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五十七話 勘違いラウル

 なーんか、あったかい……現代で言うところの、炬燵に潜り込んだときのような、あたたかさ。

 でも、何か聞こえるのよね……コレ、何の音……?

 トクン、トクン……


 温かさにはもちろんのこと、耳に届く小さな音が気になってしまって何の音かと思ってぼんやりする頭で少しずつ目を開いていった。すると目の前にはヒト……。

 えーっと昨日は……久しぶりに帝国に戻ってきて……いろいろな話をアーロンから聞かされることになってしまって戸惑いが全然無かったってわけじゃないけれど、アーロンとフランが現王と王妃から生まれた子どもって言われるとちょっとさすがにね……って、気にかかっていたものだから血の繋がりが無いって聞かされても……やっぱり、と思っていたんだったわね。それから……それからは……あ、アーロンの部屋で一緒に寝たんだった。じゃあ、この目の前に……というか、ほぼ私と密着しているような体ってやっぱりアーロン、よね。えっと、アーロンの胸元が私の顔の位置にあるってことは、私……抱き枕にされていない?抱き枕って……確か、フランにもされていたような気がするのだけれど、兄弟揃ってそういうものに興味があるのかしら。

 それに、さっきから聞こえてくる音。


 トクン、トクン……


 これって、私の鼓動の音じゃないわね。何の音かと思っていたのだけれど、アーロンの鼓動だったんだわ。こういう人の鼓動を耳にしていると、ついつい気が緩んじゃってまた眠たくなっちゃうような気がするんだけれど今何時ぐらいなのかしら。あと……アーロン、ちょっとくっつき過ぎじゃない?背も私より高ければ当然ながら足も長い!そんな長い足が、私の足にもよく絡んでいらっしゃるようなのですけれどね!……まだ、アーロンは寝ているのかしら。これ、私が思いっきり顔を上に向けた途端にアーロンの顎とぶつかったりしたらお互いに痛いわね……。仕方ない。ゆっくり、ゆーっくり……。


 むしろ、恐る恐るといった感じで、顔を上に向けていくと動いた私に気付いたらしいアーロンの……既に起きているであろう顔とバッチリと目が合ってしまった。


「……起きて、いたんですね」


「あぁ、ついさっきな。でも、レンもまだ寝ているし、あたたかいし……離れたくないから、こうしていた」


 こう……こうしているって、つまり、密着状態ってこと!?もぞもぞ、と足を動かしてみようとするものの、アーロンは器用にも長い足で私の足を絡めて自由に私が動けなくさせているみたい。い、意地悪!


「お、起きたなら少し離れませんか?」


「なんだ、離れたいのか?」


「うっ……えっと、だって苦しいかと思って……」


「俺は、全然。むしろ幸せで、ずっとこのままでいたいぐらいだ」


 ひぇっ、頭上……耳に近い所で、そう大きくは無い声で囁くように言われるものだからMの本性とはまた違う意味でドキドキしてしまう。

 アーロンの鼓動が私にも届いているってことは、私の鼓動だってアーロンにも聞こえているんじゃ……そう思うと今の恰好が恥ずかしくてたまらないのだけれど!


「あ。そ、そう言えばオリーブは……」


「ふっ、大丈夫。ベッドから落ちていないさ。上の方で、すぴすぴと寝入っている」


 あぁー、見たい!そういう可愛らしい姿を見たい!アーロンが独り占めしているだなんてちょっと悔しいわね!

 ぐいぐい、と失礼して……と呟きながらアーロンの胸元に手を当てて押し退けようとするものの、う、動かない……全然、一ミリも動いた気配が無いんだけれど!


「なんだ、それ。抵抗しているつもりか?」


 そ、そうですよ!もちろんですよ!でも、全然動かないんですよ!


「て、抵抗っていうか……もう少し離れたらどうかなーって思いまして……」


「レンは力が弱いな。……かと言って、力自慢をされても困るが……」


 ……重そうなダンベルを軽々と持ち上げてみせる、私。その笑顔は満面の笑みで、『アーロンのことも持ち上げてみせます!』と無駄にキラキラしながら筋骨隆々として存在している私の姿をイメージしてしまったが、こんなことは絶対に有り得ないわね。


「あははー……力の強い私なんて無理ですね。なんか、自分で言うのもなんですが、気持ちが悪いです」


 そう言うとアーロンはつい噴き出して笑いはじめてしまった。いえ、言い始めたのはあなたなんですけれどね。嫌な想像をするきっかけをつくったのはアーロンですからね!

