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七十話 魔力所持者の病

 軽いスキンシップから気付いたアーロンの熱。

 風邪……でも、引いたのかしら?でも、いつから……?

「……コレは、普通の風邪とは少し違うかもしれませんなぁ……」


「と、言うと……?」


 お城の中を駆け回り、やっとのことで見つけたお医者様。救護室、医務室のようなモノがちゃんとあってそこで日頃、鍛錬で傷を負っている騎士さんたちの怪我の手当などをおこなっていることが毎日の仕事のようだった。そんなお医者さんをアーロンの部屋にわざわざ来てもらうのは、申し訳ない気持ちにもなってしまったのだけれど、そんなに体調を崩すってことをしなさそうなアーロンがかなりの熱があるがありそうだと伝えればさすがに王子様を優先してくれたらしく私とともにアーロンの部屋へ向かってくれた。

 ベッドに寝て、ぐったりとしているアーロンを診察してくれるもののお医者さんは、不思議そうに首を傾げ、あちこちアーロンの体を触診していく。首元を触ったり、手首などに触れたりしていきながら『うう~ん』と唸っているらしい。

 ……風邪、の類ではないのだろうか?


「熱が出ていますので、風邪と見間違うのかもしれませんが……コレは、ちょっと変わった病でして。レン様は確か魔力の類は使うことは出来ないんでしたかな?」


「魔力……はい、今の所それらしいモノを使えたことは無かったと思いますが……」


「不思議なことに、魔力を持つ者が罹ると言われている病というものが存在しているのですが、……殿下の今の症状は、まさにソレですな」


「魔力を持つ人が罹る病、ですか?」


 う~ん?どういうことだろう。

 体内の魔力とかが何かしらに反応してしまったとか?


 アーロンの休んでいる(かろうじて目は開いているようで起きてはいるらしいのだけれど、こちらからの言葉にすぐに反応してくれないので無理に話しかけるのは止めておいた)ベッドを整えてソファーに移動したお医者様から具体的な話を伺うことにした。


「魔力は万能と考えられているのですが、時として魔力の力は所持している者たちに牙を剥くこともあるとされているのですよ。今回の殿下が、そうですな。魔力が強い者であればあるほど、その症状は重く、長続きされていくと聞きます。ただ、誰もが罹るものではありません。魔力を持たない私……レン様も魔力は無いとのことですから殿下の近くにいても何も問題はありません。ただ、城内には殿下の他にも魔力を持たれている方はおりますからきっと今頃体調の変化を感じておられるはず」


「……えーっと、お薬とかは……」


「私の元にはそれらしいモノはありませんなぁ……こればかりは自然回復を待つしかありません。薬に詳しいモノならば何か知っているかもしれませんが……心当たりはございますかな?」


「薬……あ、一人だけ知人がいます!」


「では、一度話を伺ってみるとよろしいでしょうねぇ。……まあ、殿下は働き者でしたからコレを機会にしばらく休まれるのがよろしいでしょう。熱は出て朦朧とはするでしょうが、しばらくは大人しくさせてあげておいてくださいませ。はは、レン様がいらっしゃるので殿下の看病はお任せしてもよろしいですかな?」


「は、はい!もちろん!」


「城内で魔力を扱う者と言えば、同じく弟君のフラン様……それから王と王妃様辺りでしたかな……では、私はこれで……くれぐれも殿下に仕事などはさせないよう見張っていてくださいませ」


「あ、ありがとうございました……」


 私がいるから、と安心したのかお医者様は小さく笑みを浮かべながらアーロンの部屋から出て行ってしまった。

 魔力を持っている人が罹る病?今まで、そんなモノが存在するだなんて聞いたことが無かった。だいたい、そういうものっていきなり症状が出たりするモノなのかしら?こういうのって具合が悪い人がいて、そこから貰ったり、うつったりするんじゃないのかしら?お城の中で、魔力所持者……フランは、城下町の宿までは一緒にいたけれど、そこからは一緒に……めちゃくちゃ近くにはいなかったわよね……。

 それでお城に帰ってきて……って、あれ。そう言えば王妃……モニカ様と出くわしたわよね。いろいろ言いたいことを言いまくっていたモニカ様だったけれど、もしかしてあの段階でモニカ様は具合が悪かった!?その近くにアーロンがやって来たんじゃない!……まったく、次から次へと厄介なモノを運んで来てくれるんだから、モニカ様って!


