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六十六話 お店巡り

 本当は全てのお店に顔を出したかったし、どんな売り物があるのか目にしていきたかったのだけれどさすがにそれは難しいみたい。

 でも、現代で言うところの屋台?みたいなモノもあって広場は楽しいわね!

 広場を一部を空け、それ以外はぐるりと円を描くように、いろいろな屋台が並んでいた。私はドレスを踏んで転んでしまわないようにしっかりと裾を持ち上げながら立ち並ぶ屋台にルンルンと気分を上げていたのだけれどいつの間にか隣には当たり前のようにアーロンが歩いていた。後方……だいぶ離れた所からはフランやラウルたちもいて、ここぞとばかりにお店を見て回っているみたい。


「そんなに、はしゃいでいると転びますよ?」


「わ、私だって気を付けていますから!」


「ふっ、どうだか?」


 あ、今、鼻で笑いましたよ。ちょっとそこのお姉さん!アーロンが、鼻で笑いましたよ!見ませんでしたか!?王子様スマイルとは全く違う意地悪そうな笑みを浮かべましたよ!壇上で見せた王子様スマイルは何処へやら……信じられない!と少し足を早めるとヒールの高い靴がドレスの裾を踏んでしまったらしく『お、とと!?』と躓きかけるものの咄嗟に私のお腹に手を回して支えてくれて私が地面と仲良くぶつからなくさせてくれたのはもちろんアーロンだった。


「……す、すみません……」


「ほら。言った通りだろ?……もっとゆっくり歩いてくださいね?」


 そっと耳元で低く面白がるように呟いたアーロンだったが、すぐに王子様スマイルを浮かべると丁寧な王子様口調で話しかけてきた。ぐっ……俺様と王子様とのギャップが凄いじゃないっっっ!なんでそんなに変わり身が早いのよ!?

 体勢を整えた私は、これ以上醜態をさらすわけにはいかない!と注意しつつ、どんなお店があるのかな?とひょいひょいっと覗いていった。

 小物……っぽいお店では、日常でも使えそうな雑貨品。ちょっとした置物とか、飾れるモノ。アンティークって言えば良いのかしら。ちょっと物寂しい部屋に置いたら一気に華やぐような代物が並んでいて、見ているだけでもとても楽しめるお店だった。

 妙に良い匂いがするお店では、これは食べ物……よね?でも、何を焼いているのか分からない。


「アーロン、アーロン。これは何を焼いているのですか?」


「……これは、肉類ですね……何の肉かは、ちょっと私も分からないのですが……」


「!おやおや、これはこれは、本日の主役のお二人さん。コレを見るのは初めてかい?こちらは様々なスパイスを付けたシキドリになるよ」


「シキドリ?」


 なんだろう、聞いたこと無いわね。アーロンなら分かるかしら?とちらっと顔を見上げるとアーロンは焼かれているシキドリとやらを見て、目を丸くしていた。へ?それ、どんな反応ですか。


「アーロン、シキドリってどういう……?」


「シキドリというのは、個体の名前ってわけではないんですよ。季節ごとにあちこちから帝国の近くに飛んで来る鳥がいるのですが、それらを総称してシキドリと呼んでいるんです。しかし、最近はあまり見かけなくなったかと思っていたんですが……」


 あぁ、季節が変わるとこんな鳥がやってきて、また季節が変わるとやってくる鳥の種類が変わるって感じかしら。


「そうだねえ。鳥そのものが一時期見掛けなくなったんだけれど、最近はまた何処からともなくやって来るようになったんだよ」


「そうだったんですか。鳥は栄養もありますから食事をするには良いですね」


 へぇ。鳥そのものがいなかったってこと?天候とか、気温とか?そういうものが鳥たちに合わなかったのかしら。でも、こうしてまたやって来たってことはその問題となっていたってことも無くなったのかしら?良いことじゃない。


 次に目に入ったのは、服。服と言ってもドレスとか正装系のモノではなくて、どっちかと言うと古着をリサイクルしています!って感じのお店だった。使わなくなった服をまた新たな人に使ってもらうのは大切なことよ。無駄にならないし、服だって長く着てもらって嬉しいでしょうね。


 次は……うっ……この鼻に付く匂いは……え、もしかして薬!?と思っていたけれど店主はエマさんだった。


「あ、いらっしゃ~い、お二人さん!あはは、お嬢さん凄い顔になっちゃっているよぉ?この匂いは慣れない人にとってはちょーっと刺激が強いかもしれないねぇ?」


「えっと……この匂いのモノって、何に使うんですか?」


 さすがに鼻を摘まむわけにはいかず、ポケットからハンカチを取り出して鼻を押さえながらエマさんに話し掛ける。隣にいるアーロンは特に苦に感じているわけではなさそうで、平然としていた。


