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七十七話 アーロンの目覚め

 頭が……なんか、気持ちいい……。

 あれ、撫でられている……?

 パチッと目を開けた。いつの間にか、床に座りながらベッドに顔を乗せて寝てしまっていたらしい。うーん、最近こういう寝方をしているから背中とか腰辺りが痛むのかしら。って、さっきまで何か気持ち良い感覚がしていたのだけれど気のせい……?

 ゆっくりと顔を上げていくと、上半身を起こして片手を空中に上げたまま止めている手が。そして、昨日までは顔を真っ赤っかにしていたというのに、だいぶ赤みが引いたアーロンの顔が!


「あ、あ……」


「おはよう、レン。もしかして、ずっとそうやって寝ていたのか?」


 口をぱくぱくさせてしまって考えが思いがすぐに言葉に出ない。もちろんアーロンに言いたいことはいろいろあるもので、次から次へといろいろと言って聞かせてあげたいこともあったのだけれど、取り敢えずだいぶ顔色が通常モードに戻ったような様子に安心して、ベッドに乗り上げるとぎゅっとアーロンの体を抱き締めてしまった。

 だって、昨日まで……ホントにツラそうで、何を言ってもまともに反応してくれなかったし、それに汗が酷くて、何度タオルを冷やして額に戻したことか。何度、着替えをしようとして苦労したことか。……着替えにはラウルの手も借りていたのだけれど。


「!どうした?」


「だって、だってぇ……っ……あ、アーロンが……アーロンが……」


「ん?俺が、なんだ?」


 急に抱き締めてきた私にもビックリすることなく、むしろ嬉しそうに私の背に手を回してぽんぽんと撫でてくれる大きな手。

 こうやって抱き締めるとよくよく分かる。体の熱さが、だいぶ引いてきているみたい。昨日までは、ちょっと触れるだけでも『あちち!』って火傷しそうなぐらいに本当に熱かったんだから!


「あ。え、えっと……き、気分は?……全然、ご飯らしいご飯を食べていなかったのでお腹空いていますよね……でも、起きたばかりなので、そうガツガツとしたものは食べられないと思うんですけれど……ちょっとでも何か口にしないと……」


 しばらく、通常モードになったアーロンの温もりに浸っていたかったけれど、慌てて手を離し、小さく咳払いを『ごほん』とすると、あれこれと口を動かしていくが、それでも気になってしまうのはアーロンの顔色。お、起きたばっかり?それとも、起きてしばらく時間は経っていたのかしら?


「たまたまラウルが顔を出してくれたから軽いモノを頼んだところだ。……話をしているのに、全然起きる気配が無かったから心配したんだぞ?」


 え、そうなの?

 話し声らしい物音になんて全然気が付かなかったわ。


「……ずっと、看病をしていたんだろう?……悪い。それから……感謝する」


 そっと私の頬に手を添えると目の下……下瞼の辺りに指先を当ててくる。たぶん、クマとかが出来ているのかもしれない。

 でも、そんなことよりも素のアーロンからの謝罪と感謝の言葉を目の前で食らってしまった私は、ガラにも無く顔に熱が集まるのを感じてしまった。しかも、ボワッッッ!!って感じで、一気に火が付いた感じに。


「どうした?顔をそんなに真っ赤にして……」


「ええ!?い、いや、それは……こ、これは、別に……っ……」


 バカみたいにたじたじになっている私は、まともに受け答えすることも出来なくて、まるで壊れたおもちゃがぎこちない動きをするかのように、視線をあちこちに彷徨わせたり、手の甲で顔を覆うものの顔面に集中してくる熱は耳にも移ってしまったみたいで、耳も凄く熱い……。


「……っ、本当なら……そんな可愛い反応をされるとどうにかしたくなるんだが……俺も体は万全じゃないんだ。……くそっ、可愛すぎる……」


「は!?か、かわ……っ……!?」


 『可愛い』だなんて、私には不似合いな言葉に、心臓も壊れてきてしまったのかめちゃくちゃバクバクいっているのだけれど、だ、大丈夫よね!?今度は、私の方がぶっ倒れちゃったりしないわよね!?思わずぎゅうっと胸元のドレスを押さえ付けるものの、先ほどからワケの分からない言動をしまくっている私にアーロンは呆れるどころか微笑ましくフッと小さく笑っているばかり。


