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四十五話 弱点は、涙

 まさかのアーロンの『俺』発言。

 こういうときって確か俺様っぽくなるんじゃなかったかしら……?


 そ、それに剣剣!ギルバートに向けるんじゃないわよ!

 ギルバートも少しは自分の剣で対応するとか、避けるとか、何かしなさいよ!!

「避ける様子も、剣を抜く様子も無しか。貴様……何を考えている?」


「……何も。ただ、第一王子様は随分と短気だなと考えているだけだ」


 あ、あわわわ!

 ちょ、ちょっと!どうするのよ、これ!アーロンなんて普段は絶対に言わないのにギルバートに向かって『貴様』だなんて言っているし、絶対におかしいわよ!えっとラインハルトは……あら、片手を頭に当てて『やれやれ』と溜め息を吐いている。ちょ、止めなくていいの!?


「ちょ、アーロン!止めなさいよ!ギルバートも!なんで、そんな突っ立っていられるのよ!」


 誰も止める様子が無いなら私が……!と二人に割って入ろうとするものの……


「女は引っ込んでいろ」


 え。

 今、今の……アーロンが言ったの、よね?なんで、そんな……普通に私の名前呼んでくれないのよ……。それに、凄く冷たい声だった。なんで、いつもみたいに笑ってくれないのよ。

 なんだか、アーロンじゃないみたい。いつもみたいに笑ってよ……私、あなたの笑い方しばらく見ていないんだから……あなたがどんなふうに笑うのか忘れちゃったじゃない。


「くくっ……王子様。女性には優しく、と教わらなかったか?コイツが今何を考えているか当ててやろうか」


 ハッとギルバートの顔を見れば悪戯っぽくニヤリと口端を上げていた。それに対してアーロンは笑みなんて一つもなくギルバートを睨み付けている。なんでその目で……私を見ないのよ!私はそういう目で見てほしいのに!!


「せっかく会えたのに、どうしてそんなに冷たいんだろう……せっかく会えたのに、どうして自分を見てくれないんだろう……ほら、コイツの顔にそう書いてあるだろう?」


「……あ……」


 ぽろっ……

 ぽろぽろっ……


 気が付いたら視界はぐしゃぐしゃで、涙は止まらないし、アーロンは私が待ち望んでいた目で私を全然見てくれないし、ギルバートもアーロンを挑発しているばかりで今の状況をちゃんと分かっていないし、ラインハルトなんて頭を抱えて呆れているし……こんなの……っ……もう、やだっ!


「きゅう?」


 私の涙が落ちて不思議そうに私の顔を見上げてくるオリーブ。もう、オリーブだけが私の癒しよ!!ドSではないけれど!


「はぁー……殿下。……ギルバート様も、その辺にしていただけませんか?」


 溜め息混じりにラインハルトが一声かけるとアーロンも溜め息を吐きながら剣を収めた。ギルバートは何事も無かったかのように腕組みしている。


「あ、あの……レン……」


「アーロンなんて、し、知りませんっ!」


 焦ってアーロンが声をかけてくれる、やっと名前を呼んでくれたけれど、しばらく私は許す気は無いんだから!とギルバートの背に隠れてしまった。ギルバートって背が高いからすっぽり隠れることができるのよね。ふんっ!


「はぁ~……レンは知らないかもしれないが、この二人は顔を合わせるのは初めてではないぞ」


 え?

 ひょっこりギルバートの背から顔だけ出すと何やら説明しだしたラインハルトをじっと見つめる。


「確かに互いの国には行ったことがないし、国の情勢もはっきりとは知らないんだろうが……二人は昔からの知り合いだ」


 は?

 なに、それ……。


「……友達、ってこと?」


「誰がこんな野蛮なヤツと!」


「友達?……考えるだけで吐き気がする」


 私がふと洩らした言葉には、アーロンもギルバートもそれぞれの言葉で返ってきた。息はぴったり、みたいだけれど。

 え、本当に?知り合いだったってこと?


「……こほん。一応言っておきますが、ギルバートの国とは友好国ではありません。が、別に敵対しているわけではありませんよ」


「だって……さっき……!」


 今にもアーロンはギルバートを殺しそうな目をしていた、剣だってギルバートに向けていたじゃない!