「この匂いを放つシロモノがいろいろな薬の材料になっていくんだよ。あ、今のお二人さんにならオススメしたい薬があるんだけれど聞いていくかぃ?」


「?何でしょう?」


「ふっふっふ……男にも女にも服用が出来る、夜の生活に大活躍の薬だよぉ~!」


「!っげほ、ごほっ……え、エマさん!?」


「なんだぃ、その反応は?許嫁になったんだからそういう事をしていたっておかしくはないだろぉ?おやおや~?もしかして、お二人には不必要なモノだったかなぁ~?」


 ニマニマとからかうように笑みを浮かべてくるエマさん。いやいや、そんなモノいりませんってば!だいたいそんな薬を平然と売るエマさんの方がどうかしているんじゃ!?


「ふむ。……少しばかり興味はある」


「はぁ!?」


「あはは!王子様は興味津々じゃないかぁ~。お嬢さんもその気になってあげないとねぇ?」


 ただ、からかっていたのは最初だけでエマさんが取り扱う……調合する薬にはいろいろな効能があるものがたくさんあるらしい。アーロンが毎晩飲んでいる薬もエマさんが用意したものらしいの。気分を安定させるモノや、人によっては様々な理由があって体の成長や発達を止めてしまうという薬を欲しがる時もあるらしく、体に直接影響を及ぼすモノ。逆に体の成長を促すモノなんかもあるようだ。あ、だったらここにあるかもしれない!


「エマさん、エマさん!私、もうちょっと女性としての魅力を上げたいと考えているんですが、そういう感じの薬ってあったりしますか?」


「!ぶはっ、げほげほ!」


 今度、吹き出して咳き込んでしまったのはアーロンだった。まるで、さっきの私みたいに反応を露わにしてくれるので見ている側としては大変面白い。一応、王子様だけれど、こんな反応もするのね。


「魅力?お嬢さんの?」


「はい!こう、もうちょっと体型をグラマラスにしたいというか、出るところは出て、引っ込むところはきちんと引っ込むような……もががっ!?」


 急に口がアーロンの手によって覆われてしまって言葉にならない声が出てしまった。もうちょっとで最後まで説明出来そうだったのに、エマさんなんて目を丸くしているじゃない。


「え、エマ……今のレンの発言は聞かなかったことにしておいてください……」


「……は、はは……ぷっ、あはは!お、お嬢さん、それ本気かぃ!?あはは!こりゃあアーロンも大変だねぇ!あはは!」


 かなり気まずそうに視線を背けているアーロンに対して、エマさんは途端に噴き出して笑い始めてしまった。そんなエマさんの笑い声に周りも『なんだなんだ?』と興味を持っていくもののエマさんは『大変だねぇ』としか言ってくれない。えぇー、エマさんならそういう感じの薬も調合出来そうなのに……。

 私の口を覆ったまま(余計なことを言わせないようにしているのかしら?)ずるずると屋台が並ぶ場所からどんどん離れて行くアーロンと私。お祭りムードも少しずつだが落ち着いてきて、なかには店の片付けをしているところもあるみたい。


「……っもう!なんなんですか!?」


「いや、お前だろう……エマに、なんてことを言うつもりだったんだか……」


「え?だから魅力を上げるための……」


「……アホか、お前は」


 んなっ!?許嫁宣言したばかりの人に向かってアホは無いでしょう!アホは!ちょっと人の数も減ってきているから王子様アーロンは引っ込んでしまったようで、素の喋り方になっているし!

 だいたいアーロンは女心ってモノが分からないんですよ。女性っていうのはちょっとでも良いから素敵になりたいモノなんです。体型だって憧れの体型っていうものがあるんですからなれるものならグラマラスボディーになってみたいじゃないですか。そして、アーロンをぎゃふんと言わせてみたい……っていうのもありますけれどね。


「……あまり、エマに余計な事を言って薬なんて飲んだりするなよ?」


「アーロンは夜に飲んでいるじゃないですか」


「アレは単なる睡眠薬だと言っているだろうが」


 『やれやれ』と溜め息を吐きつつ、そろそろ帰るぞ、と私の手を取って歩き出す。あ、帰りは馬車じゃないのかな?と思っていたのだけれどやっぱり足が向くのは馬車の元へ。先に私を馬車に乗ったことを確認してからようやくアーロンも先を走る馬車へと乗り込んだのだった。


 ……今度、城下町に来たらエマさんに相談してみようっと。

 主人公は諦めません!いやぁ、それにしても面白い。というか、エマさんがなかなかに良いキャラクターをしてくれているので、いろいろな反応を示してくれる主人公たちが楽しい楽しい!


 良ければ『ブックマーク』や『評価』などをしていただけると嬉しいです!もちろん全ての読者様には愛と感謝をお届けしていきますよ!

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