 とにかく薬に詳しい人……城下町にいるエマさんだわ!その人にお話しを……って、夕方もだいぶ過ぎちゃったわね……今から城下町に降りて、エマさんのお店に行ったりしたら迷惑になるかしら……明日にすべきかしらね……。


「……っ……」


「アーロン?」


 恐らく、熱でぐらぐらするんだろう。それでも頭を押さえながらもベッドから上半身を起こしているものだから私は慌ててベッドに駆け寄り、アーロンに横になるように促していく。


「どうか、寝ていてください。……お医者様の話だと、魔力を持っている方が罹る病、だそうです……なので、アーロンはかなりの熱が出ているみたいなのでとにかく寝て過ごしていてください……」


「……魔力所持者が罹る、病……?」


 本当に熱だけ、が出ているだけらしく、今のところ咳などは出ていないみたい。ただ、熱が高いらしく顔はさっき見たよりも赤らんで見えているし、心無しか呼吸も荒い気がする。


「……私は、魔力が無いみたいなので一緒にいても罹る心配は無いみたいです。これでアーロンの看病に専念することが出来ますね」


 熱のせいだろうか、額に張り付いている金髪を退けてあげながらアーロンの額に触れるとやっぱり熱い……というか、どんどん熱くなってきている?

 症状は、とにかく熱が出るって言っていたわよね。だったら、冷やすぐらいしか出来ないんだけれど……氷とか、水で冷やしたタオルとかを用意しないとまずいのかも。


「……これぐらいの熱なら、大したことは……ありませんよ」


「ダメですってば。お医者様が言うには魔力が強い人であればあるほどに熱が高く、症状は長く続くみたいです。そんな状態でふらふら出歩いたら絶対に倒れるので止めてください。……これは、許嫁である私からのお願いですからね!?」


「……はは、そういうときに許嫁という立場を利用するのか、お前は……」


「使えるときには、最大限利用しますよ」


 力無く笑うアーロンは、素の状態になっているものと思われるものの、俺様っぷりは何処へやら……って感じだわ。高熱が出ると頭が揺れる感じがした、かしら?そういうのって目を開けているだけでもツラかったはずよね。

 そっとアーロンの瞼の上に手を翳し『目、閉じてください。というか無理せず寝てください』とつげると素直に目を閉じ、大人しくしてくれたアーロン。


 このまま眠ってくれるのが一番なのだけれど、やっぱり薬とかも欲しいところ。それに、具合が悪いからって何も食べさせないというのも体には悪そうよね。何なら食べられるかしら……ついつい、元いた世界のことを思い出してしまうが、この世界にも病人食のようなモノって作れるのかしら?最悪の場合、ゼリーとかそういう食べ物だけでも食べてもらわないとだけれど。

 ぶっちゃけ、王様や王妃様はどうでも良い。確か、フランも今頃もしかしたら具合を悪くし始めているんじゃないかしら?……誰か、看病してくれる人はいる?ラウルとか気付いてくれているかしら。オリーブは近くにいるかもしれないけれど、さすがに誰か人を呼びに行けるってものでも無さそうだし……って、そうそう水よ、タオルよ!準備しないと!


 こういう時、ちょっとしたお茶の準備が出来る部屋があると便利ね。つまり、水もすぐに用意が出来るし、タオルもすぐに準備することが出来た。水で冷たく濡らしたタオルをアーロンの額に乗せてあげると最初はびっくりしたのか体がビクついていたが、近くにいたのが私だと気付いて安心したらしくまた瞼を閉じて大人しくしていた。


 ……どのぐらい、アーロンはこの状態が続くのかしら……。

 魔力所持者特有の病!!うはー、そりゃまたビックリだ!主人公、不思議な能力は持っているけれど魔力は無くて良かった良かった!!(汗)


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