四話 帝国騎士団あらわる!!
ドラゴンが暴れていたらしいが無事に『影の洞窟』から脱出することに成功!あ、結局超ドSのご主人様に買われる機会が……なくなったってことなのかしら?
ドラゴンはさすがに人語って話せたり……しないわよね。こんなに大きな存在が超上から目線で(物理的にも上からだけれど)『人間風情が喋るな』とか言ってきたら最高なんだけれどね!!!うふふ!
って、なんだか騒がしい……さっきから『女神』『女神』ってなんのことかしら?
『女神様だよ!!』
『ほ、ほんとにいたんだ!!!』
『影の洞窟』にて『奴隷』として過ごしてきた住人たちは口々に『女神』発言を繰り返している。『女神』とはなんぞや?
さっきまで炎を噴き出しかけていたのが嘘のように大人しくなってしまったドラゴンはその場に座り、首を垂らしていた。……ちょ、ちょっと触ってみても良いかしら?恐る恐る(ドラゴンって噛みついたりするかしら?)手を伸ばすとドラゴンは特に身動きすることなくジッとしており、首部分をそっと撫でてやっても拒否ったりすることはなかった。
当然ながら触り心地は硬かったけれどね……鱗って言って良いのかしら?それもキラキラ青空に反射して綺麗だった。
それにしても異世界、そしてドラゴン。ドラゴンって最終的なボス的な存在かと思っていたけれどだいぶ序盤から出会ってしまった。このままペット……にするのは難しいだろう。故郷とか住処に戻してあげるべきなのだろうが話は通じるだろうか?
かたや『女神』『女神』と繰り返す人たち、それが分からない私はドラゴンを触ってみたり観察していた(やっぱりでかい!)『影の洞窟』の所持者である夜盗たちは大人しくなったドラゴンに安心したのか再び住人たちを『奴隷』として縛り上げようとしたとき……
「待て、お前たち!!!」
なんとも恰好良く響き渡る声が!あ、でも良く聞いてみると女性の声じゃない?
聞こえてきた方向へ視線を向けると馬に乗った甲冑姿一人を先頭に、続いて何頭もの騎馬が!!!おぉ!馬!!!お、多くない?
最初の十頭ぐらいまでで数えるのは断念した。一体何頭の騎馬がやってきたのだろう。そしてその誰もが甲冑を身にしている。『騎士』……というヤツだろうか?
「ここが違法な人身売買の地になっていることは既に把握済みだ!今から捕縛する!」
その女『騎士』が言うと馬に乗ってきたらしい『騎士』の皆々様が夜盗たちの捕縛を開始した。もちろん大人しく捕まる夜盗たちばかりではないものだから時には力づくで捕縛されることもあった。そしてあらかた夜盗たちが捕縛されると今度は私のもとへとやってくる女『騎士』。どうやらこの女『騎士』がこの団体様でお偉いさんなのかもしれない。
「ご無事で何よりでした!我らは帝国騎士団であります!預言者殿よりドラゴンを手懐ける『女神様』が夜盗に囚われているとのことでしたが……」
「……ソイツが、噂の『女神』なのか?」
話がみえないなか、どんどん新たな登場人物が増えていく。今度は誰だろう?ちょっと偉そうな感じがするが……(できればこういう人に言葉責めされてみたいものだ!)
「ラインハルト隊長!はっ!この者が預言者殿の言う者かと……」
「……汚らしい」
「……は!?」
ちょ、隊長って呼ばれた人!私のことを見て一言、汚いって……そ、それはそれで嬉しいんだけれどね!?今までずっと囚われていたんだから当たり前でしょう!?
「……が、ドラゴンを手懐けるという噂は正しいようだ。おい、女。すぐに支度しろ。お前をこのまま城へ連れて行く」
ちょっと待て待て待て!!い、いい!その言い方、人を見下したような圧!それは凄くいいんだけれど!私の恰好を見たまえ!このボロの恰好を!これで、どう支度しろと!?荷物なんてありませんぞ!!!
