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八十六話 ご主人がお呼びですよー!

 栄養が付くらしいスープも飲んでもらえたし、ゆ~ったり、ま~ったりとした時間をフランと過ごしていた。

 そうしていたら、なんとなんとお客人が!

「兄上のときは、もっと看病、楽だった~?」


「う~ん?ちょっとバタバタもしていましたが、落ち着いたのはアーロンの方が早かった気がします」


 フランと一緒に、ベッドの上でごろごろしながら(もちろんフランにとってはまだまだ無理をしてもらいたくない時期だったので、大人しくなってもらうためにいろいろと話を聞かせてあげていた)兄弟の看病をし続けたことで、一気に疲れというものを感じてしまった。アーロンもフランも良くなってもらったようで、取り敢えず安心!という感じなのだけれど、この……魔力所持者の病?厄介よね。別に毎年毎年、高熱が出たりとか動けなくなるほどの重い症状が出るってわけでもないらしくてフランから聞いた話では今回が初めての体験だったという話。

 いきなり体調がおかしいかな?と感じたらすぐに寝込んでしまうほどの高熱が何日も続いてしまうなんて本人としてもびっくりだったでしょうね。私だって、なかなか熱が下がらない!落ち着かない!と初めての体験にバタついてしまっていたし、きちんと看病らしい看病が出来ていたのかも怪しいところだもの。それでもフランからは大変感謝されてしまった。一応、フランの看病はサイモン様もおこなってくれていたのだけれど、その期間の記憶は熱が出まくっていて曖昧だったという。……サイモン様、あなたの努力は無駄にはなっていません!私が保証します!


「!きゅうきゅう」


「あら。オリーブ?どうしたの?」


 フランの枕元でうとうととしていたようだったオリーブだったのだが、急にパチッと目を開けると鳴きはじめた。未だにオリーブの鳴き声の意味がよく分からなくて意思疎通が難しいのだけれど、やけに部屋のドアの方を見ているし……誰かやって来た、とかかしら?

 すると。


 コンコン。


 とドアがノックされたものだからオリーブ凄い!本当に人が来たのね!訪問者を知らせてくれていたのかもしれない。

 フランが起き上がって出ようとするものの、それは強引にでもベッドに押し付けて私が出迎えることにした。……あー……ドレスは、ぐちゃぐちゃだったけれど、もう気にしないわ、うん。


「……はい。……って、アーロン?」


「フランの様子はどうかと……って、何だその恰好……」


 ドアを開ければ果物が乗せられた籠を手に、弟の様子を見に来たらしいアーロンが。もちろん先に容体は良くなっていたし、数時間ぶり?もしかしたら一日ぐらい経っちゃったかしら?久しぶりに顔色を見るがすっかり良くなっているアーロンにホッとしていたものの逆にアーロンは眉を顰めている。主に、その視線の先には私……というよりも、私の着ているドレスに向けられているようだ。やっぱりねー!そうですよねー!気になっちゃいますよねー!


「……ふ、フランの看病をしていたら熱くなってしまったので、つい自分でビリビリと……そして、動きやすくなってしまったというわけです!」


 む、難しい言い訳だっただろうか。それでも、まさかフランの火の魔法で焼かれました、だなんて言えるはずもないもの。ここは、普通の恰好では動きにくかったので自分で、破いてしまっていたらここまで破れてしまった……と言い訳した方が、良くない?


「……アホか」


「ぐぅ……っ」


 一瞬の間を置きながら、それはそれは冷めた目で『アホ』と言われてしまった。い、いえ、別に良いんですけれどね!?アーロンにそうやって小馬鹿にされるのも、まあまあ悪くないですし!でも、本音を言うと『人間やめたのか?家畜になったのか?……あぁ、だったらこれからはせいぜいこき使ってやるから覚悟しろ』とでも冷めた目で言ってほしかったけれどね!


「失礼しますよ。フランは……あぁ、だいぶ顔色も良くなったか……安心した」


「あ、うん。……えーっと……レンの、アレは……ゴメン、一応……謝る」


「フランの仕業だってことぐらいはすぐに分かったさ」


 部屋に入り、果物をベッド近くにあるテーブルに置くとフランの額に片手を置けば、すっかり熱も落ち着いていることに安心していたようだった。やっぱりお兄ちゃん、なのね……。

 でも、フランが私のこの状態になっていることを謝罪していけば、どうやらアーロン的には見た瞬間からフランの仕業だと分かっていたらしい。

 なんですと!?

