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八十五話 まさかの材料発覚に、気分が……

 熱が下がり、食べ物もイけそうなフラン!

 なので、アーロンにも用意してもらった……『あの時の』スープをフランにも用意してもらったわ。

「さあ!フラン!フランも少しずつでも良いので栄養を付けていきましょう!」


 アーロンの時と同様に、城にお勤めされているシェフの方々に会いに行くとまずびっくりされたのは私の恰好だった。しばらく私の見た目から視線を外すことなく、見入られてしまったのだけれど(だって淑女の恰好とは真逆で、足は出ているし、肩辺りまで見えているものだから、はしたない恰好をして呆れられていたのだと思う)シェフ長みたいなおじ様に喝を入れられると小さく咳払いしつつ『その恰好は……どうされました?』とシェフ長さんにたずねられたものだから……。


「看病でバタバタしていたら、熱くなり過ぎてしまいまして、ぼろぼろになってしまいました!」


 看病でぼろぼろになるのは、普通は心身の方だと誰もが思うだろうが、なんとなく皆さんそれ以上には追究してこなかったものだから『分かってくれたのね!』と調子に乗って、フランも目が覚め、熱を下がって来たので栄養の付くモノをお願いします!とご依頼を出したのだ。

 そして、用意されたのがスープ。

 私も、アーロンが口にしているモノを少しだけ舐め取っただけだったのだが、強烈過ぎるぐらいの苦さをまだ忘れていないわ……。


「……え、これ?……これ、美味しいの?」


 さすがスイーツ作りに精を出しているから食材だとか料理のこともだいたいは把握出来ているであろうフラン。私が運んで来たスープをじっと覗き込むと口端を引きつらせて『しょ、食欲無いかな……』と遠慮しだしてしまう。これは食欲云々の問題では無くて、栄養が足りていないフランに少しずつでも良いから栄養を補給してもらわなければならないので、せめてこのスープだけでも飲みきってもらわねば!


「これぐらい食べないとダメですよ?」


「……いや、あの……匂いからして、ヤバそうだし……」


 ヤバい、ですと?

 クンクン、と匂いを嗅いでみるが、特別怪しげな匂いというものは……感じられないと思うのだけれど、スイーツ作りが得意なフランだから分かるものなのかしら。


「大丈夫です。食べても栄養が付くだけで、体に害があるようなモノは入っていないはずですから」


「……コレ、作ってるところ。レンは、見たの?」


「いえ。廊下で待っているように言われてしまったので見ていませんが」


 アーロンの時の同様に、『お手伝いします!』と意気込んで張り切って調理場に行ったものの、『レン様は外でお待ちくださいませ』と言われてぽいっと廊下に出されてしまった。


「……なら、レンが一口食べてみてよ。……味見だよ、味見」


「……え」


 スープの味を覚えているから、ついつい顔を引きつらせてしまった。それをじぃーっと見てきたフランだから思わず視線をあちこちへと泳がせてしまう。


「レンが食べてくれないと、僕も食べない……」


「そ、そんなめちゃくちゃな……」


 せっかく体を起こしても問題無くなるまでに回復してきているというのに食べるモノも食べてくれないと今度は栄養失調で倒れてしまうかもしれない。そんなことになったら……そもそも、第二王子が栄養失調で倒れるなんて騒ぎにでもなったりしたら……。


『フラン様が倒れられた理由、知ってます?栄養失調ですって』

『第二王子様なのに栄養失調?お城で、きちんとしたモノを食べられていないのかしら?』

『アーロン様の許嫁の方は、弟君を心配していないのかしら?』


 とか、ワケの分からない場所で勝手に変な噂話が広がってしまうかもしれない。

 帝国で、しかも王子様なのに、まともに食事もとられていないのか!?と城下町では大騒ぎになるかもしれない。それだけは避けなくちゃいけないわね。


「ひ、一口だけ……ですからね?」


 じゃっかんスプーンを持つ手が小刻みに震えたものの(もちろんスープが苦いと分かっているからよ)なんとかスプーンで掬い口に入れて見せれば、しっかりと飲み下した。

 もちろん、その後にはすぐに水をいただき、ごくごくとお口直しをしたのだけれどどうしても水だけでは口直しは出来なかったようで、まだ口の中には不思議な苦みが残っている。


「……まあ、味見してくれたし……僕も、飲むけれど……やっぱ、マズかったんでしょ?」


「ま、マズいというか……に、苦いです……」


 だいたい苦いモノが平気だっていう人はいるんだろうか?どうみてもわざと苦く作られているようにしか感じられない。ドMの私だって、苦みというSっぽさには無理ね!私が求めるドSっぽさというのは言葉責め一択に限るわ!

