十四話 授業の先生はSな女王様でした!
ちょっと意地悪なところもあったけれど預言者様からは私が超ドS様に近付くための助言をいただくことができたわ!!
うふふ!これで私が超ドMとして超ドS様に従属する日もそう遠くないってことよね!そう考えると口元が……うふふ、楽しみでニヤけちゃうじゃないの!もう!
さあ!これからは王子様たちと仲良くしていくわよ!……ところで、仲良くするって何をしたら良いのかしら?
「アーロン王子!フラン王子!さあ!仲良く過ごしましょう!!」
私は預言者様からいただけた助言(王子様たちと仲良くすることが超ドSに近付くための近道らしい)に気合を入れて王子様たちと仲良く過ごすべく胸を張った。
「……アーロン、とお呼びください。だいたい仲良くって……私には日々の雑務……仕事もあるのですよ?」
「へ?」
「う~ん……僕もできることなら仲良く過ごしたいんだけど~……やることがあるんだよねぇ~」
「は?」
ちょ、ちょ、それじゃあ仲良くできないじゃない!
せっかく良い助言をいただけたっていうのに、これじゃあ意味が無いわ!
「えーっと、えーっと……でしたらアーロンの仕事のお手伝いでもしましょうか?フランのやることも雑用係が必要でしたらお手伝いしますし」
「お言葉は大変嬉しいのですが、特に必要ありませんね」
「僕も~」
ま、待ってよ!どうすればいいのよ!?
「それに私たちと仲良くなりたいのでしたら未来の王妃、もとい許嫁候補としてそちらの勉強をなさったらどうです?」
「それって仲良くすることと関係があるのでしょうか?」
「レンが~、所作とか礼節とか学んでくれたら~社交界に連れて行けるよねぇ~ってこと」
社交界?
……もしかして、王子様たちと仲良くなる=社交界デビューを果たす!つまり、超ドS様との出会いが待っているってことかしら!?
「わ、分かったわ……淑女の嗜みというものを勉強してみます」
私が渋々頷き返していくと王子様方は二人揃ってニコニコとした笑顔を向けてくれた。あ、やっぱりこういう笑い方は二人ともそっくりなのね。さすが兄弟だわ!
さて、所作とかマナーとかっていうのは専門の教師だとか講師がいたりするのかしら?アーロンの方はともかく、フランにもそれが備わっているのか?って聞かれると今のところちょっと怪しいのだけれどいざ社交界に出たらフランの様子や雰囲気といったものもガラリと変わったりするのかも?
アーロンはご自分の仕事部屋へ。そしてフランは、何やら出かける支度をすると一人城から出て行ってしまった……は?
ちょ、フランも一応王子様なのよね!?そう簡単に城の外へ出て行ったりして良いものなの!?それとも事前に外出許可を出していたとか!?それにしたって自分が第二王子っていう自覚はあるのかしら?
アーロンからの紹介で、サイモンという人物と顔合わせをすることになった。
サイモンは片眼鏡を付け(オシャレね!)濃い金髪に紫色の瞳を持つ学者といった風の出で立ちの男性だった。彼の知識はとても優れ、もちろん女性が身に付けるべきマナーといったもの、社交界に出ても恥ずかしくない淑女同士の会話というものにも詳しいらしい。男性ながらも女性視点ならではのモノの捉え方といったものにも詳しいらしい。
もしかしたら超厳しい講師だったりするのかしら!?と、ちょっとドMな私が姿をあらわしかけてしまった。が、私の目の前に(正しくは机の上に)叩きつけられたのは一本の教鞭だった。
……バリバリのSな女王様って感じがするのですが、違うのでしょうか!?
「よろしいですか、レン様。これから教えていくことは一度しか説明しません。二度はありません。しっかりその頭に叩き込ませるように」
言いながらバシバシと教鞭を振るってくる姿はまさに『Sな女王様』だった。男なのに、女王様よ!女王様!!
キャーッ!この世界にもそんな道具(ただの教鞭です)があっただなんて素敵だわ!アレで叩かれるのは痛いでしょうから、是非ともお言葉でお叱りくださいませぇ!!!
「レン様?集中!!」
「は、はい!」
『まずはこの国の歴史と伝統から』と授業がはじまったのですが、言いながらバシバシと鳴る教鞭の音が聴覚を刺激してしまって……それは私のなかのドMにも刺激が伝わってしまい正直授業どころではないのよ!
