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二十五話 各々の反省会。アーロンは見抜く!!

 楽しい楽しい城下町への買い出しが……ラウルに傷を負わせるわ、貧困層と思われる住人たちからいろいろ言われるわで、大変な目に遭ってしまった。同行してくれていろいろ城下町のことを説明してくれたラウルには申し訳ないことをしてしまったな……。

「私は……騎士、失格ですね……」


 慌ただしく城に戻ってきた私とラウルの様子を見つけたラインハルトとサイモンは普段の落ち着きぶりが嘘のように大慌て。主にラウルが傷だらけだっていうのもあったのだけれど、私も頭から頬に流れてきていた血をそのままにしていたから『何事だ!?』とラインハルトは襲撃にでも遭ったのかと慌てていた。そこまで慌てなくても……ラインハルトのことだから上から目線で『なんだ、それは。出会ったばかりの頃のようだな』とかって言ってもらって鼻でフンと笑ってくれても良かったのにぃ!!あ、でもラウルが大変なのよね。すぐに手当てをしないと!

 落ち着いて手当をすることができる部屋にラウルとともに行き、私よりもラウルを優先させると凄くふさぎ込んでしまっているラウル。あれ、さっきまでの勢いはどこへ?

 消毒液と清潔な布で傷跡を拭きつつ、頭部からの出血は取り敢えず止まっているようだったので流れていた血を拭い取ってあげているとポツリと呟かれた冒頭のラウルの言葉。


「なぜ、そんなことを?」


「私は騎士なのに、レンを守ることができませんでしたから……」


「ラウルは私を守ってくれたじゃないですか!自分が傷だらけになってまで守ってくれて、強く手を引いて来てくれたじゃないですか!もし私が一人で城下町に行っていたら、きっとまだ暴れる市民に石を投げつけられていたと思います」


「……おや。楽しませるはずの買い出しがとんだ災難に遭ってしまったようですね。おかえりなさい。レン、あなたは傷は?」


 コンコンと部屋の扉がノックされると顔を出したのは笑みを消したアーロンだった。いつもだいたい何があってもにこにことしているのに全く笑顔を浮かべていないアーロンというのは珍しい。


「私の怪我はもう治ってしまいましたから」


「それは、良かった。……でも、痛かったでしょう?」


 スタスタと私のそばに来ると長い腕を私の体に絡ませてぎゅっと抱きしめてきた。

 確かに、すぐに傷は治った。でも、やっぱり石と言えど当たると痛かったなぁ……と今になって思い出すと自分を包んでくれる温もりにホッとしてしまったのは事実よ。


「す、少しだけ。でも、ラウルの方が重症ですから」


「……申し訳、ありませんでした……」


「いや、ラウルを責めるつもりは気はまったくありませんから。雑貨屋にも寄ったのですよね?エマはいなかったのですか?」


 エマ、とは?

 もしかして、あの化粧美人の店主のことかしら?


「いました。最後には『気を付けるように』と助言もしていただいたのですが……」


「レン。店から出てきたとき、何かありませんでした?どんな些細な事でも構いませんので教えてください」


 店を後にしたとき……えーっと、えーっと……スカーフが。あ!そうだわ!


「ちょっと風が吹いて髪を覆っていたスカーフが飛んで行ってしまったんです。それで私の容姿が多くの人たちに見られてしまったようで」


「風?……ふむ。きっといろいろ言われたのでしょうが、基本的には城下町には良い人たちばかりですから。今後、出かけるときには同行を増やした方が良いかもしれませんね」


 これで、しばらく外出は禁止!とかって言われるものかと覚悟していたのだけれど、同行を付ければ外出はさせてくれるのね。良い気分転換になる、とかって思っているのかしら。実際、街のなかを見て歩くだけでも新鮮で楽しかったけれど。


「殿下。……私が未熟でレンを危険に晒してしまいました。罰を受ける覚悟はできております」


「ちょ、私は何もないし!むしろ傷付いているのはラウルの方なんだから!私が迷惑掛けてしまったようなものだし……ごめんなさい」


 私が素直に俯きながら謝罪をするとアーロンは『ふぅ』と息を吐いた。


「ラウル。キミに罰は必要無いだろう。それにどっちが悪いとかって話ではないと思うのでお咎めは無しですよ。ラウルは随分と気落ちしているようだから、レンに紅茶でも淹れてもらうと良い。レンの淹れる紅茶は美味しいし、ホッとするからね」


