十六話 魔法が、魔法が見たいです!!
ドラゴンとはしょっぱなから出会ってしまったし(あれ以来会えていないけれど)騎士団たちの厳しそうな訓練もみられた!
だったら次はコレしかないわね!!
「魔法が見てみたい?」
「はい!アーロンたちは魔法は使えたりしますか?」
第一王子であるアーロンの仕事部屋に顔を出した私。挨拶もそこそこに、この異世界にいるからこそ見られるものを堪能してやろう!と考えたの。アーロンも日々の雑務があるだろうから忙しそうだと思ったら即退散つもりではいたのだけれどちょっと一息吐いているっぽかったからお邪魔させてもらったわ。もちろんこれを機にアーロンと仲良くなれたらとも思っているわよ。(王子たちと仲良くなること=超ドS様に近付くことができる、との助言もいただいたので!)でも、アーロンは渋い顔をして溜め息を吐いてきた。
「一応……王族に関する者たち、貴族たちは魔力が優れている者ばかりですからね。ただ、そんな見世物にできるようなものではありませんよ?」
「えっと……そ、そうそう!私も魔法が使えたらいざってときには役に立つかもしれないじゃない?」
今のところ『豊穣の女神』伝説に登場する『女神』がどんな力があったのか、どんな能力を持っていたのかははっきりしていないの。もしかしたらとんでもない魔力があったとか!?だとしたら私にも魔法って使えたりするのかしら!?でも、どんなに念じてみても(部屋でこっそり試してみたわよ)魔法らしい魔法なんてちっとも出せなかったわ……。特別な呪文とか必要なのかしら?『燃え上がれ!』とか『吹き荒れろ!』とか?
それとも『女神』は魔法が使えない存在なのかしら?
でもせっかく異世界に来たのだし、もしかしたらとんでもないパワーが付属されているかもしれないじゃない。
「レンは魔法を使いたいのですか?」
「そう、ですね。使えるものなら使ってみたいです」
「魔法は知識云々があるから使えるわけじゃありません。昔は精霊と契約した者が魔法を使うことができたなんて言われていましたが、それは嘘ですね。コツとしては……存在をきちんと理解し、把握する、というところでしょうか」
えーっと……つまり?
わっかんないわよ!それじゃあ!!理解?把握?どうやって!?
「私が使うのは風の魔法なのですが……レンは『風』と聞いたときどのようにイメージしますか?」
「風ですか?ビュォォオオって吹いて、吹き飛ばすイメージがあります」
い、イメージだから!そう!あくまでイメージの一種なのよ!……このときは、たまたま上手い言葉がみつからなかっただけよ!
それなのに私の言葉を聞いたときのアーロンってば『ふふっ』と失笑していたわ。は、恥ずかしい……。
「まあ、それも一つの考え方なのでしょうね。……風は、どこにでもある。風が無い世界なんて有り得ないでしょう。そして強い風になればどんなものでも吹き飛ばし強大な力となる。弱い力、ほどほどの力で吹いている風に身を預けてみればとても心地良く感じませんか?」
「つまり、強いときの存在と弱いときの存在を意識するってことですか?」
「それが理解、そして把握するということに繋がります」
な、なるほど……少しずつだけれど分かってきた気がするわ!
『理解』だとか『把握』って小難しい言葉を使わない方が分かりやすいわよ。
「そして人それぞれに使える魔法の属性というものは調べてみなければ分かりません。私の場合は、火の属性はまったく使えないようですね。こればかりは生まれだったり、人が本来持つ素質といったものに左右されるのかもしれません。弟のフランは私とは逆に風の素質は皆無のようでしたが火の素質はありますよ」
調べるもの、なのね。
えーっと、現代で言うところの病気を未然に発見するって感じかしら。ほら!病院に行って検査をすれば生まれ持ったアレルギーが分かったり、かかりやすい病気が分かるでしょう?
おぉ!そう考えると分かりやすいわね!
「ちなみに、その調べ方というのは?」
「この前会った預言者の彼が調べてくれますよ」
あぁ!あの預言者様!