 だったらいちいち言い訳を考えていた私がバカみたいだったじゃない。


「普通に破いただけで生地が黒くこげるか?……だが、ずっとその恰好であちこち歩き回っていたとなると淑女らしくは無いがな」


 そう言い終わるなり、アーロンは着ていたジャケットを脱ぐと私の肩に掛けてくれた。こういうところは素直に紳士っぽいわよね。あ。ちょっとバタバタしていたけれど、アーロンの許嫁になったんだったわ。……少なくとも私のこの恰好、調理場にいるシェフの皆さんには見られてしまっていて今更ながら淑女……アーロンの許嫁としてはだらしないところを見られてしまったかもしれない。


「で?フランも、そろそろ完治……で、良いのか?」


「あとは、ゆっくりでも良いので栄養をとってもらえば問題は無いと思います」


「……この前、飲んだスープは、もう勘弁だけれどね~」


「……スープ?」


「あははー……アーロンも飲んだ、強烈な苦さのあるスープですよ。それをフランにも用意していただいたんです」


 ちょっと食欲も出て来たのか、アーロンが差し入れとして持って来てくれた果物にも早速手を伸ばしているし、このぶんなら普通の食事も食べても問題は無いかもしれないわね。

 良かったー……。ほんと、二人して(実際のところは私は全く看病をしていないのだけれど王様&王妃様も熱が出てしんどい期間があったようだ)高熱が続いていたから、このまま目を覚まさないんじゃないかってぐらいに心配もしてしまった。

 でも、こうして元気になってくれて本当に良かったわ!


 フランの食べている果物に興味を持ったらしいオリーブも近くに寄っていってフランをじっと見上げていればフランもオリーブの気持ちを察したらしく(あまりにもじっと見ていたので)小さく切り分けてあげた果物をオリーブの口元に近付けてあげて食べさせてくれていた。……すっかり、フランに懐いちゃったわね。


「……あとは、他の給仕にでも任せれば大丈夫だろう。まずは……お前の恰好を何とかしないと、な?」


「……さすがに、ぼろぼろだっていうのは分かっていますよ……」


「分かっている。それだけ俺やフランの看病に必死だったんだろう?感謝しているよ、私の許嫁サマ」


 オリーブを構う余裕も出てきたようだしフランも大丈夫そうね。もしかして、この場で一番見た目がヤバそうなのって私なのかも!?お、同じ城内で過ごしている人には……見えないわよね。思わず小さく溜め息を吐いていたものの、片手をアーロンに取られれば感謝の言葉と一緒に、指先に口付けを落としてきた。

 !だ、だからっ!!べ、別に嫌とかそういうのではなくて、一応フランやオリーブのいるんですから!


「……あー、僕はもう平気だからー。そういうのは兄上の……ってか、もう同じ部屋で過ごしているんだっけ?二人の部屋に戻ってからしてくれない~?あ、でも……オリーブ、どうする?」


「!ず、随分懐いているみたいですしフランが邪魔じゃなければそばに置いてあげてください……ちょっと寂しいですけれど」


「寂しいなら俺がいっぱい構ってやるから安心しろ。……ほら、そろそろ戻るぞ」


 接し方が上手いんだろうか?オリーブの考えがフランには筒抜けみたいなときもあるし、相性も良さそうね。


「えっと、じゃあ一度戻ります。何かあればまた仰ってください」


「ん。……ありがとー」


 ぺこり、と頭を下げつつ肩に掛けられた上着を落とさないように支えながらフランの部屋を後にした。もちろんアーロンと一緒に。

 飼い主……じゃなくて、許嫁が呼びに来てしまいましたね。もちろんフランの様子も見に来たのでしょうが『遅い……』とイライラしていたのでは?(苦笑)


 良ければ『ブックマーク』や『評価』などをしていただけると嬉しいです!もちろん全ての読者様には愛と感謝をお届けしていきますよ!

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