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五十九話 おモテな人間は大変そうですね

 さて、帝国の皆さんに私とアーロンが許嫁になったってことを公表するのは良いとして……。

 どうやってお知らせしていくのかしら?

 まさかチラシみたいなものでも作って配り歩くなんて……するわけないわよね!?

 フランからのお話もあって、いよいよ私とアーロンの関係をもっと多くの人たちにお知らせしていくことに決めた。決めたのは良いんだけれど……帝国は、思っている以上に広い。そこで、一人でも多くの国民たちに『第一王子様、ついに許嫁が現れた!』というお知らせをどうやって広めていくか……。

 

 一瞬だけれど、昔、駅前に立ちながらポケットティッシュ付きでお店のチラシを一緒に配っていたときを思い出してしまった。あの時は、とにかく愛想よくスマイルスマイル!を欠かさずに道行く人たちに声を掛けながらポケットティッシュを差し出していくと意外にもポケットティッシュ(お店の広告チラシ付き)を受け取ってくれる人は多かったので、あっという間にハケた記憶がある。他の誰よりもそういう配りモノが得意だった私は、自分の持ち分が無くなると他の従業員たちの分も手にして、配り歩いていた。初めて体験する人たちは、こういう作業を苦手としていることが多いのだけれど、まったく面識の無い人にいちいち緊張するなんてバカらしくならない?私はそういう他人の目とかをあまり気にするタイプでも無かったので、ガンドコガンドコ配りまくっていた。おかげで一日掛かると思っていたポケットティッシュを半日掛かるか掛からないかぐらいの時間で配り終えちゃったわよ。立ち作業っていうところは大変だったのだけれど、意外とポケットティッシュが付いているだけで素直に受け取ってくれる人たちって多かったのよね~。今は、単にチラシだけを配っているお店関係の人も多いのだけれど、さすがに興味の無いお店のチラシなんて見向きにもならないわ。やっぱりポケットティッシュ様様ね!


「ふぅ、ポケットティッシュ作戦も良いと思うのだけれど、ここにはそれらしいモノが存在しないみたいだし……」


「……ポケットティッシュ作戦?なんだ、それは」


 あ。

 し、しまった!つい!

 お店のオープンに合わせてどれだけの人に興味を持ってもらえるかという方法の一つとしてポケットティッシュ付きのチラシを配っていた時代を思い返していたら、ついつい口に出ちゃっていた。しかも、同じ部屋にいたアーロンの耳にもバッチリ届いてしまっていたらしい。


「え、えーっと……ち、チラシを配ってアピールするのはどうかなーって思っていたところだったんですよ。あはは……」


「チラシ?許嫁という関係を知らせるためにチラシなんかを用意するのか?」


 うぅ……さすがに、無理があったのかもしれないわね。えーっと、えーっと……。


「ちょ、ちょっとしたおまけと一緒に広告みたいなモノを付けて配るんですよ。城下町で!そうしたら、より多くの人たちの目には入るんではないでしょうか!」


「城下町って……俺も行くのか?レンも?」


 そ、そうだったわ……。知らせにいくのは私たちの関係。だったら、そもそも配りモノをするんじゃなくて、直接城下町に行ってちょっとした広場にて言った方が断然早いじゃない。


「あー、えっと……あ!エマさんに頼んでみるのはどうでしょうか!エマさんってお店もやっているし、多くのお客さんとも交流があるんですよね!でしたら、噂好きな人からすればエマさんから聞いて、その情報があっちこっちに回っていくんじゃないでしょうか!」


「あぁ。エマには鳥を飛ばして既に知らせてある」


「ええ!?」


 い、いつの間に……というか、早くない!?いつ、鳥なんて飛ばしたのかしら。全然気が付かなかったわ。

 聞けば、フランの言葉を聞いてまずエマさんに手紙……鳥を使った手紙を飛ばしたらしい。私があれこれと考えているうちに、ささっと準備をして行動してしまうなんて……アーロンってこういうところは行動が早いのよね。もちろん仕事も早いけれど……。


「……で?」


「へ?」


「さっき言いかけていただろう?結局何だったんだ?」


「えーっと……でも、そもそも許嫁ですよね……?そんなに国民の皆さんから興味を引けるものなのでしょうか?」


「俺は、一応王子なんだが……」


「知っていますよ!それは」


 王子だからって、そんなに気になるものなのかしら。国民の偉い人のそういう女性関係って言うの?将来のお相手はどんな人なのだろうか?って感じで興味を持つ感じかしら。でも、許嫁よ?まだ、結婚とかってなら分かるけれど、許嫁って……も、もし途中で愛想を付かれて許嫁という関係を止めるとかってなっちゃったら!?それも国民に伝わっちゃうってことよね!?


