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五十八話 フランからの提案

 今までとはちょっとデザインの違うドレスに着替えた私は、朝からアーロンに褒められまくり。

 薄いブルーがかったドレスは、それはそれは綺麗で、キラキラしている抑えめの装飾も綺麗。

 ……ちょっと私には勿体無いかなって思うのだけれど……ね。

「……こうしていると、王と王妃に……見えなくもない、か?」


 やたらとアーロンはスキンシップが多くなった。スキンシップって言っても、別にべたべたしているわけじゃなくて、出歩くときには手を繋いで歩く。そして、さり気なく私の肩に手を置いてみたり……。スキンシップって言うほどのものじゃないかもしれないけれど、それでも接触する機会は以前よりも増えた気がする。アーロンの事情を知ったから?過去も教えてくれたから?相手が、私……だからだろうか。別にこれぐらいの触れ合いならば苦になることはないし、アーロンに任せていたのだけれど、不意にいたるところで呟いてくるのは……。


「ふむ。王と王妃になれば、こんな感じか……?」


 つまり、自分を王として考え、私のことを完全に王妃として見ているような発言。えーっと、取り敢えず許嫁からはじめていくって話じゃなかったんでしたっけ?それが、たった一晩で、王と王妃のように周囲に見せつけるかのように私たちの仲の良さをアピールしているみたいだった。

 二人きりでいるときにはもちろんのこと、周囲に少しでも人の目があるときには、さり気ないアーロンからのアプローチ……もとい接触に拒むことをしていない私っていう状況だから傍からみれば、もしかしたら許嫁……もしかしたらそれ以上の関係に見られているのかも?


「……私は、王様と王妃様っていうのは、ここの帝国に来てはじめて見知ったものですから、どう?と言われても比べようが無いんですけれど……」


「そうだった。……では、レンの思う……夫婦とは、どんなイメージがある?」


「ふ、夫婦ですか!?」


 いろいろすっ飛ばして、そこに焦点をあてるアーロン、凄いですね。それにしても夫婦ときたか……う~ん、私の両親はごくごくありふれた夫婦だったように思う。特に何かしているわけでもなかったようだけれど、一緒に同じ時を過ごし、一緒にいるのが当たり前だったような……そんな存在。そう言えば、両親が喧嘩らしい喧嘩をしているところは見たことが無かったかもしれない。相当、仲の良い夫婦だったのかも。……最近、会えてなかったんだけれど。


「そばにいることが当たり前で、同じことを楽しんで……仲の良いっていうイメージ、でしょうか」


「意外と普通だな」


「ふ、夫婦なんてそんなものだと思います!でも、そんな普通のことが出来ているのって難しいんじゃないでしょうか。だって、世の中には夫とか奥さんに先立たれてしまって孤独になる人もいますし。もっと最悪なケースだと、不倫だとか愛人とかを平気で作っちゃうような夫婦だっているんですから」


「不倫?愛人?側室とかの話か?」


 あ……えーっと、この世界だと不倫とか愛人とかって言葉は分からないのかしら。えーっと、つまり浮気ってことなのよね。側室っていうのとはまたちょっと違う感じがする。


「不倫とか愛人とかっていうのは、結婚をしているのに未婚の人と……その、交際をしていることです。そこには愛がある場合もあるかもしれませんし、その……体だけのお付き合いで終わることも聞いたことがありますが……」


「へぇ?レンは、そういうところは物知りなんだな。意外だ」


「い、意外?」


「あぁ。どちらかと言えばレンは清純っぽいから浮気だの不倫だのとは縁が無いのかと思っていたが……もしくは、そういう経験をしたことがあるのか……」


「人づてに聞いたことがあるだけです!経験なんてありませんから!」


 私が必死になって反論をすると、『分かってるさ』と当然のごとく納得しているアーロン。もう、だったらからかわないでほしい……。だいたい、も……もしも、私に不倫とか浮気の経験があった、なんて言ったらアーロンはどうするんだろうか……敢えてスルーしてしまうんだろうか。もしくは、何処のどいつだ、それは……ってぶち切れてしまうのだろうか。……なんてね。


