合う私とアーロン。

 アーロンも引かないけれど、もちろん私だって引かないものは引かない。こうも話が合わない者同士っていうのもなかなかいないかも、と言い合いを続けていればラインハルトが口を挟んできた。


「お二人とも。……取り敢えず落ち着く時間が必要なのでは?」



 私は既に落ち着いているけれどね!アーロンはもう少し未来の伴侶となる存在を落ち着いて考え直した方が良いと思う。もちろん私は遠慮したい。

 やれやれ、と私もアーロンも疲れたような溜め息を吐いた。そういうところは気が合いますわね。でも、この王子……ちょっとしつこくない?嫌々言ってるのに結婚だ、許嫁だなどと無理強いしてくるなんて頭のネジが吹っ飛んでるんじゃないかしら?


 とにかく落ち着く時間を確保するため、ソファーに座り紅茶(なんと淹れてくれたのはラインハルトだった!)を口にして心を静めることにした。そして、王子様、早く私以外に結婚できる許嫁をみつけてください。

 『超ドMは超ドSに会いたくて……』

 王子の素を出せばきっところりと落ちるかもしれませんが(主人公ちょろい??)それじゃあつまらないよね!と思い、王子の素の部分はしばらくは我慢我慢……我慢がいつまでできるだろうか不安ですが。


 変わったタイトルの作品ですが興味を持っていただけたら嬉しいです。『ブックマーク』『評価』などもお待ちしていますので良ければよろしくお願いします!!

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