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五十四話 同じベッドで

 なんだかアーロンの『俺』発言は、気を許した人、もしくはブチ切れしているときに出てくるみたい。

 なんだか、そんなアーロンの素を知っちゃうと私も抑えていた超ドMの私が出てきてしまうみたい……えっと、いろいろ言いたいことは分かるわ。だけれど、これがなかなか抑えが効かなくなってきたのよね……。

 結局のところ、アーロンとの入浴はどうなったか……ですって?そんなこと言わなくても分かるでしょう!もちろん別々に入ったわよ!い、一緒に!?そんなの無理に決まっているでしょう!わ、私にだって気恥ずかしさっていうものが……え?そんな女がよく『Mの屋敷』なんかで働いていたものだな、ですって!?失礼しちゃうわね!確かにお店の名前だけ耳にすると怪しいお店なのかも……って思うかもしれないけれど、男女の肌が合わさるような怪しいお店なんかじゃなかったんだから!あのお店では、きっちりとご主人様であるお客様からの言葉責めをいただくというお店ルールになっていたのよ。たまーに間違って入ってきてしまったのか、私たち従業員に風俗のような接客を求めるお客だってゼロってわけじゃなかったんだけれど、そこは……あの頼れるオーナーがいたから私たちは安心して働くことができていたの!だ、だから、私はどっちかって言うと……お、大人の付き合いだとかそういうのはあまり得意じゃないんだってば!


 だから、結局のところ私が先に。そして、アーロンが続いて入浴することになったってわけ。アーロンは最後の最後まで私と一緒にお風呂に入りたかったみたいだけれど……さ、さすがに私が耐えられそうにないわ!だ、だってアーロンの裸なんて、無理よ!無理!!あ、見ることがもちろん無理っていう意味よ!たぶん、無駄なお肉とかは無さそうで、でも適度に引き締まっているんでしょうね……。

 だが、今日からは一緒に入浴はしないものの、一緒に!寝る!ってことになってしまったみたい……。『許嫁なのですから、それぐらいは良いでしょう?』とここぞとばかりに王子様スマイルを向けてくるアーロンって、意地悪なのかしらね……。まあ、一緒に寝るぐらいでしたら……ってことで、私はアーロンの寝室に先にお邪魔させてもらっている。

 パジャマ替わりにさせてもらっている、ワンピース風の……衣服は、ちょっとモコモコしている生地で肌触りが抜群!そんな肌触りを満喫しているのは私だけではなかった。


「きゅう~!きゅう~!」


 私に抱っこされているオリーブも、いつもより楽しそうにパジャマ生地に擦り寄ってきていた。ここを今まで使っていた本人アーロンよりも先にベッドでごろごろしてしまうのは、なんか失礼かなと考えてしまって、部屋に備わっているソファーに座ってオリーブとのスキンシップを楽しんでいた。う~ん、やっぱり今の状態だとオリーブの声って聴こえてこないわねぇ?でっかくなったらまた聴こえるようになるのかしら?


「また、お喋りできると良いのにねぇ?オリーブ~」


 オリーブは、一応ドラゴンの子ども?にあたるのかしら。大人しいし、どれぐらいの月日をかけたら魔物のトップと言われるまでになれるか分からないのだけれど、今の姿は本当に大人しい。調子に乗った私はオリーブの鼻先に軽く口付けをして楽しんでは、部屋の主であるアーロンを待っていた。


「……まだ、起きていたのか。てっきり寝ているかと思ったのに」


 これは、素のアーロンだわ。丁寧な王子様の話し方じゃないもの。


「一応、ここはアーロンの部屋ですし……先に、休んでいたら失礼ではありませんか?」


「……そうか?寝ていたらレンの寝顔を堪能できて、俺は楽しいが?」


 うっ……だから、普段とのギャップ!!何処からどうして、そんなにギャップが生まれてしまったのかしら!?やっぱり環境?家庭環境っていうものなのかしら?別にアーロンなら、素のままでもみんなに慕われそうだと思うのに。


「わ、私は、あまり寝顔を……見られたくはないので……」


「ふぅん?でも、今日からは一緒に寝るから、見ようと思えばたっぷりと見られそうだな?」


「だ、だから!そういう顔!言い方!……まったく……いちいち、ドキッとさせないでください」


「は?……今の何処にドキッとさせられたんだ?……レンは、不思議なヤツだな」


 湯上りのお茶か、水分補給だろうか、コップに水を入れて……そして、何やら棚から取り出すと口に含み、水と一緒に口に入れて嚥下していったアーロン。……え、今の……薬?


