二十一話 あ~ら不思議!ちっちゃくなっちゃった!
さて、いろいろ問いかけたいところはあるけれど、この子……ドラゴンはどうするのかしら?すっかり大人しくなって暴れる様子は微塵も感じないものだから騎士団たちも武器をおさめてしまっている。サイモンはこんなに近い距離でまじまじと見られるドラゴンに興味津々といった様子ね。
……ドラゴンって、飼えるのかしら?
長い長~いドラゴンの首を『よしよし』と優しく撫でてあげればまんざらでもなさそうなドラゴンに一安心。魔物の頂点に存在しているドラゴンだからもっと怖い、恐ろしい、ってイメージがあるかと思っていたけれど……こうしていると和むわね。私があまりにも普通にドラゴンに接しているものだからいろいろと博識であるサイモンも『触れても、大丈夫なのでしょうか?』と興味を示したみたい。新しいおもちゃを見つけた子どものように見えてしまって微笑ましいわ。
「あ、そう言えば……」
ドラゴンは落ち着いたから城も何事も無く無事。となれば、先ほどのアーロンの発言をどうにかさせた方が良いかもしれないわね。現王様と王妃様を退かせ、自分が玉座に座る!的な発言をしていたことだし、アーロンは遅い反抗期でも迎えたのかしら。でも、あんな王様や王妃様には仕えたくはないわね。一日仕えたところで反旗を翻してしまうかもしれない。
「アーロン。さっき、私を王妃様の地位に座らせるとかって言っていませんでした?」
「おや。バタバタしていたのですっかり忘れられてしまったのかと思っていましたが、覚えていましたか。ええ、確かにそう言いましたね。あなただってあんな二人が治める国など嫌なのでは?だいたい治めているほどの仕事をしていませんし」
仕事はほぼアーロンが担っているんだったわね。王様は王妃様の態度に弱腰だったし、気が弱いのかしら?王妃様は高飛車できっと城下に住む市民たちのことも『平民風情が、小生意気ですこと!』とかってSっ気たっぷりになじっているんじゃないかしら。……あ、それ、ちょっと良いわね。
「まあアーロンでしたら仕事に集中してくれて良いのかもしれませんが、そこでなぜ私を隣に座らせるんですか?」
「他にいないでしょう。私の隣に相応しいのはレンだけですよ」
そうしてニコリと王子様スマイルを向けてくるアーロン。うん、確かに市民にも配下たちからも好かれそうな王様になるでしょうね。残念ながら私のタイプでは、まっっったく、ないのだけれど!どうせだったら……『跪け。俺に忠誠を誓え。そうすれば生かしておいてやる』ぐ・ら・い・の!超ドS様俺様風王様っぽく言ってもらいたいわ!!キャッッッ、素敵ね!!!
「ですが、まずはこちらをなんとかしなければ」
と言いながら見上げたアーロン。視線の先にはもちろんドラゴンが。そうね……大人しくなってくれたことには安心したけれど、そこからまたどこかへ飛んでいくフリが見られないのよ。寝床に帰るとか、住処に戻るとか、しないのかしら?
「そもそもドラゴンの住処ってどこにあるのですか?」
「あぁ、ドラゴンたちは住処をたびたび変えてしまうので一定した住処というものはありませんよ」
片眼鏡がキラリと光るサイモンは独自に集めてきたであろう知識で説明してくれたの……だが、それではどこに帰れば良いの?
「さすがにこのまま中庭を独占させるわけにはいきませんしねえ」
「サイズの問題ですか?う~ん、このサイズのドラゴンも恰好良いですが、こう……小さくなってくれると可愛らしくてそばに置けるかもしれませんね」
と、言った私がいけなかったのか。もしかしたら本当に帰る場所を忘れたか、失ってしまって私にヘルプを出したのか分からなかったのだけれど、急にドラゴンが光を放ち始めた。そもそもドラゴンが大きいサイズのため放つ光も大きい!しばらくの間、誰もまともに目を開けることができなかったわ。
で、光がおさまりようやく目を開けられるようになっていくとそこには……
「か、可愛いですねぇ!」
「え、さっきのドラゴン……ですよね?」
なんと小さくなってしまっていた。存在が『巨大』から『極小』への変化に。光とともにどこかへ消えてしまったのかと思ったが地面を見れば、いたわ!