「聴いているのですか?ただでさえ軽そうなその頭。一体何を考えているのです?この程度の授業は普段はだらしのないフラン様でさえ簡単に通り抜けたのですよ。なのに、あなたはどうなんです?その頭は付属品ですか?簡単に取り外しが可能なものなのですか?ただのお飾りなのですか?」
あ、あぁぁぁあぁああ!!!
いい、いいわ!このサイモン様!!!最高だわ!!!
もっと、もっとその端正なお口から吐き出されるお言葉で私をお叱りくださいませぇぇぇ!!!
もっと、もっとくださいぃぃぃ!!!
私はそれを待っていたんですぅぅぅ!!!
最近の私はS不足だったがゆえにサイモンの授業は耳から入って耳へとスルーしてしまっていた。とてもじゃないが授業の内容を把握する余裕なんてものはない!それにサイモンの落ち着いている声の質も最高だわ!その口で言われているものだからまさに至福の時!!!
「さ、サイモン様……」
「どうしました?もう休憩したいなどとは言わないように。まだまだはじまったばかりなのですよ」
ど、どうしよう……目覚める……っ!
私のなかの超ドMの本性が今にも目覚めてしまいそうなのよーっ!!!
「うぐっ……す、素敵過ぎて頭が……」
「はい?」
ついついドMとしての呟きが洩れてしまうと不審そうにジロリと見てきたサイモン。
ヒィィィ!!!
その汚らしいものを見る目もイイ!!!
「……仕方ありませんね。少し休憩を入れましょうか」
ガーーーン!!!!
もう私の頭のなかは興奮して燃え上ってみたり、『休憩』のお言葉が向けられると一気に気分が沈み込んでしまって、私のなかのドMは情緒不安定になってしまっていた。だ、大丈夫なのかしら……このままサイモンと時間を過ごしていて……途中でぶっ壊れたりしないかしら!?
「はっ!!すみません!お茶でもお淹れいたします!」
「レン様がですか?では、お言葉に甘えます」
そうよ!
ここは、お茶でも淹れて気分転換しないと!ドMな私の気を紛れさせないと!!
これ以上ぶっとんだ発言を吐き出してしまう前に!と香り豊かな紅茶を用意すればサイモンの近くへと。すると自然に聞こえてきたのはサイモンの声。『良い香りですね。紅茶の淹れ方はお上手ですよ』とお褒めの言葉を頂戴してしまった。
そ、そこは……『不味い。人間の飲み物ではありませんね』と罵ってもらいたかったです……と私のなかのMの本性は呟いております……が、褒められることだって嫌いじゃありませんからね!?上手だ、と褒められればついつい安堵の笑みを浮かべていた。
休憩はそこそこにすぐに『淑女のマナーとしては……』と授業が再びはじまった。が、少しでも私の気が抜けていたり集中力に欠けているとみるとバシバシと教鞭を振るいながら『その耳は飾りですか。この程度の常識は幼い頃に学ぶ程度のものですよ。社交界に出て大恥をかきたいのですか?周りの淑女たちに笑われても良いのですか?頭のなかにきちんと脳みそは詰まっているのですか?なんのための脳みそですか!私の言葉一つ一つをきちんと丸暗記するぐらいの気持ちを保ちなさい!』と注意をしてくるサイモンに、いつまでも私の集中は別のところにあった。
サイモン様!!!
むしろサイモン様が笑ってください、私なんかのことを嘲笑ってくださいぃ!!
サイモン様に嘲笑われるのならば私は大衆の場で大恥かいたって構いませんわぁぁぁ!!!
と、私のなかのドMはサイモンの言葉一つ一つに興奮していた。そこにはめちゃくちゃ集中できるというのに、わざわざ教えてくれている雑学の内容についてはさっぱり……でした。
お読みいただきありがとうございます!!
今まで出てきたキャラクターから学ぶという手もありましたが、ここぞとばかりに女王様風に教鞭を振るってくれるキャラクターを参戦させました。女王様風が分からない!?でしたら……『女王様風が分からないだって?そんなことを言っているのは何処のどいつだぁ~い?……私だよ!』と芸人風のネタを思い出していただけると幸いです。(知っているのかな??)
個人趣味全開で書き連ねている当作品ですが、少しでも興味を持っていただけますと幸いです!主人公の勝手な妄想などもお楽しみいただけますと嬉しいです!『ブックマーク』や『評価』などなどもお待ちしていますし、ご感想もいつでもお待ちしております!




