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七十五話 ラウル『ママ』は厳しく言います!

 エマさんから貰った薬も飲んでくれたし、アーロンと久しぶりにまともな会話をしたことで安心したのか、私も彼の隣に寄り添いながらつい寝てしまったみたい。

「!……今、何時……っ!?」


 ちょっとだけの仮眠をとるつもりだったのだけれど、ここ数日、まともに寝ていなかったせいだろうか。つい、熟睡を……してしまったらしい。慌てて体を起こして時間を確認すると夜は当たり前のように過ぎていて、朝……十時になってしまっていた。

 さすがに寝過ぎてしまった!!

 すぐさま確認したことは、隣に寝ていたアーロンの存在。また、ふらふらと起き出して何処かにでも行ってしまったら……と思うとハラハラしてしまっていたから私も休むことが出来なかったのだけれど、今もちゃんと隣で眠ってくれている。ただ、まだまだ熱はあるようで顔は赤いし、寝苦しそうにしている。

 着替えをさせるべき?

 体を拭いてあげるべき?

 でも、そんなことを繰り返していると、アーロンを起こしてしまうことになってしまう。体はきっと安眠を求めているはずだから、あまり起こしたくは無い。それに、いざ着替えさせよう・体を拭こうと思っても私一人ではとても出来ないから今は我慢してもらうしかないかしら。


 ついつい小さく出てしまう欠伸を何度か繰り返しながらアーロンの額からいつの間にか落ちてしまったらしいタオルを手に取ると冷たい水で絞り直して再びアーロンの額に乗せてあげた。


「ぅっ……ぁ……っ……」


「……アーロン?」


 悪夢にでも魘されているのだろうか、それとも体内にくすぶっている魔力が悪影響を与えているのか、急に苦しそうに呻き声をもらしながら自分の胸元をぎゅっと握っている様子に『え、なに……』と様子を伺いながら優しくそっと彼の頭を撫でていた。


「アーロン、しっかり……どうか、魔力とやらに負けないでくださいね……」


 魔力とは縁が無いみたい私には体内で魔力が暴走状態にあるのってどういう感じになるのか分からないのだけれど、たぶん現代的に考えれば高熱が出るインフルエンザとかに似たモノなのではないだろうか。酷いと意識が朦朧とすることもあるし、時には熱があるにも関わらず信じられない行動を起こすことがあるとされている……って感じだと思えばそう、怖がることもないのかな?ただ、全然下がる様子の無い熱には未だに四苦八苦しているのだけれど……。とにかくアーロンの持つ体力が保てるように出来ることはしないと。


 近くにいることしか出来ないけれど……それでも、せめて何か出来れば……と思って苦しそうにぎゅっとシーツを握りしめていたアーロンの手を取って両手で包み込んであげる。一日でも早く良くなりますように、と祈って。


 ちょくちょく顔を出してくれるようになったラウルからは、ずっと私がアーロンのそばにいるものだから『レンも食べるモノはきちんと食べて、寝るときにはきちんと寝てください!』と何度も注意を受けてしまうのだけれど、近くで苦しんでいる人がいるのよ?それなのに、私ばっかりそんな普通に過ごすことなんて出来ないわよ……。

 だが、ラウルから言わせると私の顔色が相当悪いようだと言われてしまった。た、たまには寝ているわよ?アーロンと。……でも、二日に一回ぐらいの頻度で寝ているぐらいで、たぶん睡眠が不足してきているのかもしれない。たまに、頭がくらくらする気分にもなるし、ちょっとした際に立ち上がると軽い貧血のような状態になることも増えてきてしまった。そろそろ私も休んだ方が良いのかしら……でも、アーロンが心配なのよ。


「ふぁ……っと、いけないいけない……」


 大きな欠伸をしかけるものの、軽くブンブンと頭を振って気持ちを切り替えようとする。そして眠気が襲い掛かってくるようになれば冷たい水で何度も顔を洗って気分をさっぱりさせる、といった行為も増えてきた気がする。


