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八十一話 フランの番よ!

 アーロンも、ガッツリ……とまではいかないが、食事も食べられるようになってきた。

 でも、まだまだ具合が悪そうだって言われているのが一人……。

「フランが、まだ寝込んでいる?」


「え、えぇ。それで殿下の時にどのように看病をしたのか参考までにお聞きしたくて……」


 アーロンの部屋にやって来たのは、片眼鏡が素敵なサイモン様だったのだが……だいぶ、お疲れのようで(確かサイモン様にはフランの看病をしてもらっていたのよね)げっそりとしてしまっている。アーロンも自分がすっかり良くなってきているから弟でもあるフランもそろそろ良くなるだろうと考えていたらしく特に気にしていなかったようなのだが、よくよく話を聞いていくとフランの熱は下がらなくて魘されていることも多いそうだ。


「看病といっても、冷たいタオルを額に乗せて……って、一度フランの様子を見て来ても良いですか?たぶん、こういうのって実際に見てみた方が分かることもあるかと思うので」


「あぁ。……私も……」


「いえいえ!殿下は病み上がりでしょうし、それにフラン様の近くにいてまた熱がぶり返したりしたら申し訳無いものですから……」


 アーロンは行く気満々だったようだが、サイモン様からは全力で首を左右に振られてしまったので残念そうにソファーに座り直していた。


「では、少し行ってきます。あ、くれぐれも仕事に戻ろうだなんて考えないでくださいね?」


「……はぁ、分かったよ……」


 念を押してアーロンの部屋から出る際に、ちらっとアーロンの様子を見てからサイモン様とともにフランの部屋へと訪問したのだった。


 そこでは、赤い顔、そして凄い汗をぽつぽつと浮かべているフランが。近くにはオリーブもフランの様子を心配しているらしく、くりくりのお目目でフランのことを見守っている姿があった。ずっとフランのところにいたのね……。

 そっとフランの額や頬に手を添えていくと、とにかく熱い。え、もしかしてずっとこんな様子なのかしら?


「熱が下がるどころか、ずっとこのような調子でして……エマ殿からいただいた薬も飲ませているのですが、なかなか快復する様子が見られなくて……」


「そうですか……。では、私がしばらくフランの様子を見ていますからサイモン様は一度ゆっくり休養をとってきていただけますか?その、フラン以上に具合の悪そうな顔色をしていますし……私もアーロンの看病をしていたので気持ちは分かりますが、たまにはしっかりと寝ないと倒れてしまいますよ?」


「うぅ……情けない限りですが、少しばかりお願いしてもよろしいでしょうか……」


「はい。もちろん」


 サイモン様もかなり無理をしていたらしくフランの部屋から出る際にも壁やらドアやらに体をぶつけていたものだからきっと気を抜くとそのまま倒れてしまうかもしれない。

 それにしても……フランのこの様子、もしかしてアーロンよりも酷い……?

 何度も汗を拭ってもすぐにぽつぽつと浮かんでくる汗に、熱が相当高いのだと分かる。すぐに額には水で冷たく濡らしたタオルを乗せてあげるものの、それはすぐにぬるくなってしまって、すぐに冷たくする必要があった。


「……きゅぅ……」


「!オリーブも、ずっとフランを見守ってくれていたの?ありがとう。でも睡眠不足はダメよ?オリーブは体も小さいんだから。フランが心配なのも分かるけれど、あなたもきちんと休んでね?」


 ちゃんと言葉の全てを理解してくれたのかまでは分からなかったけれど、それでも元気が無い様子のオリーブの小さな頭をよしよしと撫でてあげるとすぐにすぴすぴと寝始めてしまった。これは……オリーブもフランを心配して寝ていなかったのかもしれない。


「フラン……ツラそうね……薬は飲んでいるらしいけれど、それが効かないのかしら?」


 どのぐらい飲ませたのかまでは聞かなかったけれど、アーロンも最初のうちは、しんどそうでとにかく休ませることしか考えていなかった。でも、フランの方がまさかの重症だなんて。……これって、確か魔力の蓄積量が多い人ほどに長く重く続くんだったけ?ということは、アーロンよりもフランって魔力が強いってこと?