ちょーっとばかし意地悪な言い方をしてくるところもあるけれど、なかなかに面白い方だったしお会いしたいと思っていたのよね。
今、どこにいるのかしら?
また、ふらふらと散歩をしていると思うのだけれど……。
「でも、いきなり魔法だなんてどうしたのです?」
「え。だってふぁんたじ……いえいえ、魔法で身を守ることもできるかなぁと思いまして」
「レンのことなら私が守ってさしあげますが」
ん?
なんか似たようなことを以前にも言われた気が……ってラインハルト隊長からか!
そんなに私って頼りなく見えるのかしら?私だってせっかくファンタジー世界に飛ばされてやってきたのだから魔法も使ってみたいわよ!
「レンは私の許嫁候補の一人。ゆくゆくは王妃候補として共に過ごしていきますからね。あなたが魔法を使った反動で体に悪影響が出たりして体が弱ったりでもしたらどうするんです?周りの者が悲しみますよ?」
うっ、また出たわね。許嫁、王妃って話!
いい加減諦めるって辞書はアーロンの頭の中にはないのかしら?
「あれ、アーロンは悲しんだりしないのですか?」
私がそうたずねるとアーロンはおもむろに私の髪に手を伸ばしてきた。私の長く銀色の髪を梳いては己の口元へと運んでいく。さすがに髪の毛にリップ音は鳴らないものの唇を当てて愛おしそうに目を細めて口付けているらしい。
シていることは完璧王子様なのだけれど……ちょっと変態っぽくないかしら?
「……当たり前なことを言わせないでください。私は、今この時だってあなたに何かあったらと不安なのですよ?この美しい髪、美しい肌を持つレンだから、魔力の消費はお勧めしません。私に興味を持っていただくことは大変嬉しいのですが……あぁ、そうだ。以前仰っていた仲良く過ごすこと、試してみますか?何も怖いことはありません。その身を私に預けてくれれば良いのですよ」
こ、これは……変態モード入っているんじゃないかしら!?
そろそろ止めた方が良いわね。
「アーロン……っ……ちょ……?!」
いつぞやの時のようにその金髪の頭部をバシッと引っ叩いてやろうと片手をあげたが簡単にアーロンの手に捕まって止められてしまった。
あ、あららら!?
しかも、全然腕動かせないじゃない。
「……悪い手だな。もしかして拘束される方が好きか?」
へ?あ、あの……アーロン?なんかいつもと話し方が……。
「拘束が好きだなんて変わった女だな。……くくっ、だがこれほどまでに強気な女は珍しい。正直、そのドレスを破いてお前の肌を見てみたい。あぁ、魔法が見たいんだったか?『俺』の風でドレスを切り裂いてやろうか」
ど、どどどどどd!!!!
どうしたのかしら!?あ、あああアーロン!?
すっご、超俺様じゃないの!!!
わ、笑い方も超ドストライクぅぅぅ!!!
『俺』だって、『俺』だってぇぇぇ!!!
ま、ま、まっ……どうしよう、凄く凄くステキィィィ!!!!
絶対に今の私の顔、真っ赤よ、真っ赤!!
でも、それを待っていたのよぉ!!もっと、もっと仰ってくださいぃぃ!!
「目を、閉じるなよ」
ひぃああぁああああ!!!
アーロンって超俺様になることもできたのね!?
夢じゃないのよね!?現実よね!?
さ、最高っっっ!!!
何かアーロンの気に障ってしまったのか、それとも触れてはいけない部分でもあったのか、突然の超俺様アーロン様が降臨なされた。私は感激感動するばかりで、アーロンの言う言葉に何度も何度も頷くことしかできなかった……。
俺様アーロン様を主人公チャンの前で出すか、出すまいか……悩んだのですが、ついにお披露目!?こ、このまま主人公チャンはどうなってしまうのでしょうか!?
主人公チャンとともにドキドキわくわくしていただけたら幸いです!かなーり変わったタイトルではありますが、見守ってあげる!っていう方ございましたら『ブックマーク』や『評価』などしていただけると嬉しいです!でも、まだダメー……とSな読者様でも嬉しいです!!全てのお読みいただいている方に感謝を!!!