「……本気で殺す気があるならとっくに殺しているだろ。万が一そんなことになったとしても俺にも魔法は使えるから対処した」


「!」


 え、あの……えっと……。


「か、隠していたってこと?」


「隠していただなんて。……この人と私が気が合うと思いますか?」


「合わん」


「……っ、だったら最初っから言ってよ、バカっ!!なによ、ギルバートだってアーロンのこと知らないような口ぶりだったし!アーロンはめちゃくちゃ凄いイイ目をしていたし!そんな目ができるなら私にも向けてよっ!」


 『お前は売られて良かったのかもしれないな』ってギルバートが言っていたのって、もしかしてアーロンを知っていたからじゃないの?国民を売る国のトップなんて信じられないって言っていたけれど、それってもしかしてアーロンだって知ったうえでそういう言い方してたんじゃないの!?

 さすがにドラゴンには驚いたのかもしれないけれど、それにしたってこの場にラインハルトだけがいるっていうのもちょっと変な話よね。もしかしてラインハルトは二人のことを知っているから、アーロンは同行者に選んだんじゃないかしら!


「……でも、別に好いてはいませんし!だいたい、妃ってなんなのですか!?そこを詳しく!」


「あ?とうとう耳までおかしくなったか。コイツは俺の妃だって言っただろうが」


「レンは!?レンが承諾したのですか!?していませんよね!そうですよね、レン!!」


「うるさい……。その小竜はどうするんだ、ペットか?」


「ちょ、話は終わっていないでしょう!レンが見つかればそのまま帝国に連れ戻すつもりで来たのですよ!」


「コイツはここで暮らす!帝国には戻らん!」


「レンの意思を聞いているんですよ!私は!!」


 なんだ、この二人……。めちゃくちゃ仲良いんじゃない。きっとお互いのことを認めているけれど喧嘩するほど仲が良いってヤツなんじゃ……?


「で、妃の話は本当なのか?」


 アーロンとギルバートがやり取りしている間にラインハルトがこそっと小声でたずねてきた。


「ち、違いますよ。……妃にならないか、と誘われてはいるのですが……私はそういう存在になっちゃいけないと思っているので……」


「そうか……だが、遅くなって悪かったな。ここに来るまでにもいろいろあってな……」


 ら、ラインハルトが紳士だわ!あの強気で、騎士たちに厳しいラインハルトが申し訳なさそうに謝罪をしてくる!あ、あなたももっと俺様でいてくれて良いのよ!!


「あ、いえ……」


 でも、もう会えないと思っていたから……嬉しくないって言ったらウソだけれど……でも、まだ二人でぎゃあぎゃあ言い争っている様子を見ると、私が一人でハラハラしていたのがバカみたいじゃない。しばらくアーロンとギルバートとは口をきいてあげないんだから!ふんっ!

 な、泣いた私の涙……水分を返しなさいよね!まったく!!


「二人とも!いい加減にしなさいよ!そろそろ、うるさ……ぁ……っ!?」


「おい!」


 心配していた気が抜けたらしい私は……なんと、その場で気を失って倒れてしまった……らしい。

 一番近くにいたラインハルトが抱き留めてくれたおかげで地面と仲良くぶつかることにはならなかったみたい。でも、私が気を失ったおかげでアーロンとギルバートの言い争いも一旦止まり、帝国からお邪魔している二人と一匹は仲良くクレイン国にしばらくの間、お邪魔することになったらしい。

 あまりギルと第一王子で血みどろの争いはキツイかなと思ったときに、実はお互いのことを知っている設定で考えてみました。お互いの素を知っているからアーロンの持っている本性のドSな口ぶりにもギルは「なんでもないぜ、こんなの」みたいな感じでスルー。どっちが折れるか勝負していたのではないかと……。


 い、いかがでしたでしょうか!?もっとバチバチにやり合って欲しかった!?それは、また別の国やら王様とでやり合ってもらう……ことにしましょう!!


 良ければ『ブックマーク』や『評価』などをしていただけますと幸いです。もちろん全ての読者様には作品を書いていくという形で愛と感謝をお届けしますよ!

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