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五十五話 温もりに惹かれて……

 あら、あららら?

 いつの間にか寝ちゃった、アーロン。

 ……今は、だいぶリラックスしているらしい。

「…………寝てる、わよね……」


 しばらく、アーロンとベッドの上で寝転がりながらあれこれと会話をしていたものの、それがいつの間にかウトウトし始めてしまって、ついには瞼を閉じ、スヤスヤと寝息を立てはじめてしまったアーロン。さきほど飲んでいたらしい睡眠薬も良い具合に効いているのか、小声で私が呟きをもらしても全然反応すること無く、眠ってしまったらしい。

 ……ちょっとムカつくぐらいに、王子様だけれど……こんなに熟睡しているというのに、王子様オーラっていうのは消えていないのねぇ。確か、王族の血を引いているんだったかしら……本物の王子様ってことなのよね。……まあ、アーロンは仕事もできる、城下町からの評価もなかなかに良いらしいから良い人に恵まれているのだと思う。そういうのって生まれながらにして王様になれる素質?みたいなものがあるんじゃないかしら。


「きゅ……?」


「しぃー……ダメよ。オリーブ。静かに静かに」


 私の頭の上辺り……本来ならば、枕とかが置かれている辺りに、今オリーブはいるわけだけれど、ちょっと鳴き声をあげそうになったものだから、私は慌てて口の前で人差し指を立てて『シィー』と静かにするようにお願いしてみると、オリーブは頭が良いのか、すぐに静かにしてくれた。すご、でっかいドラゴン状態だったときには私の言葉も聞こえているようだったし、この小さな姿になっていたとしても私の言葉は伝わっているのかもしれない。


「……睡眠薬を飲んでいたなんて……」


 もしかして、眠れない体質だったのだろうか。それとも、毎日の仕事が忙しくて疲れで眠りにくくなってしまったのか……いずれにしても、薬を常用しないといけないだなんてあまりお勧めはしたくないわね。もっと健康的に眠りについてくれるように……リラックスできる方法とか調べてみるのも良いかもしれない。


「……ん……」


 不意にアーロンの口が僅かに動いたものだから、私は思わずびくっとして体を強張らせてしまったのだけれど……起きては、いないみたいね……。良かった……。

 安眠させる方法……よく、風邪とか引いたときには人が近くにいると良いとか人肌恋しくなるとかって聞くけれど、今のアーロンは別に風邪を引いているわけではない。具合が悪いというよりかは、睡眠薬は毎日寝る前に飲むことが当たり前になってしまっているようだ。もちろん薬で眠れるのなら良いのかもしれないけれど、あまり薬に頼り過ぎるのもねぇ……。


 あ、体を温めるのとかはどうかしら?

 聞けば、この広いベッドでは一人きりで寝ていたようだったし、今日からは私が一緒に寝て少しは暖かいと感じてくれているのかしら?ちょっぴりアーロンと私の間には、空間が出来てしまっていて、それがお互いの心の距離というか、まだ縮まらないお互いの距離を示しているようで寂しくなってしまった。


 うーん……もう、ちょっとだけ……。もう少しだけ……アーロンの近くに行っても大丈夫かしら?起きちゃったりしないかしら?

 少しばかり身動ぎをしつつ、アーロンを起こさないように気を付けながら近づくと、ほんの少し手を伸ばせばアーロンに触れることができてしまう距離まで来た。

 ごく……っ、と思わず息を呑みながらアーロンの体に寄り添うように体を近付けると、自分のモノではないアーロンの温かさにホッとした。当たり前だけれど、生きている人間が持っている暖かさに私もとうとうウトウトしてきてしまった。

 あ、やば……私も、寝そう……。


 どうか、アーロンが良い夢を見られますように……もしも願いが叶うのならば、アーロンが望むような夢を見させてあげられますように……と、私はウトウトする意識の中で願いながらとうとう瞼を閉じてしまった。

