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八十三話 セクシー弟君の器用な魔法

 まるで犬や猫のように私の手に甘えてきて、舐めてくるフラン。

 ……可愛いのだけれど、ちょっと……くすぐったいのよね。

「ンッ……ハァハァ……あ、つい……も、無理なんだけれど……」


 しばらくは私の手を堪能していたフランだったのだけれど、体の熱さに耐え切れなくなったのかぷちぷちと寝間着として着ている上のシャツのボタンを外しはじめてしまった。可愛らしい年下の男の子、というイメージが強いフランだったのだけれど、ダルそうに……そして、顔を赤くしながらぼんやりするなかシャツをはだけていけばそこには熱で朦朧としているものの一人の男性がいた。

 華奢な身体つきかと思っていたけれど、こうして目の前にしてしまうとアーロンの弟だってことがよくよく分かる。余計なお肉とかなんて付いていなくて、すっきりとした体形についつい視線が釘付けになってしまった。

 しかも完全にシャツを脱いでしまうのではなく、ボタンだけ外し、胸元は丸見えだが脱ぐまではいたらないセクシーな恰好に、ついつい男の子っていうモノから男性として見えてしまう。


「ふ、フラン!?そんな恰好で……えっと、あまり脱がない方が良いのでは?」


「……ッ、熱いから……ねぇ、レン……さっきみたい、触って?……熱くて熱くて、死んじゃいそう……」


 私の片手をフランは熱い手で取ると、まずは赤い顔をしている頬に触れさせ、そして首筋を辿り、ぺたぺたと胸元にまで触ってほしいとねだってくる。あちこち熱くて大変でしょうけれど、汗を掻くためにもシャツはきちんと着ていた方が良いのでは!?

 頬も熱いし、首筋に手が触れるとやはり相当汗を掻いているらしく、汗ばんでいるのが分かる。それは、胸元も同じ。


「レンの手、気持ちいい……もっと、触って?ぎゅって、して?」


 セクシーなフランの一面を目にしながら、可愛らしい発言をしてくるフランに……もしかして、フランって天然なのかしら!?と思いながら、そんなに気持ち良いのなら……と両手でフランの顔を包み込むように頬に両手を当ててあげると『えへへ……気持ちいい……』と満面の笑みを向けてくれるからちょっとだけドキドキしてしまう。フランの満面の笑みってなかなか見られないものね……。

 ちょっと、さすがに胸元とかお腹辺りにまで手を伸ばすのは躊躇われてしまって、頬をしばらく触ってから今度は首筋に両手を当ててあげると心地良さそうに目を細めてくれる。


「……これで、どうでしょうか?少しは楽になりましたか?」


「……もう、終わり?」


「あー、その……さすがに体の方にまで触るのは……ちょっと……」


「……じゃあ、僕が抱き着いても良い?」


「え、えぇ……まあ、それぐらいなら……」


 私がOKを出すとおもむろにフランは片手を私の顔の前に向けた。は?えっと、これは?手を取れ、っていう意味かしら?そう思ってフランの手に触れようとした次の瞬間。目の前に火が見えた。まさか、私ここで焼け死んじゃう!?と焦りつつ火事の危険もあるんじゃ!?と慌てたものの不思議と火が付いて燃えているのは私のドレスの端っこばかりだった。その火は不思議と他の家具に飛び火するようなこともなければ私自身を焼くことも無いようで、しばらくぽかーんと火の勢いが無くなるのを待った。


「……こんな、モンかな……」


 ベッドだって、もちろんシーツだってまったく燃えていない。燃えたのは私の着ているドレス。しかも、全部が焼けてしまったわけではなく、裾の長いスカート丈が短くなって、腕部分を覆っていた生地も中途半端な位置まで焼け落とすという器用な火だった。

 いきなりこの場に誰かがやってきたら私の恰好に悲鳴を上げるかもしれない。みすぼらしい姿っていうか、一人だけ戦果から生き延びてきたような恰好だったので、とてもとても王子様の許嫁になった女性の恰好には見えなかったからだ。


