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六十四話 超ドMの私が言いたいこと

 私も……私も、何か言わないと……。

 壇上に上がるまでは、いろいろ考えていたのよ?

 でも、アーロンの隣に立って多くの市民たちを目の前にしたら……頭が真っ白になってしまった。

「……皆さん、初めまして!」


 まずは、ガバッと勢い良く頭を下げた。

 緊張することなんて無い、今考えていることを口に出すだけ、それだけで良いのよ……。そうは思っていてもなかなか頭が上がらない。重石でも頭に乗せられてしまったかのように頭が重く感じてしまってなかなか上がらないのよ。ど、どうしよう……私、このまま何も出来ないまま引っ込んじゃうの!?そんなのは嫌よ!私だって少しは、きちんとしたところを見せないとアーロンが恥をかいちゃうわ!


『……あれ、どうしたのかしら?』

『もしかして緊張しているのかな?』

『王子様の隣だからって緊張しているのよ、きっと!』

『アーロン様の隣に立てるだけでも素晴らしいことだもの!緊張するわよ~!』


 ざわざわするなかには、私へ向けた笑いのようなものも聞こえてくる。このまま笑い者にされたままで良いの!?違うわ……私は、超ドMなのよ……笑いたければ、もっと高笑いしてくれなきゃ、私は満足しないじゃない!!


 私が超ドMだってことを思い出した途端に、頭は軽くなった。そして自然と頭を上げ、民衆たちの顔を一人、また一人と眺めるまでの余裕さえ生まれてきてしまった。そうよ、こんなにたくさんの人たちに笑われるのなら、もっと私のこと嘲笑いなさいよ!私は、そういうのが好きなのだから!

 思わず、ふふっと笑みを浮かべてしまった私。アーロンも横目で私が笑みを浮かべはじめたから大丈夫か?と心配しているのかもしれない。でも、私これぐらいの噂話だとか陰口なんて全然平気なのよ。


『あなたはアーロンに相応しくない!』えぇ、それぐらい言ってもらわなきゃ。

『王子様の隣に、立てるの!?』ふふっ、そうよ。もっとそんなふうにイジめて、キツいお言葉を向けなさいよ!


「私は、皆さんのことを知りません」


 突然、口を開いたかと思えばそんな言葉を出した許嫁に民衆はざわっとするものの私は言葉を続けていった。


「当然、皆さんも私のことを知らないでしょう。ですから、お互いにこれから知っていくところから始めてみませんか?私は、こんな見た目をしています。でも、私は『豊穣の女神』伝説というものが本当に存在しているのか分かりません。でも、私は誰もが笑って、平和に暮らせるように……まずはアーロンが笑って暮らせる生活からはじめていきたいと考えています!帝国にもいろいろな身分の方、立場の方がいますよね。苦しいことがあればツラいことがあれば、どうぞそれを私にぶつけてください!私は、そうそう弱い人間ではありませんから皆さんの不平不満を受け止める自信があります。アーロンの許嫁に相応しくない……と考えている方もいるかもしれませんが、それを一番に考えているのは私自身です。王子様の隣に立つなんて私には未だに信じられないことです。でも帝国のお話を聞いて、今の政は誰がおこなっているか……皆さんは考えたことがあるでしょうか?それは、今の王や王妃様ではありません。アーロンが一人で担っています。私が気に食わない……そう思われても仕方がありません。ですが、どうかアーロンの力になってあげてください!アーロンは帝国のことをとても愛している人間です!私も少しずつですが帝国のことを知り、力になりたいと考えています!どうか……アーロンに、皆さんの力を貸してください!!」


 またもやガバッと勢い良く頭を下げた私。意外にも私が口を開き出すとざわついていた民衆たちは静かになって、私の言葉に耳を傾けてくれていたみたい。……どれぐらい、頭を下げていただろうか。気が付いたら壇上の近い所にいた人たちから拍手が起こり、それがだんだんと遠くにいる人たちにまで拍手が起こっていった。

 私としては、いろいろと言いたいことをとにかくめちゃくちゃに言ってしまった感がある。これじゃあ王子様の許嫁だなんて恥をかかされるかもしれない。でも、ここで言いたいことを言わないままで終わっちゃったらきっと後悔する。だからとにかくアーロンの味方になってくれるように、アーロンのためを思って言葉を吐き出した。


