十五話 訓練所にやってきました!剣はやっぱり重いようです!!
サイモン様の授業は最高でしたわ!!(サイモンから受ける叱咤や厳しい目といったものが)
ただー……授業の内容はほとんど覚えていないのよね。だ、大丈夫よ!きっと!うんうん!
そ、そう言えば昼間ってラウルたちはどうしているのかしら?お手伝いさん風の恰好をしていたし、まさか城内のお掃除かしら!?個人的には授業よりも(サイモン様は素敵でしたけれど!)お掃除の方が良いわよ!
サイモンから受ける授業に身が入らず……だ、大丈夫よ!今時歴史がどうこうってお喋りするご婦人方がいるかしら!?作法だとか所作だとかっていう話はタメになったのだけれどそれ以上に心惹かれてしまったのはサイモン様の厳しいお言葉だったり、お声だったりしてしまってほとんど頭に入らなかったのよ……だ、大丈夫だって!作法なんてものは他人のものを見て盗んでいけば良いのだから!!
サイモンも私の集中力の無さに気付いたのか『ここまでにしておきましょうか』と呆れて終了。
そして私は今、ラウルの姿を探していた。
騎士としての彼女はとっても恰好良かったわ!でも、城のなかではお手伝いさん風の恰好をしていたのよね。今はお手伝いさんとしてお城のなかで過ごしているのかしら!?だったら手伝えることがあれば手伝うわよ!
っと、城内を探していればキィィン!と耳に残る金属音が。これってもしかして剣を使った訓練ってヤツなのかしら!?み、見てみたい!ファンタジーものの剣のやり取りなんて元いた世界ではアニメぐらいでしか見られなかったものね。
どこかしら?と剣の音が響く方向へと向かって行った。そこは中庭とはまた違い、騎士たちの訓練所となっている広場があった。そこには騎士団隊長でもあるラインハルトや軽装ながらも鎧を身にまとっているラウルの姿も発見!良かった!ラウルはこちらにいたのね!
「ラインハルト隊長ー!ラウルー!お疲れ様ー!!」
「「!?」」
私が声をかけるとびっくりしたように私の方へと顔を向けた二人。……そ、そんなにビックリしなくても……なんだか悪いことをしてしまった気分だわ。
「レン!?ど、どうしました!?」
「最初はラウルを探していたのだけれど、訓練している音が聞こえてこちらに来ちゃいました!」
「……お前には訓練など無用だろう?怪我をしないうちに戻れ」
「えぇ!?せっかく来たのだし、少しぐらい見学させてください!」
渋々ながらもOKを出してくれたラインハルト。キツそうに見えるのは鋭そうな目だけで性格は結構優しいのね。でも、そこで……『下がっていろ、グズ女。怪我をしたくないだろう。邪魔だ』と言ってもらえるのも良かったのですがね!!うふふ!
ここでは剣術の訓練所になっているみたい。
できれば魔法の訓練といったものも目にしてみたい気持ちはあったのだけれど、これはこれでなかなかに見応えがあるわ!
基本的には一対一による剣術の訓練。木刀みたいなもので訓練することもあれば、刃が人を切れないように刃を潰してから剣を使っての訓練もあるみたい。す、凄いわ!そしてなにより凄いのは訓練している騎士のほとんどが男性なのに、そのなかに数少ない女性がラウル!女性ながらも男性に力も剣術の腕も負けていないのよ!凄い凄い!恰好良いわ!!
「……おい。……おい、レン」
はっ!思わず騎士様たちの訓練に見入ってしまっていてラインハルトに話しかけられたことにすぐに気付かなったわ……いけないいけない。
「な、なんでしょうか?」
「お前も剣術に興味があるのか?」
へ?えーっと、それは『興味があるか?』と聞かれれば、『はい』と答えるしかないでしょう!だって恰好良いじゃない!
「その細腕では剣すらまともに持てないだろうが……これならどうだ?」
そう言うと木刀を私に差し出してきた。え、私にやれ、と?
『オーホッホッホッ!跪きなさい!そして私の言うことは絶対よ!!』と木刀を構える私の姿をイメージしてしまった。……これは女王様、とは違うわね。なんだろう、これは……学校のスケバンみたいな感じかしら?
って、あら、あららら!お、重いのね木刀って!おっとっとと!両手で持ってもまともに動かせないわね……っ、この!