 フランが魔力を使っているところは見たことは無いけれど、でも、この病の症状が合っているのならフランってめちゃくちゃ魔力があるっていうことだ。


「……うぅ……っ、は……あ、つい……あつ、い……」


「!フラン!?」


 ぎゅっとシーツを握り締めながらアーロンのときにも目にしたように苦しそうに、そして悪夢にでも魘されているのか苦しい表情を浮かべているフランを、とにかく安心させてあげることしか出来ない。

 そっとフランの頭に触れれば手から伝わる熱さに眉を顰めつつ、そっと頭を撫でてあげる。シーツを握り締めている手に自分の手を重ねてあげればそっと触れて少しでも魘されることが少なくなりますように、と願いながらそばにいた。


 少し経つと魘されていた具合も少しは和らいだのか荒い呼吸は繰り返しながらもシーツを握り締めて何かに耐えるかのような仕草は見られなくなった。これは、少しは和らいだってことで良いのかしら?

 フランの額に乗せているタオルももう何度も取り替えて冷やしながらかたわらに座って様子を見守る。サイモン様はどんなふうに看病をしていたのかしら?たいして私がしていることと変わらないと思うのだけれど、それでも長引いている様子だからとうとう私にヘルプを求めたのかもしれない。うんうん、困っているときにはお互い様よ。いくらでも力になれることがあれば頼ってちょうだい。


「薬はー……あぁ、これね。そこそこ減っているってことは飲ませてはいるのかしら……うーん……」


「……ぁ……れ、ん……?」


 掠れた声で呼ばれたものだから慌ててフランの元へ戻るとそっと頬に手を添えるが、まだまだ熱いわ。


「アーロンの具合は良くなったからフランの様子を見に来たの。……まだまだ、ツラそうね?」


「……っ……熱くて、頭も……ガンガンする……」


「うん。熱が高いんだもの……水分とかは?たまに飲んでいるかしら?」


「……あ、んまり……」


 ちょっと頭を動かすだけでも痛むらしく、顔を歪めながらゆっくりと言葉を発するフランに、よしよしと優しく頭を撫でてあげる。


「薬は?飲んだばかりかしら?ツラいかもしれないけれど薬は、ちゃんと飲まないと」


「……さ、いもん……は?」


「ふふっ、フランの症状がツラそうだったから私にバトンタッチよ。これからはしばらくは私が近くにいるから。欲しいモノがあれば言ってちょうだいね?」


 ぼ~っとしている感じの表情は、熱のせいね。

 普段からぼんやりとした口調をしていたけれど、何処を見ているのかはっきりしないって感じは熱が高いからだろう。

 私が額やら頬やらに手を当ててあげると、それが気持ち良いらしく私の手に甘えてきて頬擦りまでしてくる。!か、可愛いわね……。


「薬……飲むから……その、レン……そばに、いてくれる……?」


「もちろん、いますよ。良くなるまで近くにいますから」


 これって、もしかしてフランの我が儘?そばにいて、だなんて可愛いことを言うじゃない!小動物のようにも見えてしまって、そして弱っているフランの様子にドキドキしながら急ぎ薬を用意し、やっとのことで上半身を起こしたフランに水と薬を手渡してあげると素直に飲んでいったから取り敢えず安心した。

 でも、薬は飲んだのにすぐに再び横にはならず、じっと私を見つめてくる。えーっと……?これは、どういう目、かしら?


「ね、寝ないんですか?」


「寝たいんだけれどさ……熱いのか、寒いのか……分かんなくて……レンに、ぎゅってしてもらいたい……って言ったら、怒る……?」


 はぅわ!?

 ぎゅって、ぎゅって言ったわ!今!!しかも、様子を伺うようにこてんと首を傾げて見つめてくるから可愛さが爆発しているわね!


「お、怒りませんよ!……えっと、それじゃあ隣、失礼しますね?」


「……うん……」


 ドレスに苦戦しつつフランの隣に座るとゆっくりとだが熱い手が私の体に回されてぎゅっと抱きしめられてしまった。あ、あら?私がぎゅってするんじゃなくて、ぎゅっとしたかったのかしら?

 そのまま一緒になってずるずると寝転がっていくとフランの口元からもれる熱い吐息やら荒い呼吸を耳にするとそっとフランの背中に手を伸ばしてぽんぽん、と軽く背中を撫でてあげた。

 フランって魔力強いの!?いつかはフランの魔法も見てみたいわ!!


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