 最初にアーロンの体調が悪くなってからどれぐらい経っただろうか……最初は、カレンダーなんていちいち気にしている余裕も無かったから今何日だろう?って感覚もおかしくなってきているかもしれない。よく、徹夜とかを繰り返していると今が何曜日か?って分からなくなってくることがあるでしょう?それと同じ感じがまさに私に起きてきている。

 ラウルはフランの様子を見つつ、こちらの様子も見にやってきてくれる頻度が増えたので、これ幸いとばかりにアーロンの着替えやらタオルで汗を掻いてしまったアーロンの体を拭く手伝いをしてもらうことをお願いしている。なかなか一人では苦戦する作業でもラウルの手があれば簡単におこなうことが出来るからラウルの存在はとても助かっているわ!


「……今日も、ありがとう。ラウル、これからフランのお見舞いかしら?」


「はい。それが終わったら手が空きますので、再びこちらに来た方がよろしいでしょうか?と言っても殿下の様子見ではありませんよ。レンが、そろそろ危なそうなので……」


「わ、私?」


「なんだかレンの方がぶっ倒れそうなので……それが、怖くて……」


 ラウルは、からかいとか冗談とかで言っているのではなくてこれでもか!というほどに真面目に言うものだから私の顔色はかなりヤバいのかもしれない。


「……えっと……今日の午後は、少し休眠をとりますから……」


「少し?」


「……ゆ、ゆっくり、させていただくつもりですから……」


「はい!殿下は、少しぐらい放って置いても死にはしませんから安心してください。そもそも殺そうとしても死なないぐらいに頑丈な人なのですから」


 う~ん、そうは言っても、その頑丈な人が何日も続く高熱の中で寝過ごしてばかりいるのだけれど……。

 なんだかラウルが世話焼きのお母さんみたいに見えてきてしまったものだから、私も口に出す言葉には気を付けていかなければならないかもしれない……。

 いつも、丁寧に頭を下げながらアーロンの部屋から出て行くラウルを見送ると『本当にお母さんみたいね……』と思わず苦笑いを浮かべながらアーロンの寝ているベッドのかたわらに座って寝顔を覗き込む。まあ、今日も今日とて寝てばかりいて、たまーに自然に目を覚ましてくれるときには無理やりに薬を飲んでもらって過ごしている。

 ぺた……っと、アーロンの赤い頬に手を添えるものの、まだまだ熱さが伝わってくるのでアーロンの体内で一体何が起きているのか……不思議に思ってしまう。たまにラウルから話を聞くのだけれど王様や王妃様は数日経った頃には、すっかり何とも無かったかのように今では過ごしているらしい。となると、あとはフランとアーロンね……。


 もう……許嫁の私をこんなにも放っておくなんて信じられないんだから……元気になったらとことん文句でも愚痴でも飛ばしてあげることにしようかしら。それとも構ってもらえなかった分、めちゃくちゃに構ってもらいまくる、とか?あ、スキンシップ的な意味よ?もちろん。


 病人食として用意してもらうスープもほとんど口を付けてもらわないので用意をするのも大変だからと途中から止めてしまったんだっけ。果物類は、相変わらず置かれているのだけれど。こっちは、私の間食みたいに食べさせてもらっているようなものだからアーロンはほとんど何も口にしていない状態だ。コレ、熱が下がったとしても普通の生活に戻ることって出来るのかしら?だって、もう何日まともな食事をしていないんだろう……。口に出来ているのは薬と水分だけ。栄養が足りないわよね……でも、食べる時間も億劫なのか目を覚ましたとしてもすぐに寝てしまう。たまに寝苦しそうにしているのは、熱のせいか……それとも、魔力とやらのせいなのか……。

 魔法が存在する世界には最初はびっくりして憧れたものだったけれど、こんな病があるだなんて……便利なモノだから、時にはその力を使う人間に反動でも起こしているのかしら?

 さて、そろそろ主人公ちゃんにも休んでもらわないとね!ぶっ倒れちゃう!ぶっ倒れちゃう!!(汗)


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