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七十九話 言葉ごちゃ混ぜ

 アーロンの具合が良くなったことは素直に嬉しい。

 でも、アーロンと触れ合うと途轍もなく心臓がバクバク言うようになってしまった……。

 その日は、ラウルにも時間があったようで久しぶりに顔色も良くなったアーロンを見ては『良かったです!レンの看病の賜物ですね!』と大喜びしていた。


「レンは、寝ずに殿下の看病をしていたのですよ!本当に、レンの方が倒れてしまうのかと心配で心配で……」


「そ、そんな大袈裟な……」


「あぁ。そのせいか……顔色も少し悪いし、クマも出来ている……」


 ラウルがこれでもか!というほどに私がどれだけ頑張って看病をしていたか、を熱心に語ってアーロンに聞かせているとアーロンも納得した様子で、そっと私の頬に片手を添えると下瞼にそっと指先を当ててくる。うっ……手が、大きい……あ、いや、それはどうしても男と女っていう違いがあるから仕方のないことなのだけれど、そんな大きな手で触れられたら私の顔なんて簡単に包み込まれそう……。

 ついつい、うっとり……とアーロンの手の心地良さに顔に熱を集めつつ目を細めていると『あらあら!では、私はこの辺で失礼します!』と慌ててラウルがアーロンの部屋から出て行ってしまった。あ、あれ?なんで?


「ラウルも気が利くようになったな……。さて、俺は少し横になりたいんだが……どうしても一人で寝るには、このベッドは広すぎる。……俺の言いたいことは、分かるな?」


 ラウルが出て行ったドアの先を眺めてはポツリと呟きを洩らし、子犬とか子猫でも愛でるかのようにそっと私の頬に手を添えて見つめてくるアーロンに、ごくりと息を呑みながらこくんと小さく首を縦に動かした。

 それを確認したうえで自分の隣をぽんぽんと叩くと、私は素直にベッドに乗り上げる。


「あぁ、その恰好だと寝にくいか……まあ、別に良いだろう……よっ……」


「ぇ、うひぁ!?」


 アーロンはほぼ寝間着のようなラフな格好だけれど、私はいつものように派手過ぎることのない、それでも質素には到底見えないドレスを着ているものだからさすがにこの恰好のまま寝るのはマナー的にはよろしく無いんだろうけれどそれはお構いなしに、とばかりに腰まわりにアーロンの手がまわされるとグイッと引き寄せられてしまった。

 眼前には、シャツのボタンがいくつか外されたアーロンの素肌が。

 視覚からの情報が強すぎるから目を閉じれば良いのよ!とぎゅっと目を瞑るものの私の腰と後頭部辺りにアーロンの手が回されて抱き込まれてしまっているから自分のモノではないアーロンの温もりも感じてしまう。

 まずい……これ、目を閉じていても刺激が強いんじゃ……?

 そっと目を開けるとほぼアーロンに密着しているような感じで私の顔はアーロンの胸元のそばにあった。し、心臓が……む、無理……やっぱり、慣れないわっ!!


「あ、あーろ……」


「ん?どうした?」


 耳のすぐ近くから吐息混じりに聞こえてくるアーロンの声に、頭もクラクラしてきてしまった。心臓はバクバク、頭はクラクラ……これ、私どうにかなっちゃうんじゃ……?


「あ、あの……このままだと、心臓が無理です……」


 あれ?なんか、今めちゃくちゃなこと言わなかった?

 アーロンだって無反応っぽいし……今、私なんて言った?『心臓が無理?』それ、何語?


「なんだ、それ……はぁー……あったかい、心地良い……愛おしい……」


 単に耳の近くで言われただけなのに、言っていることは特別なことでも無い気がするのに、ゾクゾクしてしまった。こう、背中に電気でも走ったかのようにビクッと震えてしまったからきっとそれには気付いているんだと思うんだけれど……本当に、寝転がりたかったみたいで、しばらく腕は離してくれそうにないみたい。