『いいぞーっ!!銀髪の姉さん!それぐらいの意気込みがある方が頼もしいぜ!』

『え、アーロン様が政をしていたの!?王様たちは一体何をしているのよ、この場にもいないし……』

『銀髪のお姉ちゃんが未来のお姫様?すっごーい!恰好良いね!』


 近場から聞こえるのは祝福してくれているであろう人たちの言葉。でも、ちょっと離れた所にいる人たちは違うみたい。そうよね、帝国には貧困で苦しんでいる人たちだっているんだもの。


『……チッ、国のため国のためって言うけれどそれって結局は金持ち、普通に生活が出来るヤツのためだろう?』

『コッチは、その日暮らしがやっとなんだぞ!』

『そんな許嫁宣言なんてする暇があったらコッチに金をくれーっ!』


 貧困に苦しんでいる人たちの声は次第に大きくなっていき、壇上の近くで拍手をしていた人たちもだんだん大人しくなってきてしまったらしく、またザワザワし始めてしまった。


「帝国には!帝国にも、貧困で苦しんでいる人たちがいるのを知りました!なので、私は城下町にて定期的に炊き出しを行いたいと考えています!これは、今、私が考えたことです!アーロンにも話していません!お金なんていりません!食べるモノを定期的に配給していくことになります!ですから、まずはお腹を満たすところから始めていきませんか!?もちろん見知らぬ私のような人間が用意する食べ物を意地を張って食べなくても構いません!食べる・食べないのは人の自由ですから!でも、人が当たり前のように健康に過ごすのはとっても難しいことなんです!世の中には病気で早くに亡くなってしまう人もいます。夜盗に襲われて村が無くなり住む場所を無くす人たちもいます!どうか帝国に住んでいるのであれば、一人でも健康に過ごしてもらいたいと考えています!」


 上手く説明出来ただろうか、炊き出しは本当に今考えたこと。もちろん貧困に苦しんでいる人たちのことを考えて、これから実践していくと口に出した。お手伝いは?材料は?手伝ってくれる人がいなければ私一人でもやるつもりよ。それに材料なら、エマさんのお店に買いに行けば良いし、お城の中にだって手つかずのモノがたくさんあるでしょう?それを市民たちのために使わないで、いつ使うのよ?


「……レン……その、炊き出しというのは……」


 アーロンもいきなりなんだ?と目を丸くしている。


「私、この帝国で何が出来るんだろうってずっと考えていたんです。クレイン国では国民の皆さんと一緒になって畑作業を手伝っていました。そこでは皆さん揃って笑顔だったんです……暮らしは、そこまで裕福ではありませんでしたけれど。だったら帝国なら、私に何が出来るかな?って。だから私もちょこちょこ城下町に外出させてください。……まあ、これは私からの我が儘になっちゃうので、後からアーロンの我が儘も……少しばかりOKってことにしちゃうのは、どうでしょう?」


「我が儘だなんて。レンは民たちのことを考えてくれているのですよね?我が儘だなんて思いませんよ。炊き出しの時には私も呼んでください。お手伝いさせてもらいますから」


 ニコリ、とアーロンの王子様スマイルが向けられたことで、それを視界に入れてしまった一部の市民たちからは悲鳴とともに意識を失って倒れてしまう人もいたらしい。えぇ、そこまで!?そこまでの威力があるの!?私は、ラウルにも手伝ってもらうために倒れた人たちの元へ壇上から飛び降りると『大丈夫ですか、しっかり!』と必死になって声を掛けていった。

 許嫁宣言は、一応終わった……のだけれど、これはちょっとしたハプニング続出で、しばらくは落ち着かないかもしれないなあ。

 帝国では、何も出来ないのか……することは無いのか、と考えていたときに城下町にてフランがスイーツ作りのお手伝いをしているのを思い出し、やっぱり民のために出来ることを!そしてみんなが平和に安心して暮らせるために『炊き出し』と思いつきました。が、しばらくは倒れてしまった人の看病をしなければなりませんね(汗)


 良ければ『ブックマーク』や『評価』などをしていただけると嬉しいです!もちろん全ての読者様には愛と感謝をお届けしていきますよ!

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