「……うん、冷たくて……気持ちいい……」


 ドレスのごわごわ生地が邪魔だったんだろうか?それとも少しでも私の皮膚に触れたかった?腕やら足も空気に触れる面積が多くなり、それを満足してぎゅっと私を抱き締めてくると熱い足が私の素足に絡み、私の背にもフランの熱い手が直に触れてフランの熱の高さをより実感させられることになってしまった。


「あつ……っ……フラン、熱、高すぎです……」


「下がらなくて……なんで、かな……?」


 まともな会話は成り立つものの呼吸は『ハァハァ』と言っているし、とにかく触れるところ全てが熱くて、これ大丈夫なの!?と心配してしまう。高熱が出たら人間の体って汗を掻くことで熱を下げるらしいのだけれど、フランって汗もだいぶ出尽くしちゃっているんじゃないかしら?


「その……上だけでも良いので、体拭きませんか?そうすれば少しはスッキリするかもしれませんし……」


「……こうして、抱き着いていたら……迷惑?」


「迷惑ではありませんが……フランの体が一番なので」


 『分かった……』と一度は解放してくれて大人しくしてくれているから取り敢えず上に着ているシャツだけを脱いでもらうと急ぎ水で冷たく濡らしたタオルで体を拭いてあげることにした。少しばかり冷たく感じ過ぎたのかビクッと体が強張っていたものの特に嫌々と言うわけではなく、私の言うことに大人しく言うことを聞いてくれているのでケアがとてもしやすい。

 また同じシャツを着させるのもどうかと思ったので代えのシャツが置かれている棚から真新しいシャツを取り出してくるとフランに着させた。最初はボタンを外そうとしていたようだったけれど、私が『ボタンを外しちゃだめですよ』と言うと途端に大人しく従ってボタンに手を伸ばそうとはしなくなった。大人しいっていうか……主人に忠実そうな犬みたい?


 しかし、ものの見事に、そして中途半端に焼かれた自分のドレスには目を丸くしてしまった。焼かれたのは袖とか長いスカートの膝より下の部分。全部が焼かれてしまっていたら私は今頃下着姿になっていただろうからとんでもない悲鳴が上がっていたことだろう。が、そうはならなかった。フランってそう言えば火の魔法を使うんだったっけ?それが、こうなっちゃったってことかしら?しかも、所々が燃えるだけに留めるというなんとも器用に魔力を操作していたようだ。


「……さぁ、横になりましょう?」


「……レンは?」


「……病人を一人にはさせられないので、一緒にいます」


 こんな恰好、誰かに見られたらそれこそ大問題になるんじゃないだろうか。それに着替えのドレスだって今やほとんどがアーロンの部屋に移されている。アーロンがこれを見たらひっくり返って驚くかもしれない。

 今から着替えに戻るというのも面倒だし、フランを一人にはさせられないし……ということで、私は自分の恰好を我慢することにした。


「……なら、一緒に……寝よ?」


 わざとなのか、分かってやっているのか分からないのだけれど、こてんと首を傾げながらおねだりしてくるフランに、キュンと来るものがある。か、可愛いっていう意味ですからね!

 私は苦笑いしつつフランの隣に寝転がればトントンと隣のシーツを叩いてフランがやって来るのを待った。汗を掻いて赤い顔をしているものの満足そうに大きく頷いたフランは私の隣に寝そべり、ぎゅっと私を腕に抱き締めながらなんとか眠りについてくれたようである。

 やっぱり体を拭いてスッキリさせてあげたのが良かったのかもしれない。シャツも着替えさせたし、気持ち良いのよ、きっと。最初は荒く聞こえていた呼吸も少しずつだが、スヤスヤ……といった感じになってきたし、まだ顔は赤いが眠りについている間に見られていた苦しそうな顔というものはだいぶ緩和されてきたようだ。この分なら、きっと良くなってくるかもしれない……。そう思いつつ、私もついうっかりうとうとしはじめてしまい、フランの横で眠りについてしまった。

 フランはスイーツ作りもお手の物。魔法も器用そうな感じがしたので、焼くのはコレだけ!と決めてかかればそう難しいモノでもなかったはず。


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