女の私でも両腕で抱えれば持ち上げられるほどのサイズになっていたわ。しかも、キリッとしていた鋭い眼差しは小さくなったことで、つぶらな瞳になって可愛らしさが増した。ごつごつキラキラしていた体は柔らかく丸っこいフォルムになってしまって更に可愛らしくなってしまった。小竜、とでも呼ぶべきだろうか?欠伸をするために大きく口を開ければ鋭い牙、ではなく、まだ生えそろっていない歯や犬歯のようなものが並んでいた。抱き心地サイズが最高のぬいぐるみサイズじゃないの!!ぬいぐるみは小さすぎるとダメだのよ、ほどほどに大きいぐらいがちょうどいいの!抱きしめたときが気持ちいいじゃない!
「ほほほ!まるで女神殿のそばから離れたくないとばかりに化けたみたいですなぁ」
え、そうなのかしら?でも私の言ったタイミングに合わせて光りはじめて、見た目が小さく。なんとも愛くるしい見た目に。ど、どんな力?能力?を使ったのかしら?見た目をこんなに変えてしまうだなんて。
「あ、アーロン……こちら、どうしましょう?」
「私に聞かないでください。だいたい……ドラゴンを従えるのは女神だけなのですから……一般的な躾がドラゴンに通じるかどうかは分かりませんが、あまりやんちゃにはならないよう躾てくださいよ?」
飼うのか!城で!
確かに飼いやすいサイズには変わったものの、それでも一応ドラゴンよ!?良いの!?だいたいドラゴンって何食べるの?ドラゴンってMなの?Sなの!?……っと、ちょっと話が脱線しちゃったわね。
「へぇ~。ドラゴンと一緒にいると、ホントに『豊穣の女神』っぽいねぇ~。まあ、実際そうだと思うけれど~」
小さくなったドラゴンの頭をよしよしと撫でていくフラン。さすがに大きいままだと触ることに躊躇していたのかもしれないわね。小さくなると手を出したくなる気持ち、分かるわ!
小さくなったドラゴンも先ほどまで『ギャォォォ!』って鳴いていたのが嘘のように、『キュウキュウ』鳴いている!か、可愛いっっっ!!!!
「名前……さすがに『ドラゴン』だと他の個体があらわれたときに区別がつかなくて大変ですよね。名前は付けますか?」
「レン……そんな目をキラキラさせながら聞かないでください。ご勝手にどうぞ」
「それじゃあ……『オリーブ』!どうでしょうか?」
ただ愛くるしく見つめてくる小竜の瞳が緑色っぽくてきれいねぇっと思っただけじゃないわよ。ドラゴンに性別があるのか分からないけれど、この名前ならオスでもメスでも通じそうじゃない?
「良いんじゃないですか?呼びやすいですよ」
さすがに元いた世界で昔ながらのペットに付ける『ポチ』とか『たま』なんて名前を付けるわけないじゃない。ここは異世界なのだから。
優しく『オリーブ』と呼んであげると『キュウキュウ』と鳴いてくれて反応を示してくれる。どうやら小竜もといオリーブも気に入ってくれたみたい。
「ほほほ!小竜を従える女神ですか。いやはや、世はまだまだ安泰のようですな」
相変わらず深くフードを被っているせいで表情をはっきり見ることはできないのだけれど、預言者様はそれはそれは嬉しそうに、そして楽しそうに笑っていた。
ドラゴン変身!!……可愛く、ちんまりと!大きかったときのエネルギーはどこに行ってしまったのでしょうねぇ?空気?それこそ、魔法使いたちが使っている魔力の元とかになっていくとするといろいろ面白い!!実に面白い!!
最近は、この後書きがちょっとしたネタになっていることもしばしば(汗)でも内容をしっかり読んでみないとどうなるかは分かりませんぞ!!
ちょっと変わったタイトルの当作品ではありますが、探したいものもあり、王制はどうなるのか?見守ってあげる~という方『ブックマーク』や『評価』などしていただけると嬉しいです!もちろんそんなものは無くたって全ての読者様に愛と感謝を!!!