表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

76/105

七十六話 謎の超ドSに翻弄されているのだけれど!

 水分もとれるし、たぶん栄養もある!

 果物って偉大だわ!!

 ちょこちょこ……ではあるものの、私も休憩がてら休みを取るようになってきたし、手を付けられていない果物を片手間で食べられるという考えで口にしながら私の健康状態は少しはマシになってきたと思う。でも、アーロンの熱は……まだまだ引かないのよね。

 しかも、最近厄介な事が起きるようになってきてしまっていた。


 それは……アーロンから生まれる謎の人格の存在。

 たまに目を覚ましたかと思えば何処かに行こうとするアーロンを押さえようとしたら私に興味を持ってしまったらしい謎の存在。それが、たまーにだけれど表に出て来るようになってしまっているのだ。未だに『誰なのよ』って聞いても応えてくれる気配は無いし、私を構うことばかりを楽しんでいる様子だ。そして、だいたい力尽きたように気を失っていなくなってしまう。コレって、もしかしてアーロンの持つ魔力と関係しているのかしら?

 しかも、その存在は、本当にいきなり表に出てくるものだから毎度毎度心臓に悪いのよね……。


 たまたまアーロンに飲ませる薬の用意をしているとき、タオルを外して冷たい水に浸からせてからキツク絞り直しているとき、など……アーロンからちょっと目を離している隙でも狙っているかのように突然現れてくるものだから慣れないわ。


 ちょっとだけ果物を摘まむつもりでベッドから離れ、ソファーと対になって置かれているローテーブルに置かれている果物を手に取り、もぐもぐとしている間に突然背後からぬるっと熱い腕がまわされたものだから危うく口にしていた果物を喉に詰まらせるところだったじゃないの!


「!ちょ、ちょっと……危ないでしょう!」


「何が?……イイ匂いがする……あぁ、ソレを食べていたのか……」


 しかもアーロンに負けず劣らず、触れ合いみたいなモノが好きらしい。とにかく表に出てくるときには、私に触れたり、抱き着いたり、抱き締めたりしてくる。体そのものは熱を帯びているものだから熱くてたまらないわ。


「……あなたねぇ……一体何なの?アーロンは必死になって寝て一日でも早く熱を下がらせようとしているのに……あなたがフラフラ出歩いていたりしたら下がるものも下がらなくなるじゃない」


「コイツの体のことなんぞ知ったことか。……それに、俺はお前に興味がある……」


 ぐっ……それこそ、引っ叩いたりしたい。が、肉体そのものはアーロンのモノだ。叩くわけにはいかない。が、私が手を出せないのを分かっているのか、それとも分かっていないのか、とにかく愛おしそうに私を構ってくるのだ。


「……んっ……ふふっ……可愛い……」


 チュッと私の首筋やら耳元に口付けるとどうしてもビクついてしまう私の様子にコイツは面白おかしく、そして愛おしそうに囁いてくる。やめて、そんなふうに、アーロンの体を使わないで……。


「ちょ、やめ……っ……くすぐったいんだってば!」


「くすぐったい?……それにしては、イイ顔をしているようだが?」


 顔……?

 さすがに鏡が近くにあるわけじゃないから自分の顔なんて分かるはずがない。でも、コイツはきっとまともなことは考えていないはずなのよね。


「ほら……こっちへ来い。……それとも床に押し倒されたいか?」


 ぐいぐい、と手を引っ張られて行くと再びベッドへ。素直に寝てくれるのか、と思いたいのだけれどコイツの場合、そういうわけにはいかないのよね。……これ幸いとばかりに私とイチャつきたいらしい。


「ぅ、わわ!?……っ、ぅぅ……」


 最後はベッドに突飛ばされるように背を押されてしまったものだから足をもつれさせながらベッドに倒れ込むことになってしまった。それを可笑しそうにククッと低い声で笑っているものだから超ドMの私の本性が興奮してしまいそうになる。いやいや、これはアーロンじゃないんだから!まったく違う、ワケの分からない人物なのだから、コイツの自由にさせたらダメよ!

 急ぎベッドから起き上がろうとするもののそれを止めようと目の前に立ちふさがるのはアーロンの顔。しかも唇を重ねながらどんどんと体重を掛けられるものだから私はベッドを背に押し倒されてしまう。なんでこの人、こんなに熱がある体でこんなに力が強いのよ!?