「ち、ちが……これは、なんでも……!」


「説得力皆無だな。……フッ、可愛い……愛おしいよ、レン」


 目を細めながらキラキラ王子様オーラを醸し出しつつ、素のアーロンの言葉を向けてくるので久しぶりにアテられてしまった。い、いや、あの、謎の人格の超ドS様っぷりはそれはそれでなかなかに刺激が強くてとてもイイものだったのだけれど、やっぱりアーロン本人が醸し出すオーラって凄いモノがあるわよね……。城下町で王子様スマイルにぶっ倒れてしまった女性たちの気分が分かってしまったわ。


「ところで、一つ良いか?……俺の着替えは、一体誰が?まさか、レンがしたのか?」


「ま、まさか!ラウルにも手伝ってもらってやりましたよ!」


「……だと思った」


 戸惑いながらもやっとこさ応える余裕が生まれてきたので、きちんと受け答えをしてあげると少しばかり残念そうに……それでも、何処か安心したような……なんとも複雑そうな笑みを浮かべるアーロンだった。

 アーロンだ。本当に、アーロンなのよね!でも、ついついまじまじとアーロンの顔を見つめてしまう。あの謎の人格が表に出てきていて、いつもよりもテンションが落ち着いているアーロンとは別人格っていうことはないだろうか……?


「な、なんだそんなに?」


「あ、お気になさらず。観察です」


「観察?」


 コレは……アーロンっぽいわよね。うんうん。素のアーロンで、合っていると思う。私が何か言うとちょっと眉を顰める表情を浮かべ、首を傾げているアーロン。


「あの……熱で魘されているとき、夢か何か見ました?」


「夢?いや、特には覚えていないが……」


 まあ夢って基本的には覚えていないことがほとんどだから不思議ではないのだけれど……もしかしたらあの不思議な超ドS様の人格とかを知られるチャンスかとも思ったのだけれど、アーロンは普通にしているからもしかしたら潜在意識の中の存在とか?それこそ、熱でダウンしているときだからこそ現れてきたっていう存在だったりするのかしら?


「……何か、俺は言っていたか?」


「!い、いえいえ!ずっと熱で魘されているばかりだったので……だ、大丈夫だったかなと思いまして……」


「……確かに、ずっと苦しい感じはしていた。レンが口移しで薬を飲ませてくれたことはしっかりと覚えているから安心してくれ」


「!わ、忘れていいです!忘れてください!」


 ニッと悪戯っぽい笑みを浮かべながら、『随分と積極的だったしなあ』と懐かしく思い出すように呟くアーロンに対して『わーわー!』と軽く叫び声を上げて思い出を払拭させようと試みるが……。


「普段から、アレぐらい積極的でも俺は困らんぞ?むしろ、今から……するか?」


 アーロンの片手は私の頬に添えられているし、自然とお互いの顔の距離は縮まっていくのだけれどどんどん端正なアーロンの顔が近付くたびにドキドキと鼓動が速く、高まって、無理無理!と思わず顔を背けてしまった。


「?」


「あ。……す、すみません……あの、急でびっくりしてしまって……」


 き、キスぐらいなによ……アーロンとは今まで何度も普通にしているのに……。そ、それでも……ちょっと、いや、かなり照れ恥ずかしくなってしまって……その、今更ながらアーロンの王子様プラス素のオーラが強いことに気が付いてしまった。なにこれ、反則じゃない!?アーロンってこんなに恰好良かったかしら?


「いや、俺の方こそ……いきなりで悪い」


 そう悪びれてはくれるものの、きっとアーロンからすれば『なんで拒否るんだ?』と不思議がっているのかもしれない。し、しばらく触れ合っていなかったせい?それとも、別の人格が潜んでいると分かったせい!?な、なんだかアーロンを直視するのも躊躇われてしまって……ぎゅっとドレスの裾を握っている手元にばかり視線を集中させてしまっていた。

 あら。あらあら?どうしたのかしら?久しぶりにまともにアーロンと顔を合わせたから照れている?それとも、謎の人格を意識してしまった!?


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