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五十一話 アーロンの素

 久しぶりに、夢を見た……。

 あの姿は、私の……俺の本当の両親。

 待ってください!俺も、フランもまだこっちにいるんです!だから、置いて行かないでください!

「……置いて、行かないで……ください…………」


 アーロン?

 これは、寝言?

 耳をすませばまだ、寝息を立てているからさっきのは寝言なのだろう。

 一体、どんな夢を見ているのかしら。

 少しでもアーロンにとって良い夢ならよいのだけれど……でも、とても切ない寝言だったわね。


「きゅう~?」


「……そうね。働き者のアーロンには、少しでも安らかに……良い夢を見てもらわなくちゃいけないわね」


 『よしよし』とオリーブの頭を撫でてから、再びアーロンの頭に手を伸ばすとビクリとアーロンの肩が震えたような気がした。……実は、起きてる……ってことはないわよね?

 意外とさらさらと指通りの良いアーロンの髪を指に通しながら撫でているとやっぱりぴくりとその体が揺れた気がした。……やっぱり、起きてる?


「……アーロン?」


「……あ……あぁ、レンですか……膝、ありがとうございました。なんだか少しだけ夢を見た気がしましたよ」


 寝起き特有のボケているような感じなのかしら。

 あっちこっちに視線を移動させては、私の膝から退くとぼんやりとした目でぱちぱちと何度か瞬きを繰り返していた。


「……だ、大丈夫ですか……?」


「えぇ。レンには聞き苦しいかもしれませんが、話の続きを……」


「いえ、もう大丈夫です。私からもアーロンにお話ししたいことがありますから」


「え?」


 私がつげる言葉に、目を丸くしつつ私を見つめてくるアーロン。


「……お母様のことでしたから今までちょっと言わないようにしていたのですけれど、アーロンからあんな話を聞いてしまって……正直、耐えられません。その、私が力になれるのか分からないのですが……モニカ様を王妃の座から退かすには、どうしたら良いでしょうか?」


 そう言うとアーロンは目を見開いたかと思えば、小さく『ははっ』と笑った。


「それは、期待しても良いのでしょうか?許嫁からはじめていこうかと思っていたのですが……レンにその気があるのなら、あなたを王妃の座に座らせてみせますよ」


「アーロンが少しでも救われるのなら。そしてこれからアーロンが幸せになれる見込みがあるなら……私は、協力させていただきます。許嫁でも、王妃候補としてでも……私を使ってください」


「レン……」


 そっと私の頬に手を添えてくるアーロン。もちろんその手から逃げたり、退けようとなんてする気は今は無い。ちょっと冷たく感じるアーロンの手に、目を細めつつ頬に添えた手に猫のように擦り寄ってみるとアーロンの顔が近付いてくる。そして……。

 自然とお互いに目を閉じていったように思う。同じタイミングで目を瞑り、そして、お互いに顔をゆっくりと近付けていって唇を重ねた。たった数秒、唇を重ねていただけだと思うのに、その時間はとってもゆっくりなもののように感じた。


「……レン……私は愛していますよ。私は……いえ、俺は、少し我が儘なところもあるが……一緒に、来てくれるか?」


 あ!

 こういうときに俺様化しちゃうの!?

 ずるい!

 でも、やぱり素敵ね!!


「はい……取り敢えず、アーロンには許嫁もいないようですから、許嫁として過ごしていきましょうか」


「許嫁から、か……。特にしきたりのようなものは聞いたことはないが……今は、もう少しお前のことを感じたい。……良いか?」


「!は、はい……」


 こういう話し方……もしかして、アーロンの素なのかしら。

 普段とのギャップがあり過ぎるでしょう!でも、素敵ね……こういうのを待っていたのよ!


 私の後頭部に片手を伸ばされるとグッと距離を縮められて、私はアーロンに抱き着く形になってしまった。だ、大丈夫だっただろうか?痛くなかったかしら?