 最初は、アーロンとはそこそこの距離を取って寝るつもりだったのだ。こんなに広いベッドだもの、自由に何処でも眠ろうと思えば眠れそうだった。でも、せっかく一緒に寝るのだから……少しぐらいは……ちょっと近付くぐらいならば許されるかなー……と思ってしまって、そして、人の持つ暖かさにホッとしてしまった私はアーロンに体も顔も擦り寄るまでに距離を縮めて眠ってしまった。大きなベッドにはアーロンと私、そしてオリーブも一緒だ。オリーブは私の頭の上辺りで、静かにスピスピと眠っている。とても可愛らしい寝顔だ。そして、アーロンもまさか私よりも先に眠ってしまうなんて少し意外だったのだけれどその寝顔は安心しきっているようにも見えるものだったので私も安心してしまった。明日、朝になったらアーロンの寝顔はこんな顔をしていたんですよ、と言って少しからかってみようかしら。そうしたらアーロンはどんな顔をするのかしら。凄く、楽しみね……。


 私が寝入ってからどれぐらいの時間が経ったのか、あー……コレは、夢ね。目の前に広がるのは『Mの屋敷』の店内風景だった。一瞬、元の世界に戻って来たのかしら?と思ったけれど、私は確かにアーロンのベッドで、共に眠ったはずだったと思いだしたものだからコレは夢なのだとすぐに気が付いた。


『はぁー……レンちゃん。まだ見つからないんですって?』

『はい……いくらスマホに連絡を入れても、反応が無いみたいですよー』

『家にはいるのかしら?誰かレンちゃんの自宅に行ってみた?』

『いえいえ!だって鍵もかかっていますし……』

『警察に捜索届け……出すべきかしら……そろそろ一週間よねぇ?』

『……さすがに、連絡も取れないとなると心配ですよね……』


 あれ、オーナーと従業員たちの話からすると、私って失踪状態にされているってこと?しかも、連絡も取れないって……あ、そうか……こっちに来たとき、既に持ち物らしい私物は無くなっていたんだったっけ。でも、私がいなくなって……まだ、元の世界では一週間しか経っていないってこと?こっちでは、もう何か月も過ごしているはずなのに。……時間の経過具合って、違うってことなのかしら。それにしても、オーナー……凄く、心配してくれているみたい。もちろん他の従業員のみんなも心配してくれているだろうけれど、オーナーなんて……ちょっとクマ出来ているんじゃない?……眠れて、いないのかしら。心配ね……。でも、私、こっちでもう少しやりたいことが出来たの。それが、やっと明確になってきたところなのよ。……今の王妃様たちをその座から退ける、そしてアーロンがまずは王様として国を治めていく!私は、王妃様になれるかどうかは分からないけれど、アーロンのお手伝いはさせてもらうつもりなの。先のことがどうなるかなんて分からないけれど、アーロンっていう王子様なんだけれど、素になるとめちゃくちゃドSっぽく話す素敵な人なのよ!もう、超ドMの私が言うんだから間違いないわ!もっともっと超ドS様っぽい言葉を聞いてみたいところだけれど、きちんとやることはやっていかないといけないわね。

 なので、オーナー。そして、みんな。しばらくは、まだそちらへは戻ることはできないかもしれません。でも、どうか私のことはあまり心配しないで大丈夫よ?私は、こんなに元気に過ごしているんだから!なぜか分からないけれど不思議な力を持っていて、かなり凄い人みたいなの。だから、もう少しだけ……こっちの世界に滞在させてもらいます。心配かけてごめんなさい。でも、いつかは……私のやるべきことが無くなったときには、そちらにちゃんと帰りますから……だから、待っていてくれると嬉しいです!もちろん睡眠はきちんと取ってね!!

 隣で人が寝ていると、つい近付いてみたくなる……あったかいですもんねぇ!もう、くっついて寝ても良いよ、良いよ!!私が許す!くっつけくっつけ!!


 良ければ『ブックマーク』や『評価』などをしていただけると嬉しいです!もちろん全ての読者様には愛と感謝をお届けしていきますよ!

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