「……『女神様』では、こちらへ。着替えのご用意を」
「えっと、この近くに川か……湖かあったりしませんか?」
いろいろと落としたい。
というかさっぱりしたいのだ。
この際、水の冷たさは我慢するとしよう。それに……
「同じく囚われていた人たちはこれから先、どうなるのでしょうか?」
「ご心配なさらず!もちろん他の者たちも街に案内していきます」
それを聞いて安心したー……。一緒に出よう!逃げよう!と意気込んだもののここでわけもわからずにおさらば!なんてことになったら後味悪すぎるものね。
どうやらこの女『騎士』とはきちんと話ができそうだ。さきほど隊長と呼ばれていた人はさっさとどっかに行ってしまうし……もう知らん!!!俺様な感じはとーっても素敵だったけれどね!!
つー……っめたい、けれど我慢だ我慢!!!
そう遠くないところにあった川に足を突っ込むとその冷たさにぶるりと震えたが、体の汚れを落としたい気持ちの方が勝った!バシャバシャと頭から水を被れば川の流れに反射してようやく自分の顔というものも見ることができた。
ぎ、銀髪!!!
そして歳が、歳が……若返ってる!!!!え、何歳ぐらいだろう、十五?十六?ぐらいだろうか。ボロを纏っていてそれどころではなかったものの出るところは出て、引っ込むべきところは引っ込んでいるからスタイルに恵まれていると思われる。最高だな、この世界の私!
やはりべたべたしていた髪の毛は水だけでは綺麗にはならなかったものの、取り敢えず汚れは落とせた。体も冷たい水のおかげでさっぱりすることができて一安心。『ラウル』と呼ばれる女『騎士』は簡素ながら長袖と丈の長いスカートを用意してくれたのでそれに着替えた。……たぶん、どこから見ても『村人A』と思われる。が、
「『女神様』!お体は、お怪我はございませんか?」
「えっと怪我は……あ、足はずっと裸足だったので少し痛いぐらいです……」
「あ、申し訳ありません!今、履物を……」
と最後に用意してくれたのはスリッパ……ではなく、簡素な布地の靴。
よくよく見れば『ラウル』さんは金髪碧眼。部下思いなのか、それとも部下から慕われているのか両方かもしれないがすぐに部下に『女神様』への支度を!衣服を!履物を!と声をかければすぐさま願ったものが出てきた。『隊長』の次に偉い人なのかな?
よし、これで人様の前に出ても大丈夫だろう。……あ、そういえば。
「ラウルさん……えっと、さっきのドラゴンは……?」
「ラウル、で構いません。さきほどのドラゴンでしたら『女神様』が水浴びをしている間にどこぞへ飛んで行ってしまわれましたよ」
帰ったの、かな?
それはそれで良かったが、さよならの挨拶でもしておけば良かったかも。
「『女神様』は馬には乗れますか?」
「あー……っと、レンです。女神様ってよく分からないので、レンって呼んでください」
「レン様……」
「それから馬なんですが、たぶん上手く乗れる気がしないんですが……」
「では、私にお任せを!」
馬、乗馬ってこと、だよね?
したことないって!
下手な人が乗ると落馬して大怪我するって本当なのかな?
馬に乗ることさえまともにできない私。ラウルはとても手慣れた様子で乗ってきた馬の装具を調整するとまずは自分が乗り込み『どうぞ、こちらへ』と私にラウルの前に乗るよう促してきたのだ!え、そこに乗るの!?どうやって……乗れば?
「……とろい。こっちに乗れ。部下に万が一のことがあっては話にならん」
素敵俺様ボイスが聞こえてきたと思えば私をひょいっと持ち上げ(え、これってお姫様抱っこなのでは?)馬の背に乗せ、次いで自分も乗ると私を前に抱え支えながら馬を走らせていくではないか!
「ちょ、ちょっ……!!」
「黙れ。舌を噛む」
す、素敵なお声はとーっても魅力的なのですが、こ、怖い!!揺れるーっ!!!
馬が走る揺れだけでなく異常にガタガタ震えている私の様子が筒抜けだったのかラインハルトと呼ばれた隊長はぎゅっと包み込むように私の体を抱きしめつつじゃっかん馬のスピードを落としながらも走ることは止めずに目的地であろう、立派な城まで乗馬体験を満喫したのであった。
異世界モノは楽しいのですが、設定をイチから考える必要があるのでさらに難しい!でも楽しい!やっと名前有りのキャラクターを出すことができました!!
初っ端の印象ではラインハルト隊長の声と喋りそのものは主人公的には良きものだったようです!!
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