「あ。じゃあ!お茶の準備をしてきます!」


「よろしく頼むよ」


 部屋から私が出てお茶の準備をしに行くとラウルとアーロンの間ではこんなやり取りがされていたらしい。


「よくもまぁ、レンを傷付けてくれたな……あ、ラウルには全く怒っていない。市民にも困ったものだな。まあ、誰の差し金か大方予想はついているが……」


「もしかして先ほどの暴動は人為的に行われた、と?」


「あぁ。そう考えるといろいろと辻褄が合う。それに、風だったか……ディラン皇族のなかで『風』を扱えるのは誰か、ラウルなら知っているんだろう?」


「殿下と……まさか、王妃様が?」


 うん、とアーロンは頷き『あのクソババァが』と普段のアーロンらしからぬ暴言を吐いていた。


「レンのスカーフだけを狙うなんて姑息なことをしてくれる。恐らく近くに母上もいたんだろう。そして主に貧困層の住民に『豊穣の女神』は嘘だ!『不浄な象徴』だとでも言いまわっていたのだろう。母上……いつその地位から引きずり落してやろうかと思っていたが、このままだと母上が妃という地位から落ちるのもそう遠くないかもしれないな」



 私がお茶の準備をして戻るとラウルとアーロンは変わらず談笑していた。最近の城下町の店の様子はどんなだったか、とかエマの冗談はレンには厳しすぎました、とか。

 ラウルにお茶をごちそうする予定が少し早まってしまったが温かい紅茶を用意すると『!美味しいです。本当に、美味しいです……』と感激していた。それは良かったわ。アーロンにももちろん差し出すと『相変わらずレンの淹れてくれる紅茶は絶品ですね』と賞賛してくれた。


「レン。手当もしていただきありがとうございました。私はもっともっと強くなります!あなたを守れる騎士となるように!」


「え、は、はい。でも、怪我には気を付けてくださいね」


 お茶を飲みほしたラウルは気合を入れて、これからきっと騎士としての鍛錬の時間に励んでいくのだろう。そして残った私とアーロンと言えば……


「こんなに美しいのに、石を投げ暴言を吐くなんて信じられませんね。……レン、本格的に妃の椅子に座ってみることを考えていただけませんか?この国のために」


 笑みを消し、とても真剣な顔で言ってくるものだから一瞬答えに詰まってしまった。


「でも、私は……」


「別に妃になるからと言って不自由な生活になるということはありませんよ。現に今の妃も自由に暮らしているようなものですからね」


 どう、なのかしら。あ、いろいろな意味で。それに市民たちから聞いた言葉も気になる。貧困の差が広がっているとか、税が高いとか……それなのに私が妃になれば改善されるのかしら?


「もっと正直に言いましょうか。……『豊穣の女神』と称される女。俺の妃になれ。俺を好きになるのが怖いか?恐ろしいか?俺のために生き、俺のそばにいると誓え。そうすればお前をずっと俺の愛で包んでやる」


 ゾクゾクゾクゾク!!!

 俺様アーロン様の降臨だわぁ!!!

 やっぱり良いわね!アーロンの俺様っぷり!

 もっと聞いていたい、そんな感じにさせてくれる声ね!!


 言いながらアーロンは私の顎を持ち上げて顔を近付けてきた。目を真っすぐに見つめられる。怖いぐらい真剣な顔で。


「今日は嫌がらないのか?こういうときは静かだな。まあ、いい機会だから教えてやる……」


 そう言い終わるや否や、すぐさまアーロンは唇を重ねてきた。しかも一度離してはすぐに再び唇を合わせるという行為を何度も続けてきた。頭のなかはパニックだけれど、俺様アーロン様に私のなかのドMは歓喜に震えて興奮しているし、何度も口付けてくるアーロンに体を固まらせることしかできなかった。


「お前は俺のものだ。他の者に傷付けられるなよ……お前に傷を付けて良いのは俺だけだ」


「んっ……アーロ、ン……っ……」


 何度目かになる口付けを受けているとだんだん呼吸が苦しくなってきてアーロンの肩を引き離すように抵抗を試みるとようやく口付けは止み、荒い呼吸を必死に整えた。そんな私を見ながら『レン、愛していますよ』と甘く囁いてくるものだから、どっちが本当のアーロンなの!?と頭がぐるぐる回り、頭を抱えたくなってしまった。

 たくさんされた口付けによって唇がひりひり、ジンジンするような感覚になりながらちらりとアーロンを横目に見るとニコリと王子様スマイルを向けられるばかりだった……。

 許すまじ、良い人たちを傷付ける者!!!まぁ、あの人の差し金だったのでしょう!!アーロンは分かってますとも!!!


 そして、主人公チャンと一緒にドキドキしていただけましたかな?ドキドキしてください!もっとドキドキさせていくのでドキドキを楽しんでください!!


 ちょい変わったタイトルの当作品ではありますが、見守っていただけますと幸いです!良ければ『ブックマーク』や『評価』などもしていただけると嬉しいです!そして全ての読者様に愛と感謝を!!

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