二話 『奴隷』生活大歓迎!!……にしても、ここは何処かしら?
不意に聞こえた神様の言うことに気分を良くしてしまった私は気が付いたら『奴隷』として存在していた。
『奴隷』ですって!?大歓迎じゃないの!
私、『奴隷』生活を満喫します!!!
どうやら私が住んでいたらしい村が夜盗の襲撃焼き討ちに遭い、私は人身売買にかけられるため(人身売買って犯罪なんじゃ?)今は『奴隷』として捕まったらしい。同じ部屋にも捕まったらしい人たちの姿があちこちに見られるがあまり元気がなさそう……。
え、下手したら死んじゃうんじゃ……?
この世界は貧困問題とかが多い異世界だったりするのだろうか?
そして今日も……『奴隷』への手痛い時間がおとずれる。
「おい、起きろ!」
ベシッ!!!
「った~……とっくに起きてるわよ!傷物にしないんじゃなかったの!?叩くのは止めてよね!」
言葉責めは多いに結構、ドS様からの他人を見下すかのような言葉なんてもっとして欲しいぐらい、だけれど……暴力は止めてほしい。
「ああ!?てめぇ、奴隷のくせに生意気言ってんじゃねぇぞ!チッ、こんな生意気な奴隷なんて拾わなきゃ良かったぜ……ほら、食え!」
男の手にはパン。でも手を縛られているからパンに手を伸ばすことができない。どうやって食べろと?
「なんだいらねぇのか?これからお前も売り物になっていくんだから餓死されちゃ困るんだよ!」
そう言いながらグイグイとパンを私の口元に押し付けてくる始末。ま、待ってよ!食べる、食べるから!だからそんなに無理やり押し付けないでよ!!
「ぐっ……ごほっ、ごほ……んぐ……っ!」
大して美味しいとは感じられないパン。でもお腹が減ったり、餓死するというのは当たり前にあるみたいだ。異世界に来たことでそういう人間らしさというものは少しは緩和されるかと思ったけれどそういうわけでもないみたい。
必死になってむせながらなんとかパンを飲み込むと満足した様子の男。
「よーしよし、最初っから素直にしておけば良いんだよ。お前はただでさえツラが良いからなぁ。高値で売ってやる。せいぜい良いご主人様の元へ行けるように手伝ってやるよ」
ぎゃはは!と下品に笑っているが売られるのか私は。このままずっと『奴隷』でいられるわけでもないみたい。期待をするのは私を買ってくれるご主人様が超ドS様であることばかりを祈る!!
「けほ……なーんだ、じゃあ私『奴隷』生活ともおさらばなの?『奴隷』生活って憧れていたんだけれど大したこともなさそうなのね」
と、ついつい男の前で呟いてしまったものだから男の何かを切らせてしまったらしい。
「おい、女。いい気になってんじゃねぇぞ?お前、売られるんだぞ!?売られたらどうなるか分かってんのか?少なくとも今の生活よりはマシになるんだぜ?」
「売られたらどうなるかは分からないわよ。でもこの今の生活よりも激しい生活の方が私としては嬉しいかぎりだわ!」
「は?頭イかれてんのか、コイツ?」
『奴隷』生活とはいっても、ちょっとした食事は与えられるし、別に何かされるってわけでもない。『奴隷』生活を時間にしてどれぐらい送っているのか分からないけれど退屈してきてしまった。そんな私の態度に頭がおかしいヤツ、と思われてしまったらしい。男は顔を引きつらせながら去って行った。するといつの間にか近くに寄ってきていたらしい同じ部屋の住人が恐る恐る口を開く。
「あ、アンタ……もう少し静かにしていないと、ホントこの先どうなるか分からんぞ……?」
「なんでよ?だいたい一応最低限の衣食住は与えられてるんだもの。むしろ『奴隷』っていうぐらいだから痛めつけられるものばかり、虐げられるものばかりと思っていたけれど痛めつけたら商品にならないのね……そこは納得だわ」
「は?はぁ?アンタ、そんな性格だったか?もう少し大人しかったような……?」
