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八十四話 フランの可愛らしい年上責め攻撃

 熱い……それでも、精一杯甘えてくれているように見えてしまって可愛い。

 こういうのがフランの素、だったりするのかしら?

 慌ててパチッと目を覚まし、時間を確認するとフランの看病をしはじめてからだいぶ時間が経ってしまっていた。まあ、今の今までフランと一緒に添い寝をしてしまったというのもあったのかもしれないけれど、ついつい……ね?

 私を抱き締めているというよりも……抱き着いている、って言う方が正しいんじゃないかしら?と思えるフランの様子に、キュンキュンしてしまう。あ、もちろんフランが可愛らしいっていう意味でキュンってしちゃうってことよ。

 アーロンほどに背格好はまだそれほど高くは無いし、腕もそれほど長くないっぽいから私の背中やら腰やらに腕をまわしたくても届かないみたい。だからこそ、私の胸元にぎゅっと顔を押し付けて眠っているらしい。……ふと思ってしまったのだけれど、サイモン様に対してもこのようにフランは甘えていたりしたのかしら?サイモン様に、『ぎゅってしていい?』って言うフランの図を想像してしまうと……えーっと、ちょっとイけないモノに発展してしまうかもしれない図になってしまうので慌てて脳内イメージから弾き飛ばしてしまった。たぶんサイモン様には、こうして甘えていないと思う……たぶん、ね?


「……ぅ……あれ、寝てた……」


「あ。おはようございます、フラン。……顔の赤みは、だいぶ引いたみたいですね?」


 不意に目を覚まし、顔を上げたフランの顔色を覗き込んでみれば、熱で真っ赤っかだった顔色がだいぶ良くなってきているように見える。そっとおでこやら頬やらに片手を添えてみれば、多少は……まだ、あたたかいと感じぐらいだけれど『熱い!』って思うほどでも無くなってきているみたい。たぶん、このまま大人しくしていれば良くなるんじゃないかしら?


「……私の手、冷たく感じますか?」


「え?うーん……どっちかって言うと、ぬるい……かも?」


 良かった。

 それって、つまりは熱が引いてきているってことじゃない。もし、これでまだ私の手が冷たくて気持ち良い……と感じるようであれば、まだまだ熱は高そうかなと思って、まだまだ看病は続くかも……と思っていたけれど、ぬるく感じるようであれば熱が下がった証拠よね。


「良かった……この分なら、少しずつ食事も食べられるかもしれませんね」


「えー……まだ、あんまり食欲無い……」


 ちょっと面倒くさそうなフランの話し方も、元気になってきたからこそ耳に出来るものだ。うんうん、これならば大丈夫だろう。


「ダメですよ。熱が出ていたときには、ほとんど何も食べていなかったのでしょう?だったら栄養を付けないと」


「……どうしても、食べなきゃ……だめ?」


 うっ……これ、わざとなの!?絶対にわざとなのよね!?こてん、と首を傾げて可愛らしく『だめ?』って見つめてくるのはフランの年上のお姉さんに通じる攻撃の一つなのかもしれない。でも、だめだめ。私は、そういう攻撃よりもSっぽい言葉責めの方が好みなのだから。フランの可愛らしさにはキュンとしてしまいそうになるけれどここは心を鬼にしないとね。


「だめ、です。それに今の状態で、部屋の外に出歩くことが出来ると思いますか?」


「……出歩けないの?」


「栄養が足りていないのですから途中で貧血でも起こしてぶっ倒れてしまいますよ?」


「あー、そっか……」


 残念だなぁ……と呟きを洩らすフランを横目に水の入ったコップに手を伸ばし。


「……ゆっくりで良いので、体を起こせますか?」


「……手、借りてもいい?」


「はい、もちろん」


 一旦、コップをサイドテーブルに置くとフランの体を支えながら上半身だけでも起こしてもらう。熱は下がってきているようだけれど、こういう仕草の一つ一つは、まだ自分だけでおこなうには苦労しているのかもしれない。