「……んっ……ゃ、だ……」


「あ?何が嫌なんだ?……もっと、してほしい……お前は、そういう顔をしているが?」


 私の上にのしかかりながら耳元や頬、首筋にチュッチュッと口付けては面白そうに私の反応を楽しんでいる様子。やだやだ、と言っても相手には残念ながら通じないようで面白そうに見ているばかり。


「……ほら、口を開けろ……また、噛まれたくは無いだろう?」


 きゅっと唇を噛み締めるものの、そうだ、この人は……私の傷が治るのを間近で見ているんだった。でも、傷を負えば当然痛みは感じるし、出来れば苦痛といったものは味わいたくはない……。

 私の口をこじ開けるように片手の親指をねじり込ませてくるから、その指を噛みきってやろうかと思うが、この体はアアーロンのモノなのよね……それが、なんとも悔しいわ!


「んんっ……これで、良いんでしょ……」


 無理にこじ開けられた感はあるものの満足そうに目を細めて見つめられてから指を抜いたところで唇を重ねられる。しかも、ぬるっと舌先がねじり込まれてくるものだから逃げたい。離れたいけれど、頭はベッドに押さえられているし、両手も熱いアーロンの手で押さえられてしまっている。時たま触れる舌もとても熱くて熱くて、何度も角度を変えて交わされる口付けに頭が溶けてしまいそう……。


「っ、は……はは、イイ顔……んっ……」


 吐息も熱い、押さえられている手も重ねられる唇も、全部全部が熱くてぼんやりとしてきてしまう。アーロンじゃない人間のはずなのに、こんなこと……良いのかしら……。良くないことだって分かっているのに、相手は止めてくれないし、どんどん積極的になって口付けの時間も長くなる。苦しくて思い切り酸素を求めるのにそれさえも奪われてしまうかのような深く激しい口付けに、くぐもった声しか出なくて苦しかった。


「……ぁ、ぅ……っ、はぁはぁ……も、やめて……」


「はあ?……却下。はは、イイ気分だ……お前、強気かと思えば大人しかったり……不思議な人間だな?」


 不意に首筋に顔を埋められると、ガブッと思い切り歯を立てられて噛まれたのか物凄い痛みが走って小さく悲鳴を上げてしまった。それでも、場所を変えて何度も噛み付いてくる痛みにじわじわと涙が浮かんで来る。


「ぃ、た……っ……」


「どうせ、治るんだ。……そうなんだろう?ほら……噛み跡がみるみるうちに消えていく……」


 噛んだ後をじっと眺めてから噛み跡さえも消えた場所に、ぬるりと舌を這わせて舐め上げてくるからぞくぞく、と背筋を震わせてしまった。


「ぁ、っ……それ、……や、だ……っ……」


「気持ち良い、の間違いだろ。……また、噛まれたいか?治っても痛みはあるんだろう?気持ち良いと素直に言えば噛むことは止めてやる。ほら、……どうする?」


 なんなんだ、この超ドSは。

 しかも見た目、声そのものはアーロンそのもの。だが、性格なんてモノは全然違う。アーロンならこんなこと絶対にしないようなことも無理にしてくるからハラハラドキドキが止まらないのだ。


「……っ……ぃ、です……」


「聞こえない。もっとはっきり言え」


「……気持ち、良い……です……」


「あぁ、分かった。噛むことは、止めてやる……っ……」


 一瞬眉を顰めた様子だったが、再び首筋に顔を埋めてくるとチュッと口付けては、ぬるっと熱い舌を這わせてビクビクする私の反応を楽しんでいるようだった。そして不意に顔を上げるとじっと見つめられ、深い口付けではなく、優しく触れるだけの口付けだけをすると私から離れてベッドにうつ伏せにぶっ倒れてしまった。


「……お、終わった……っ……もう、本当に何なのよ……っ」


 さすがにうつ伏せの状態は寝苦しいだろうと思い、仰向け状態にさせてあげると凄い汗を掻いていることに気が付く。そりゃあ熱があるのにふらふら歩いたり、いろいろ……していれば熱も上がるわよね……。

 しばらくはアーロンの看病から離れられないのかもしれない……というか、あの人格って何なのかしら。凄いドSだし……いろいろ、シてくることも激しい……。ドMとしては嬉しいけれど、アーロンの体を好き勝手にされて、アーロンの症状が良くなっていない原因だとすれば許せないんだけれど!

 超ドS様、登場!?さすがの主人公ちゃんも痛いのは嫌、だよね……(汗)


 良ければ『ブックマーク』や『評価』などをしていただけると嬉しいです!もちろん全ての読者様には愛と感謝をお届けしていきますよ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