「社交界などに呼ばれても好みではない女性に囲まれまくっていた俺が、やっと許嫁と呼べる存在が出来たんだぞ?きっと、社交界は荒れるだろうなぁ?俺に振り向いてもらえなかった女性たちからの嫉妬やらがレンに向くかも、だな。ふふっ、女の嫉妬は怖いと言うがレンには手出しはさせないから安心しろ」


 あー、アーロンがとってもモテていたことは理解しています。王子様スマイルで、何人もの女性を落としてきたのでしょう?はいはい、分かっていますって。でも、そんなアーロンに特別な人がいなかったなんてちょっと信じられないのよね。ハッ!ま、まさか大人のお付き合いというヤツをしていた女性がいたとかかしら!?


「アーロンって、その……ど、どれぐらいのお付き合いをされてきたのですか?」


「なんだ、気になるか?」


「モテまくっているというのは予想がつきますが……」


「へぇ?俺の許嫁様は過去の女性付き合いに嫉妬しているのか、それとも単に気にしているだけか……」


 口端を上げてニヤリとした意地悪な笑みを浮かべているときのアーロンは危険よ!絶対に私のことをからかって心の中で笑っているに違いないわ!


「俺だって年頃の男だからなあ。付き合いが全く無いと言ったら嘘になるんだが?」


 き、気になる……!人の恋愛沙汰とかにどうしても興味を持ってしまうのは私が女だからかしら。だって誰と誰が付き合い出したとか、誰が好きなのかって話をして盛り上がっちゃうのは女子なら当たり前のことでしょう?


「えっと、数人ぐらい……でしょうか?」


「そこは、レンのご想像にお任せする」


 なっ、意地悪だ!!

 きっと逆の立場だったりしたら、アーロンはめちゃくちゃ詰め寄ってでも聞いてくるのかもしれないのに、こういうときばっかりは秘密にしようとするんだから!


「そ、そうですよね。お互いに年頃ですし、良い人の一人や二人ぐらいいても別に変ではないですし……」


 これでこの話題は終わらせるつもり……だったのだけれど、急にボキッと不吉な音が聞こえた気がした。その音は、アーロンが手にしているペンが見事なまでに折れた音だったのだけれど(え、ペンよ!?一体どれだけの握力で折ったのよ!?)彼は変わらずに笑顔を浮かべている。え、ちょ、なんか怖いんですけれど……。


「レンは?一体、何人ぐらいの男との付き合いがあるんだ?」


 ほーら!私にはめちゃくちゃ食いついて聞いてくるじゃない!


「アーロンはさっき私の想像にお任せするって言ったじゃないですか。アーロンもご自由にご想像してみてください」


「あ?」


 ちょ、それ不良の反応だから!チンピラか何かですか、あなたは!

 顔を引きつらせた私は、いつでも逃げ出せるように部屋のドアへのルートを確認!アーロンのデスクは部屋の奥にあるから逃げ出そうと思えば確実に私の方が早い!大丈夫、逃げ切れるわ!


「な、なんですか……せっかくの整った顔が台無しになっちゃいますよ」


「……言え」


「は?」


「今まで何人の男がいたか、言え」


 背筋が震えるような、お腹の底にズシンと響くような滅多に聞けない低音ボイス……つまりは、超俺様アーロン様からの命令の言葉に超ドMの私は頭が沸騰してしまうぐらいに興奮してしまった。あ、相変わらず良い声!もっといろいろ言ってもらいたい!言葉責めしてもらいたい!!って私は興奮しちゃったのだけれど……。

 でも、聞かれたからって、そんなこと素直に言えるわけないじゃない!


「い、いませんいません!そんな人いませんから!!」


「今更そんな嘘が通じると思うか。育った故郷ではさぞかしモテていたのだろう?レンの容姿、性格を考えれば寄ってくる男がいないはずがないだろう」


 褒められている?そこは、ちょっと嬉しいんですけれど……えっと、こっちの世界に来てからそういうお付き合いなんてしたことは無いのだから別に嘘は言っていないわよ!


「い、いませんって!いたらとっくに結婚とかしていてもおかしくないじゃないですか!……たぶん」


「……言われてみれば、そうか……」


 この世界での結婚適齢期っていうのはどれぐらいなのか分からないけれど、別に私ぐらいの年頃で結婚していても不思議では無い世界よね、きっと。うんうん、と頷いていけばなんとかアーロンを納得させることができたのでホッと安堵していた。

 真面目に話し合っていたはずが……やっぱり、何処かで……口は災いの元とはよくいったものよね……(苦笑)でも時折出てくる超俺様アーロン様が素敵だわ!(Mか)


 良ければ『ブックマーク』や『評価』などをしていただけると嬉しいです!もちろん全ての読者様には愛と感謝をお届けしていきますよ!

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