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五十三話 みんなの笑顔

 アーロンと話し合うこと、数時間……。

 その間、いろいろとあったのだけれど、やっぱり効果的になりそうなのは『豊穣の女神』伝説を上手いこと利用するということに決まった。

 でも、どのように利用するかはまだまだ決められず、二人して黙り込んでしまった。

「……まあ、今日明日で、どうにかしようだなんて思っていないさ。今は、レンが……近くに戻って来てくれた。それだけで良い……この話は、またゆっくりしよう……」


「は、はい……」


 さすがに私とアーロンだけでは、『豊穣の女神』伝説をどう活用するべきかってところまでは話し合うことができなかった。そもそもモニカ様の持つ妙な噂話というものは何処から仕入れたものなのだろう?私の血を求めるほどにそんなに王妃の座が必要っていうこと?そんなにいつまでも若さが欲しいっていうこと?……まだまだ分からないことだらけね。


「……せっかくラウルが用意してくれたが、コレは明日にでも着てくれ。食事にでもしようか。他にも顔を合わせていない連中がいるだろう?俺だけが独占したい気持ちもあるが……レンがいなくなって慌てていたのはみんな同じだからな」


 ソファーに掛けられているラウルが用意してくれた私用のドレス。うん、そうね。これからは入浴して寝るだけになるだろうし、どうせ着るなら明日にした方が良いかもしれない。まだ顔を合わせていない人たちもたくさんいたわね。……ラウルのようにビックリするのかしら、もしくは泣いてしまう人もいるのかしら?ちょっとだけ、ほんのちょっとだけみんなの反応を楽しみにしてしまった。私は決してSではないわよ!

 食事をとるために、大広間に行く間も私は片腕にオリーブを抱え、もう片方の手はアーロンと繋いでいた。強くも無く、弱くも無く、ちょうどいい力具合で繋いでくれているアーロンの手は、やっぱり大きくて温かかった。

 帝国に戻ってきても、まだ顔を合わせていない人たちの反応は実に様々なモノになった。サイモンはズリ落ちかけた片眼鏡を整えつつ『ご無事で何よりでした』と感動していた。預言者様は……相変わらずフードを深く被っていたので表情は分からなかったのだけれど『ほほほ!ようやく城に花が戻って参りましたな』と笑っていたし。給仕の皆さんなんかは涙ぐんでいる人たちも多く、うるうるとした目を私に向けながら『お帰りなさいませ!!』と礼儀正しい挨拶を。そして……フランは、というと……。


「!……え、本物?」


「私が偽物に見えるのですか?だいたい、銀髪って私しかいないんですよ?どうやったら偽物なんて用意が……」


 私が言い終わるよりも先に、フランが私に抱き着いてきた。腕に抱えていたオリーブが少しだけ苦しそうに『ぎゅぅ……』と鳴いた気がしたけれど、それでもなおフランは離れようとしない。


「レン……レンだ、本物の……っ……怪我、とかは?」


「ありませんよ。だいたい怪我しても私の体ってすぐに治ってしまうらしいので」


「よ、良かった……ホントに……」


 フランにしては、ちょっと大げさ過ぎるぐらいに再会の感動を行動にあわらしていた。普段、だら~っとしていて、『めんどうくさ男』っぽく見えたものだからこうして再会しても『……あぁ、お帰り……』ぐらいで終わるかも、と思っていたのだけれどそれが全然!本当に心から安心したように、そして私の存在をきちんと確認するかのようにしばらくの間、フランは私から離れてくれなかった。

 こうしてみんなの反応を目にすると、私って帝国で良い人間関係に恵まれていたんだなあと実感した。もともとみんな優しくて良い人たちばかりだと思っていたけれど、久しぶりに会ったら改めて良い人たちなんだなあと感動してしまった。……王様と王妃様?……その二人には、会いたくないわね。帰ってきてからすぐに王妃様に出迎えられてしまったけれどやっぱりイイ顔はしていなかった。『なんで、この小娘がここに!』と顔に書いてあったもの。もう二人きりで王妃様に会うなんて考えられないわね。うん。命令されたとしても絶対に無視してやるんだから。