「っ!こ、これでも十分大変そうですね……っ」
「これぐらいで音を上げるようでは、剣術など百年早いな」
フン、と可笑しそうに上から目線で私を見下ろしてきた。
あ、い、いいですぅぅぅ!
その上から見下す目線!!!!
ただでさえ背が高いラインハルトから見下ろされる感じ!
最高ですわぁぁぁ!!!
「それに……お前のような白魚のような手に剣は似合わん」
し、白魚……?しらうお??え、え?一応、褒め言葉よね?それって。私の手ってそんなに頼り無いように見えるのかしら?でも、彼もそういう……えーっと、女性が言われて喜びそうなセリフっていうものを知っていたのね。そこにビックリだわ!
「あ、ありがとうございます?……でも、危険なときには自分で自分を守れるようにはなりたいですよね」
「お前のことは殿下たちが守ってくれるだろう。俺たち騎士団もいる」
「それは、そうなのですが……」
なんだろう。この世界だと、か弱い女性は男に守られるものだ、的な価値観とか考えがあるのかしら。嬉しくないわけじゃないのだけれど守られるばかりで良いのかしら?女だってやるときにはやらないと!
「あ、でもラウルは?女性なのに……かなり強そうですよ」
うんうん。さっきから訓練の様子を眺めていればラウルより優れている騎士たちはいないんじゃないだろうか。むしろラウルは訓練している騎士たちに向かってあれこれと指示を出しているようだ。
「ラウルは幼い頃から剣術を学んでいたんだ。そこら辺の男では相手にならん」
へぇ!家庭環境か、もしくは小さい頃から剣術を学ぶ機会でもあったんだろうか。でも訓練しているラウルも、騎士たちにアドバイスらしき言葉をかけているラウルもとても素敵だと思う。自分のことばかりじゃなくてきちんと周囲にも気を配っているところが。
そういう隊長さんは……あら、いけない。私が独占してしまっていたわね。ごめんなさいね、騎士の皆さん!!!
「あの、そろそろ……
「!レン!!」
ラインハルトも訓練の方に戻られては……と言いかけたときだった。ヒュンッ!と風を切るような音がしたと思ったら私の足元にザクッッッと剣が突き刺さったのだった。あ、あっぶな……っ……さすがに肝が冷えたわね……。
「怪我は……無さそうだな?」
私の顔色を伺うラインハルト。こくこく頷き返せば彼は突き刺さった剣を地面から抜き取ると鬼の形相になって訓練している騎士たちへと振り返った。
「もう少しでこの女に剣が刺さるところだったが?中途半端な気持ちで訓練をしているから気が抜けている!……で、この剣の持ち主は……誰だ」
ひゃぁぁぁぁあ!!!!
つ、冷たい、氷のような声!!!
今、ラインハルトの眼差しを見ることができたのなら私は気絶できる自信があるわぁぁ!!
決して大きな声で怒鳴りつけているわけではないというのに身震いしてしまうかのようなラインハルトの冷たい声に私のなかのドMが歓喜してしまった。クールな彼が怒ったときに発する氷のように冷たい声も最高ね!ずっと聴いていたいぐらいだわ!
慌てて近寄ってくる騎士二名。彼らの顔は青くなっていて、ラインハルトの怒りの眼差しを直に浴びているのだろう。なんっっって羨ましいのかしら!
「「も、申し訳ありませんっっっ!!隊長!!!女神様!!!」」
「……あ、怪我が無かったので大丈夫ですよ」
「怪我の有無ではない!たるんでいる。しばらく貴様らは剣を手にするな。走り込みをしてこい」
きっつ!!
でも、有無を言わせない圧の強いラインハルトってやっぱりイイわぁ~!!!
騎士二名は本当にしばらくの間、剣を持った訓練が許されることはなく、他の騎士たちも同じ目には遭いたくないとばかりにより一層の気合を入れて訓練を再開していた。私は本当に何事も無かったのだけれどそれからはラインハルトのしごきがはじまったとか。
しごきですって!?
わ、私が受けてみたいわよぉぉぉぉぉ!!!
ラインハルトは怒りMAXになると逆にイライラをぶつけるのではなく、静か~に怒りを伝えるのかなぁと思いました。
剣術も出せましたし、そろそろ魔法の一つや二つも登場させたいものです!事件は、何か起こらないでしょうか!?
少々変わったタイトルながらもお読みいただいている方には毎度毎度感謝を!!超個人趣味の入っている作品ですが、少しでも誰かに共感だとかこのキャラクター面白いなと思っていただけたら幸いです!!
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