「……アーロン?今のって……」


「ん?レンを楽しませるための薬だ」


「……はぁ!?」


「……うるさい。ただの睡眠薬だ。何を想像したのか知らないが、顔が赤いぞ?」


 うるさい、と直接言われて慌てて片手で口を覆うものの次いで『睡眠薬』と聞けば、ぽかんとアーロンを見てしまう。えっと……もしかして薬を飲まないと眠れないのかしら。


「ほら、ベッドに行くぞ」


 ソファーから立ち上がった私の肩を抱きながらベッドに行くが……広い。ベッドが大きい!王子様ってこんなに大きなベッドで毎日寝ているものなの!?あ、でも広すぎてちょっと落ち着かない気分になるかもしれないわね。

 ベッドの大きさに驚いている私を置いて先にベッドに滑り込むアーロンだったが、かたわらで突っ立ったままの私を見上げると『どうした?』と口を開いた。まさか、ここまでベッドが大きいだなんてちょっと予想外だったわ。でも、これなら二人がくっついて寝るようなことにはならないかも!?あ、オリーブもいるし、二人の間には多少の空間を作らないと、ね!

 ベッドに上がるけれど、なるべくギリギリまで端っこに寄って早くも寝転がっているアーロンを見ていた。……いや、あの、うん……寝る、わよ?私だって。ただ、アーロンが先に寝たら良いんじゃない?って思っていただけよ。


「……まだ、眠くない、か?」


「あ、いえ……ね、寝ます……」


 ワンピースのようになっているパジャマの裾が捲れてしまわないように軽く押さえつつ胸近くにオリーブが来るように置きながら広く、大きく、豪華なベッドに寝転がった。……うわー……上を向いてもなにやら豪華な装飾が目に入って寝付きにくい……。


「……おい。落ちるぞ。……もっと、こっちに来い……」


「う、うわ!?」


 シーツも滑りやすいのか、アーロンの力が強いのか……その両方だったと思うんだけれど、アーロンがいるのとは逆サイドの私の腕を引っ張られて、オリーブともどもアーロンと近付いてしまった。こ、こんなに広いんだからそんなくっつかなくても良いのに……。


「えーっと……近く、ないですか?」


「全然。まだまだ遠い」


 そう言いながらも私の目の前にはアーロンの胸元が。そしてオリーブが挟まっている。アーロンの片腕は私の腰元?辺りにまわされているし、離してくれる気配が無い。……寝たら、もうちょっと離れようかしら……。


「緊張しているか?」


「べ、別に……」


「俺は緊張している。情けないぐらいに」


 そっと顔を見上げると、フッと笑みを浮かべているアーロンとバチッと目が合ってしまう。……この人が緊張!?全然、普通じゃない!


「今までは一人だったからな……誰かと一緒に寝るなんて考えられなかった。だが、最近は……レンと出会ってから、一日でも早くこうして眠りたいと考えていた。……意外、か?」


「えっと、少しだけ……」


「お前なあ……出会って、顔を合わせたばかりの男を引っ叩いたんだぞ?アレにはビックリしたが……今までそんな女とは出会えなかったものだから興味がわいたんだ、出会ったその日のうちに」


 あぁ!そう言えば引っ叩いたわね!だって、不埒な……えっと、挨拶だとしても!いきなり手にキスしてきたからよ!思わず手が出ちゃったのよ!


「だから、一目惚れっていうのは嘘じゃない。もちろん今も、好きだ……離れ離れになって痛感したんだ。俺にはレンが必要だって」


「そ、それは……ありがとうございます……」


「それが、やっと……やっと、許嫁か……まだまだ時間がかかりそうだな……」


 私の頬にかかる髪をアーロンの片手が伸びて、梳いていく。男らしい大きな手だけれど、男にしては細長く見えるその指先で……しばらく私の髪を撫でて、穏やかに笑っていたアーロンを見つめていた。

 一緒に、寝られるぞーっ!!!

 こ、これぐらい良いじゃない!だ、大丈夫よ!変なことはしないって約束したものね!うんうん!


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