 顔を上げると、少し悪戯っぽく口端を上げて微笑むアーロン。王子様スマイルとはまた違った笑い方についつい目を奪われてしまう。そして、しばらくアーロンから落とされるキスに応えていた。軽く啄む程度のキスで、少しばかり物足りなさを感じるようになるとそれを見透かしたかのように角度を変えて私の唇に吸い付くように、そして夢中になって唇を合わせる私たち。私もアーロンの背に手をまわして少しでもお互いの距離が縮まるように抱き着きながらキスを交わしていた。


「……はぁ、はぁ……っ……」


「はは、レンのその顔……凄く、そそられる……顔も、耳も真っ赤だな」


 アーロンはスリッっと私の頬に自分の頬をあてると、熱くなった耳にも軽く口付けて、それからほんの少し歯を立てて噛み付くものだから、『ひゃぅ……』と小さく悲鳴をあげてしまった。


「耳、弱いのか?……真っ赤になって……リンゴみたいだな……」


 チュッチュッと耳にも口付け、首筋にも顔を埋めて、キツク吸い付かれる感覚になるとビクッと体を震わせたが、特にアーロンは気にしなかったようで首筋から鎖骨、ドレスの胸元を少しばかり無理やり広げると鎖骨の下までも吸い付くような口付けをしてきた。


「……んっ、アーロン……っ……」


「あー……忘れていた。ここは仕事部屋だったな。……さすがに、抱くことはしない……が、レンのいろいろな声が聞きたい……我慢なんかしなくていいから、聞かせろ」


 !!超ドS様キターっ!!!

 す、素敵!!

 もっと、もっと言って欲しい!!私もだいぶ意識がぼーっとしてきたけれど、ドS様の言葉だったらもっともっと言って欲しい!!


「ぁ、アーロン……もっと……」


「……レン?」


「私、アーロンにそうやって言われるの……好き、みたいです……」


 思わず声に出してしまってから慌てて口元に手を当てるものの、アーロンはイジワルっぽく笑うばかり。もしかして、意味、伝わってしまったのかしら……。


「へぇ?レンって強く言われた方が好きなのか……覚えておく。……なら、少し、意地悪したら……どうなるかな?」


 さすがにドレスをこの場で脱がされることはないだろうけれど、ドレスのふわふわした生地に少しばかり眉を顰めている様子のアーロン。……いやいや、脱がさないでくださいよ!?そんな顔をしてもダメです!

 

「……破いたら、どんな顔をするだろうか……だが、レンの肌を見てしまったら俺が耐えられないだろうし……困ったな……」


「用意してもらったドレスなんですから、破くだなんて……しないでくださいね?」


「……残念だ」


 すごーく、残念そうに呟くと近くにいたオリーブを片手に抱き、床に降ろすと私をソファーに押し倒して上から見下ろしてくるアーロン。いつもの王子様スマイルじゃなくて、口端を上げて笑う強気な笑い方にぞくぞくしてしまう。


「声、聞かせろ。……少しでも我慢したら、お仕置きだな……」


 ちろっと舌先を出し、舌なめずりする様子にぞくぞくしながら、早く、アーロンとキスがしたい……私の頭の中はそればかりで、アーロンの首の後ろ辺りに腕をまわすと、自ら顔を近付けて唇を重ねていった。これにはさすがのアーロンも不意を打たれたようでびっくりしていたけれど、すぐに私のキスに応じてくれて甘く痺れるようなキスをずっと続けていた。どちらともなく、くぐもったような掠れたような声をもらしつつ、お互いの息が上がり、名残惜しげに唇を離してしまうまで、キスが続いていった……。

 あまーーーーいっ!!!!

 お、やっと決心ついた!?これで、許嫁、王妃候補として過ごしていけるのかしら!?きゃ、やったわね!!ただ、やっぱり仕事部屋だったから抑えるところは抑えなきゃだめだったわね!うんうん!!


 良ければ『ブックマーク』や『評価』などをしていただけると嬉しいです!もちろん全ての読者様には愛と感謝をお届けしていきますよ!

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