 今日もアーロンの仕事部屋の机には、書類の山が。毎日のように見慣れてきているものだけれど、それをてきぱきと作業を終えていくアーロンはさすがだ。慣れっていうのもあるかもしれないけれど、きちんと重要な書類にはしっかりと目を通すようにしているし、追記したいことがあればきちんとペンを取ってあれこれと書き込んでいることもしているから、ただ書類にサインをするだけ……っていう流れ作業をしているだけじゃないみたい。本当に働き者の王子様だ。


 コンコン


「兄上~、レン~、いる~?」


 この、ぼやっとした話し方はフランだ。あれ、まだ城下町に出掛けている時間だと思ったのだけれど、今日は帰宅が随分と早い気がする。


「はい、どうぞ」


 アーロンの仕事部屋だけれど、ほぼ私が昼を過ごす場所にもなってきている。アーロンも目に入る場所に私がいることで少なからず安心しているようだ。邪魔にならない範囲で私も自由にさせてもらっているが、もちろんアーロンの仕事の進み具合をみては、紅茶とお茶菓子の差し入れをするのは忘れていない。もちろんオリーブはソファーですぴすぴと寝てばかりいる。でも、そんな姿が可愛いのよね!


 私がドアを開けると、ちょっとだけびっくりした顔のフランと出くわした。


「……なんか、すっかりレンもここに慣れてきたって感じだね~」


「まあ、ほぼ昼間はここに来ていますからね」


「フラン。どうかしましたか?私に、用事でも?」


「う~ん、正確には二人に、かな。途中でサイモンや預言者様に会ったんだけれど……兄上とレンの許嫁を公にはっきりと発表してはどうかって相談させられたんだよね~」


「公表?」


「……つまり、帝国に住んでいる人たちの前に出て、許嫁を公表するということですね。まあ、そうなればレンには逃げ場も無くなりますし。ただ、許嫁になるからってそんな大それたことを今までしていましたっけ?」


「……あのさぁ~……僕だって薄々だけれど分かってるから。……父上と母上のことと僕たち兄弟のこと。だからあの二人を退かせるなら僕だって協力するからね~……だから、そのためには使えるものは何でも使っていくから。つまり、レンと兄上は許嫁になったんでしょ~?だったら、取り敢えずそれ公表しちゃいなよ~」


 フランは、まだ幼いからてっきりご両親との関係を知らないものとばかり考えていたのだけれど、違ったのね。フランも、ただぼや~っと自分のしたいことだけをしていたわけじゃなくて成長していたってことなのかしら。でも、公表って……。


「別に私は構いませんよ?城に民衆を招いた中で、私とレンの許嫁を正式なものとして……という感じで公表するのは楽しそうですしね」


 その、アーロンの楽しみは……王と王妃がどんな顔をするのか、と楽しみにしているんじゃないだろうか。こういうところ、アーロンってドSなんだから。別に嫌いじゃあないけれどね!


「でも、民衆の前で公表するっていっても、そんなに目立つっていうか……大騒ぎになるようなことになるんでしょうか?」


「それはもちろん。民衆の中には、商人……あちこちの国をまわって商売をしている人もいることですから私たちの関係を公にすればあっという間にあちこちの国に私たちの関係が広まっていくことになるでしょうね」


 うわ、そんな感じに広がっていくんだ。人の力って凄い……現代だと、ちょっとした情報で何でもかんでも調べることができていたので便利だなとは思っていたのだけれど、この世界は世界で商人たちが情報をあれこれと広めていくなんて……まさに足を使った情報になるわけだ。


「……まあ、良いんじゃないでしょうか。私には反対する理由がありませんし……」


 私がそう言うと、意外だったのか目を丸くする二人の王子様からの視線が私に向けられた。私だって別に適当に許嫁になるって決めたわけじゃないんだから。アーロンが堂々と政をできるためにも、そして王妃様……モニカ様を王妃から退かすためにも、良い案だと思う。

 王子様からの公表!公表!なんと今まで許嫁を作らなかった第一王子にいよいよ許嫁が見つかったそうだ!気になる民衆は是非とも城へ!……とかってお知らせとかを出していくんだろうなあ……。


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