 久しぶりに顔を合わせた面々との食事は、かなり楽しかった。本来は、食事中はなるべく静かに食べる……っていうのが正しいマナーなのかもしれないけれど、私がオリーブにいろいろと食べ物をあげながら話しかけているものだからだんだんと他の人たちも控えめながらも楽しくお話をすることが増えていったみたい。決して大騒ぎをしているわけじゃない。控えめに、今日はこんなことがあった、何があったとか、それぐらいのこと。

 夕食後に堪能する紅茶もやっぱり美味しかった。これを淹れてくれたのは、給仕さんたちかしら?ラウルかしら?みんなお茶を淹れるのが上手いわよね。尊敬しちゃうわ。


「さて。……レン。ゆっくりとお風呂に入りましょうか。……私が背中でも流してさしあげますよ」


 アーロンの『俺』口調というものは、みんなの前だと消えてしまうらしい。って、ちょっと待って!今、今、なんて!?


「その綺麗な髪も、私が丁寧に洗ってさしあげます」


 ちょ、あの……!

 自然な流れというか、私の肩には既にアーロンの手が置かれて、離してくれる気配が無い。むしろ肩はこのまま離さない!と言わんばかりにじゃっかん強く掴まれているみたいで、離れられない!そして、アーロンが浴場にどんどん進んでいくものだから私の足も同じ方向へと進んでいってしまう!だ、誰か!


「い、いや、あの……私は、一人で大丈夫ですから!」


「えぇ?良いじゃないですか。別に一緒でも。ほら、オリーブも私が一緒でも構いませんよね?」


 私の腕の中におさまっているオリーブに問いかけるアーロンはニコニコとした王子様スマイルを浮かべていた。オリーブに聞いても『きゅうきゅう』と鳴くばかり。それは、私の意見に賛同している鳴き声になるのか、それともアーロンに賛同している鳴き声なのかは分からない。う~ん、オリーブ……こうして小さくなってからオリーブからの声って今のところ聞こえてこないのよね。デッカイドラゴン状態だったときは、たまたまってヤツなのかしら?小さいときにも声が聞こえたら楽しいのに……残念ね。


 って、そうこうしている間に、目の前は浴場のドアの入り口が!!!


「あ、アーロン!わ、私だって恥ずかしいんですから!一緒に入るなんて無理ですってば!」


「……ダメか?レンの裸だから、俺は見たい。レンの髪だって本当に綺麗だから一度は洗ってみたいと思っているんだが?」


 あ、出た。

 『俺』発言。やっぱり『俺』発言っていうのは周りには隠しているってこと?……別にこのままでも良いと思うんだけれどなあ……。


「だ、だめです!そ、それに……一緒に入るってことは……あ、アーロンだって……は、裸に……」


「服を着たまま風呂に入るバカがいると思うか?ほら、早く脱げ……それとも、脱がしてほしいか?」


「ひぇぇ!そ、そんな……そんなことは……っ……あぁ、アーロン……っ、そ、その言葉……もっと言って……じゃなくて、良いわね!」


 アーロンからの超ドS様発言に、抑えていた悲鳴が口から出てしまった。思わず足元はよろめいてしまうし、素敵なドS様発言に思わず片手を顔へと覆ってしまうほどに私は大興奮!だって、『脱げ』とか『脱がしてほしいか?』って、凄い意地悪っぽい表情って言ってきたのよ!ドMの私が喜ばないで誰が喜ぶっていうのよ!!

 慌ててアーロンはよろめく私を腰を抱いて支えてくれたものの、興奮してしまった私は顔も熱が集まるし、私一人で『きゃあきゃあ』言っているものだからさすがのアーロンも困ってしまったようだ。


「……オリーブ……お前の主は、変わり者だな……」


 真顔になったアーロンの呟きにオリーブはいつものように『きゅう?』と鳴くばかりだった……。

 賑やかになるんだろうなぁ……だって、オリーブがいるから!『オリーブ、コレなら食べられるかしら?』って話しかけながら主人公は餌付けしているんでしょうねえ……。


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