 まだ小さく笑いながら私の体を固定させていた足をほどき、腰まわりに添えていた手も離すと体を起こしてそっぽを向きながら笑いを堪えているようだった。……意外と、アーロンって笑うわよね。あ、いや、王子様スマイルとかで笑いかけているときも多いと思うのだけれど、素のアーロンっていうの?こっちでも結構笑っていることが多いと思う。体を解放された私も体を起こし、どんな顔をして笑いを堪えているのか、と横からアーロンの顔を覗き込んでみるが、容易く逃げられてしまった。


「……っ……はぁー……朝から退屈しないで楽しい。今日は、確かラウルが用意してくれたドレスを着るんだったか……手伝うか?」


「!い、いえ!あの!一人……では、さすがに難しいのでラウルを呼びます!」


 ドレスに着替える……やっぱり、帝国に戻ってきた感じがするわ。ドレスは、なかなか一人で着替えることは難しい。脱ぐのはなんとか一人でもどうにか出来るようになってきたのだけれど、とにかく着る方が大変だ。そのため、ラウルには朝から手伝ってもらうことが当たり前になっていたのだけれど……ここ、アーロンの部屋なのよね……。


「あぁ、なら、彼女を呼ぶか……」


「ま、待って!待ってください、アーロン!」


「次から次へと……どうした?」


 いや、あの……えっと、私が昨晩からアーロンと同じ部屋で寝泊まりしているってことはラウルは知っていたかしら?……し、知らないはず!ここで、ラウルを呼んでみなさいよ!きっと彼女に、変な誤解を生ませるに決まってるじゃない!アーロンは普通にラウルを呼ぼうとしていたけれど、寝間着の姿でラウルを呼びに行く王子様なんて有り得るの!?


「また、おかしな顔をしている……おい、何も無いなら呼ぶからな」


 まったく、と溜め息混じりにベッドから立ち去るアーロンに、私は一人『あわわ……』と慌てていたのだけれど、アーロンにとっては何でもないことなの!?だって年頃の男女プラス一匹が一緒に、同じベッドで寝たのよ!?べ、別に何かしたわけじゃないけれど!それでも一緒に寝たことには変わりないんだから!


「あら、レンもこちらに?……あ、あらあら!おはようございます!お二人とも!」


 すぐさまラウルは取っ捕まったようで、アーロンの部屋に連れて来られたラウル。もちろん、アーロンの部屋で、しかも私は未だにベッドの上。それを見たラウルは、何を想像したのか分からなかったけれど絶対ぜーったいに変な誤解をしたんだと思う!目、目がやけにキラキラしていたもの!


「では、レンを着替えさせますので殿下はお外でお待ちくださいね」


「あぁ……よろしく頼むよ」


 あ、アーロンの王子様スマイルが登場ね。……素早い。ラウルはアーロンの素って知っていたりするのかしら?でも、別に知っていても不思議じゃないわね。長い付き合いになっていると思うし……。

 一旦、アーロンを部屋の外に出したラウルは、ニコニコとした笑顔で私に歩み寄ってきた。う~ん、この笑顔は……。


「昨夜は、ご一緒だったのですね!おめでとうございます、レン!」


「え、おめでとう……?」


「許嫁になったばかりだとお聞きしましたが、もう夜を共にしていたなんて将来が約束されたようなものではありませんか!私もとても嬉しいです!」


 えーっと……本当に、同じベッドで寝たってだけでもこんなに大喜びしちゃうものなのかしら?


「殿下の子を授かるのもそう遠くはないかもしれませんね!」


「ぶはっ!!!」


 ラウルの発言に思わず吹き出してしまった。な、な、子ども!?ち、ちが……そういう意味で一緒に寝たんじゃないんだからーっ!!!

 朝からルンルンとしているラウルに着替えを手伝ってもらいながら(な、なんか大喜びしているところに本当のことを言うのもちょっと気が引けてしまって……)なるべく他愛もない話をしながらドレス(薄いブルーがかった色彩のドレス)に着替えると『今日もありがとうございます』とお礼をつげて、外に待たせているアーロンを呼んだ。


「……今まで、見たことのないデザインのドレスですね……よく、お似合いですよ」


 素のアーロンではなく、王子様アーロンで褒めまくるのは相変わらずのようで。そんな私たちの近くでニコニコ、ルンルンなラウルが私たちを優しく見守っていた。

 ドレスを表す、素敵な言葉……が、難しいです……。生地とか、装飾とかって言葉にしてしまうので、ついついドレスってどんなドレスだ?と思われてしまいそうですよね……(汗)こればかりは勉強が必要なのかもしれません……。


 良ければ『ブックマーク』や『評価』などをしていただけると嬉しいです!もちろん全ての読者様には愛と感謝をお届けしていきますよ!

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