 小さく何度か咳をするものの(喉に苦みが張り付いているようで、なかなかそれが取れないのよね)苦みが無くならない味わいに思わず胸元をトントンと叩いていた。

 そんな私の様子を横目に、『ふふっ……』と小さく笑いつつ、しっかりとスープを一口、また一口と口に運んでくれるフランに、ようやく安心することができた。


「コレ、何が使われているか教えてあげようか?」


「……フランは、材料が分かるんですか?」


「まあ、なんとなく想像が付くってだけだけれど……」


 最初の一口目に味わう苦みにさえ我慢してしまえば次から次へと口に運んでいっても大丈夫なようで(この兄弟凄いわね……)いつの間にか完食してしまっていた。

 気になるのは、このスープに使われているとされている材料。……もしかして、薬草とかの類じゃなかったのかしら?


「植物だとか、それこそ薬草とかじゃないんですか?」


「ふふっ……なるほど。そう考えていられるうちは幸せかもね~。……コレ、多分だけれど動物の内臓系でも使われているんじゃない?」


「な、内臓!?」


 内臓って、所謂、ホルモンとかそういう!?まさか、このスープを調理する際にはイチから動物を用意し、かっさばき……しかも、そのなかの内臓系を使ったってこと……!?そりゃあ、調理場から追い出されるのも分かる気がする……。なかなか、そういう捌く様子って見慣れないモノだし、それを目の当たりにしたら私の方がぶっ倒れてしまうのかと察して気を配ってくれたのかもしれない。


「こんなに苦い薬草なんて無いんじゃない?基本、内臓系って苦いじゃん。それを煮込んで……って、大丈夫?」


 今までなんとなく薬草系、現代で言えば漢方薬系統かと考えてなんとか我慢出来ていたのだけれど、内臓内臓とひっきりなしにフランの口から吐き出されるものだから途端に気持ちが悪くなってきてしまった……。

 思わずそっぽを向きつつ口元を覆っているとフランも私の様子に気が付いたらしく、きょとんとしながら小さく『ふふっ』と笑っている。


「平気平気~。別に毒があるってわけじゃないから」


「……ふ、フラン!紅茶は、如何です!?すぐに淹れますよ!すぐに!」


「……あー、うん……じゃあ、お願いしまーす」


 フランの小さな笑い声を耳にしながら手早く紅茶の準備をしていくと、まずはフランへ。そして自分用にも淹れたのだが、そこには砂糖もミルクもたーっぷりと入れたモノで、今度こそ口直し!とばかりに紅茶を口に、そして胃に流し入れていった。


「……そんなに苦かった?」


「!む、無理ですね……いろいろと聞いちゃうと、余計に……」


 『美味しい美味しい』と私が用意した紅茶を褒めてもらいながら、一気に紅茶を飲み干した私に苦笑いして、おかしそうに笑っているフラン。だいぶ……というか、そこまでいろいろ語れるぐらいに元気になったようで良かったです……。


「小さな時とかも風邪を引いて熱が出て寝込んでいるとこういう系のスープって出されていたんだよね。たまたま調理しているところを見ちゃったときはショックっていうか、驚きでいっぱいだったけれどさ~。……まあ、苦いけれど栄養はあるらしいから。……レンも看病疲れあったでしょ?ありがとね」


 あ。あら……もしかして、味見と称して私に一口だけでも食べさせようとしていたのは私の体のことも気を配ってくれたってことなのかしら?こういうさりげない心配りが出来ると将来が楽しみね!きっとフランの優しさに心を奪われちゃう女性たちも続出するのかもしれない。

 年上攻撃が上手いフランのことだから将来フランの隣に座ることになるのは年上の女性になるのかしら?いろいろなおねだりにキュンとしちゃうお姉さん系がフランの好みだったりするのかしら?


「……今日ぐらいは、僕が独占しちゃっても良いのかな……」


「?」


「食べるモノは食べたし……もうちょっとだけ、横になりたいんだけれど……レンも、隣に来てくれない?」


 この兄弟って、こういうところも似るのかしら?

 よく似た兄弟だこと、と心の中で苦笑いしつつフランの隣に座ると途端にぎゅっとフランの腕が腰に回されてぎゅっと抱き着かれてしまった。


「……良いですよ。まだまだ病み上がりですから、ね」


 もう、しばらくの間はフランとの時間を堪能することになるかもしれない。

 スープの材料、発覚!!やっぱ分かる人には分かるんでしょうか。きっとアーロンも分かっていたけれど、敢えて口にはしなかったのでは……?(苦笑)


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