もしかして私がこの異世界にやってくる前に、私というキャラクターが存在していたのかもしれない。どうやら私はそのキャラクターのなかに入ってしまったか、もしくは憑いてしまったのかキャラクターとして性格はもともとは違う風だったようだ。
「私は私よ。ねぇ、それよりも。この世界についてお話してよ。……私、頭を打ったみたいで忘れちゃってるみたいなの」
上手いこと記憶喪失というネタを使って未だによく分かっていないこの異世界のことについて説明を求めた。
この世界は『オール・ド・ブリタニア』と呼ばれている。いつの時代も戦争が起こり、魔物も存在していた。人間たちは剣術を磨き、魔法使いたちは人間離れした魔力を用いることによって魔法を自由自在に使用し魔物を脅威から退けていた。
そして今私たちがいるのは『影の洞窟』と呼ばれている夜盗の住処の一つ。主に夜盗たちの住居と襲撃や焼き討ちしてきた場所から売り物になりそうな『奴隷』を主に引き渡すまで保護しておくような場所。もちろんお金でのやり取り。
人身売買は普通におこなわれているそうだ。それは悪い意味だけでなく国を発展、より豊かに、そして新たな知識や考えを取り入れていくため。もちろん悪い意味の人身売買になると人をオモチャにすることが大好きな変態さんによって買われ、虐げられる生活に陥っていくのだとか。それはもちろん死ぬまで。
なるほどねぇ。
剣や魔法……完全なるファンタジーな異世界だわ。ゲームとか漫画とかで魔法に憧れたことはもちろんある。でも、今の私の設定的に魔法は使えるのだろうか?もし使えるのであれば夜盗に捕まったりはしないはずなので望みは薄いかな?
「アンタはまだ若く、頭も良い。だから大人しくしていればもしかしたら帝国に売られるチャンスがあるかもしれない。……だから大人しくしていた方が……」
帝国に売られるってことは、つまり良い意味の方の人身売買に巻き込まれるってことよね。それは超ドS様との出会いが遠のいてしまうことに!!そ、それは嫌だ!!
「そんな!私は、もっと……なんていうか、こんな生活とはおさらばしたいけれど、あなたたちだって置いていけないもの!ここから出るときは一緒に出るべきよ!」
「アンタ……」
え。変なことを言ってしまっただろうか。私は超ドS様に会いたくて人身売買を心待ちにしているのだけれどなぜかしくしくと泣き始めてしまった住人。
「こんな状況でも他人のことを考えてくれるんだなぁ……優しいよ、アンタ……」
よくよく耳を澄ませば私の言葉は他でぐったりとしていた住人たちの耳にも入っていたらしくどこからともなく泣き声が聞こえてくる。いや、ごめんね?あなたたちを勇気付けるつもりで言ったわけではなかったんです!
「や、優しくないわよ!……私には出会いたい人が……」
「帝国の王様か?」
「王様?」
「あぁ、今の帝国は王様が仕切っているらしいんだが実際はその息子が取り締まっているらしい。心優しい国民想いの方だそうだ。……もしそんなお方に出会えたらなぁ……噂によると許嫁もその候補も決まっていないらしいから、アンタに運が向けば最高の生活が待ってるかもなぁ」
「ちょ、やめてよ!私はそんな生活には夢みていないの!それに夢みる時間があったらできることをしましょ!ほら、今日はみんな体調はどうなの!?」
この『奴隷』生活がはじまってからおこなっていること。自分と近くにいる住人たちの体調管理。それぞれ鎖だったり縛られていたりするからすぐそばまで行って様子を伺うことまではできないけれど……これは元いたときからの癖みたいなものだ。体調が優れないときに(仕事先は『Mの屋敷』)に限って超ドS様が来店!!なんてこともあったりするのだ。体調はいつでも万全にしないとね!
『超ドMは超ドS様に会いたくて…』お送りしております!
異世界要素……ちょっとずつみせることができたでしょうか?観る(アニメ)も読む(本)も楽しい異世界モノ!これからどうなるのかお楽しみに!!
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