「……頭がグラグラするとか、気分が悪いとか……ありますか?」


「そういうのは……特には無い、かな……」


 体を起こしたときに、一度頭を片手で押さえる仕草はみせたものの、気分が悪いとかって感じは無さそうで安心した。

 改めて水の入ったコップをフランに手渡してあげると、少しばかり震えながらコップを受け取るとごくごくと水を飲んでいったのでかなり喉は乾いているんだと思う。


「ふぅー……あー……その、えっと……」


「?どうしました?」


 水を飲み干すと私の方をちらちらと見ながら気まずそうに、そして何かを話したそうにはしているものの口に出すのを躊躇っているのか、もごもご……と言い淀んでいる様子に首を傾げる。


「……ご、めん……それ……」


 ちらちらとフランが見ていたのは、フランの火の魔法によって焼かれてしまった私のドレスのことだったらしい。別に私自体には何とも無い。火傷すらしていないし、部屋にあった家具などにも飛び火してしまったようなことも無かったので私としては気にしていない。……まあ、このドレスを用意してくれた方には申し訳無い気持ちではあるのだけれども……。


「気にしないでください。……それにしても器用なものなんですね。一部だけを焼くなんて」


 フランは気にしなくて良い。むしろ冷たく感じる私の足やら手に包まれてゆっくり休むことが出来たのならフランの健康が第一だろう。何度も言うが、ドレス職人にはやっぱり申し訳無い気持ちもあるのだけれど、やっぱりここは人の命を優先にしてもらいたい。


「……僕の魔法って……対象物だけを燃やすみたいだから……燃やしたくないモノは、一切燃えないよ……」


 なるほど!

 だから私自身には何も問題は無くて、ベッドのシーツとかにも一切火の手がまわるようなことは無かったのね。


「ちょっとびっくりしましたけれど、フランの魔法って改めて凄いなあって思いました」


「……怖く、なかったの?」


「最初は。……でも、終わってみれば燃えたのはドレスだけだったので随分器用だなぁって思いましたよ」


 ぶっちゃけ最初、火が見えたときにはびっくりしたものだった。でも、熱いって感じることもなかったし、ドレスの端が燃えただけだったから具合が悪くてもこのように器用に魔法を扱えるフランってめちゃくちゃ凄い人なんじゃ……?と思ってしまう。


「あんまり……その、僕みたいな……火を扱うヤツって怖がられるからさ……」


「でも、フランはきちんと制御して使いこなしている感じでしたよね?」


「当たり前じゃん。……魔法とかで、人とか無意味に傷付けたくないし……」


 そういう言い方をするってことは、もしかして魔法を使い始めたときには、ちょっとしたうっかりとかで人を傷付けてしまったことがあるんだろうか……。でも、私は何ともない。それを伝えたくて、フランの頭を優しくよしよしと撫でてあげた。


「大丈夫です。私は、何ともありませんから」


「……うん……」


 さて、もっとフランには水分をとらせようか、それとも早くも食べるモノでも用意してもらおうか、と考えているとぽすっと可愛らしい音とともに私の胸元に倒れ込んできたフラン。まさか急に体を起こしたから具合が悪くなったとか!?ぶり返したりしたんだろうか!?と焦っているが……。


「……ありがと……そばに、いてくれて……」


 かわ……っ!!!

 い、いえいえ、そんなことよりも!素直に、フランが『ありがと』って!!やっぱり素は良い子だったのよ、フランって!


「……いえいえ、どういたしまして。最初はサイモン様が看病をなさっていたのですが、覚えていらっしゃいますか?」


「……サイモンが?……覚えてない……」


 か、可哀想なサイモン様……あんなに、ぼろぼろになりながらもフランの看病をしていたのにね……。


「凄い熱が続いていたので分からなかったのかもしれませんね。私が来てからは……覚えていますか?」


「……ドレスを燃やしちゃった辺りからは、覚えてるけれど……」


 確か、置いて行かないでとかいろいろ寝言を言っていた気がするのだけれど、たぶんフランは覚えていないのね……。別に蒸し返すようなことでもないだろうし、わざわざ伝える必要は無いでしょう。

 胸元で大人しく凭れ掛かっているフランの頭を撫でてあげながら空いている手で、しっかりとフランの体を支え、抱き締めてあげた。

 フランも、復活……っていうことで、良いのかしら!?良かったわね!熱が下がって!


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