「……っ……アーロン、なんですよね?本当に……?」


「どういう意味だ?」


「あ、いえ……その、アーロンが元気になってから、私……変なんです。心臓とか、凄くて……」


「……あぁ、めちゃくちゃバクバク言っている……どうした?緊張しているのか?」


 やっぱり気付かれていたのね。

 そりゃあ、こんなに密着していれば分かっちゃうか……。


「緊張?緊張……でしょうか……。たまに、アーロンが恰好良く見えるときがあって……前と変わらないはずなのに、触れられると顔が熱くて……」


「へぇ?それは、俺のことが好きだってことだろう?好きなヤツに触れられたらドキドキするものだろう?」


 後頭部が、気持ち良い……。そっと、撫でられているのかな……。

 心臓はバクバクしてうるさいのに、こうして安心させられるような手付きをされるとドキドキしたいのか、安心したいのか分からなくなってしまう。


「看病疲れもあるんだろう。……だから、寝たかったら寝てくれ」


 イイ声……ドキッとするような声って意味じゃなくて、安心してしまうような優しい声だから、ついついうとうとしはじめてしまう。眠いのかな……でも、アーロンの具合が良くなってきてからは私も一緒になって眠りにつくことも多かったはずだから睡眠はそこまで不足しているわけじゃないと思う。それでも優しい声を発するアーロンに、ついつい甘えるように……アーロンの胸元に顔を押し付けていけばアーロンの心臓の音……トクントクンと鳴る音も聞こえてきて、安心度が増してしまった。


「ん……好き…………」


「……は?」


 カクン、と意識が落ちる前に、ぼそっと何か口から洩れた気がするけれど眠りについてしまって自分が何を発したのか思い返すことは出来なかった。

 アーロンは慌てて私の顔を見下ろしたものの、私は既に眠りについてしまっていてアーロンの疑問に応えることができなくて、逆にアーロンをドキドキさせることになってしまったようだったのだけれど、それは私には気が付くことができなかった。


「……くそっ……あまり、可愛いことばかり、言うな……我慢する方の身にも、なれ……」


 思い切り抱き込んでやるが、レンは完全に眠りに落ちてしまったようで小さくむにゃむにゃと言うばかりで何か言う感じはしない。苦しげに息を詰まらせるだとか呻くだとかそれらしい反応は示してこないから今頃安眠状態にでもあるんだろう。

 なんだか、レンの反応が変わった気がする……。何が?と聞かれるとはっきりと応えることが出来ないが、以前よりも反応が可愛くなった気がする。ちょっとした触れ合いでも、まるで催眠にでもかかったかのように、うっとりと幸せでいっぱい!みたいな表情を浮かべることも多くなったし、触れ合いの補充として抱き締めてやれば、ちょっと前なら軽い抵抗とか見せていたのかもしれないが素直に受け止めてくれて、俺の好きなようにさせてくれるようになっている気がする。

 どうした?弱弱しいときの俺とのギャップにでも驚いているんだろうか。それにしては、反応が可愛い。ずっと愛でていたい。もっともっとレンと触れ合いたい。出来ることならキスも何度もしたくなる……が、たまに思い出したかのように頭がくらっとする時があって体は万全では無いのだと感じられる。今は、まだ我慢しろ……とでも言われているみたいで、とても悔しいが、それまではお預けを食らうってことか。でも、レンも時々顔色の悪さ、薄っすらとクマの跡が見えるから彼女に無理をさせるわけにもいかない。愛したい、もっと触れ合いたいのに我慢しなければならない、彼女の体のことも考えなければいけないなんて……歯痒い。たまに細いレンの体を抱き締めているとそのまま抱いてしまえば?なんて悪魔の囁きのようなモノが生まれるようになってきた。アホか……そんなこと出来るわけが無いだろう。でも、時々……その、悪魔の囁きというものがフッと生まれてはすぐに消えるものだから俺の中の理性やら本能やらといったものが格闘しているんだろうか。やっと手に入れた許嫁、もとい婚約者だぞ……だからこそ、大切にしたいんだ。

 混乱しているとワケの分からない言葉が口から出てしまいます(苦笑)いろいろとごちゃ混ぜになった言葉が出ます(苦笑)


 良ければ『ブックマーク』や『評価』などをしていただけると嬉しいです!もちろん全ての読者様には愛と感謝をお届けしていきますよ!

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