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百四話 フェイ親子はお城預かりになりました!

 裏通りのことを少しでも把握したくて、誰か知っている人はいないだろうか……と考えたときに、頭に浮かんだのはフェイの姿だった。

「!そう言えば、お医者様に診てもらっているフェイやお母さんたちはその後、どうなるのでしょうか?」


 不意に思い出した、フェイの存在。フェイも裏通りの……広場に近い方かもしれないけれど、裏通りで生活してきた人たちだ。父親のことは残念になってしまったけれど、母親と一緒になってこれからは安全、そして健康的に過ごしていってもらいたいと考えている。だけれども、今、現状のなかで裏通りのことを一番知っているのはフェイたちではないだろうか?そう思うと今、医者の元で健康状態を診てもらっているフェイたちが一気に気になってきてしまった。もちろんこれからは安全なところで過ごしてもらいたい気持ちもある。それでも、私たちは裏通りの奥で生活している人たちのことについて何も知らなさすぎるのではないだろうか?そう考えると、少しでも知っている人に話を聞いてみることは悪いことではないと思うのだけれど……。


「母親の健康状態に、よるでしょうね。もしもしばらく安静に休んでもらう必要があるのであれば城下町の医者の元、もしくは城の一室を与えて養生してもらう必要があるかもしれませんが……」


「……それって、あの親子のこと~?」


 フランが視界に入れたのは、まさしく私が今探し求めていた存在!フェイとその母親だった。私もその二人の姿を視界に捉えると、ささっと足早に移動し、フェイたちに向かって声を掛けていった。


「フェイー!お母さんも!お医者様からの診断は如何でしたか?」


「あ、お姉ちゃん!……お母さんの足、りはびり?とかっていうのをしないと、もっと歩けなくなるって……だから、ゆっくり休んで食べながら……動けるようにしていくんだって」


 りはびり……あぁ!リハビリのことね!

 なるほど。なら、これからの過ごし方次第によってはお母さんの方もまた健康に歩けるようになるかもしれないってことよね!良かったじゃない!フェイは、もともとそこまで栄養が悪いわけではなかったのか、痩せ細ってはいるけれど足を悪くしているとかってわけじゃなさそうね。


「そうなのね!これからは城下町のお医者様のところで過ごしていくのかしら?もちろん、お城で過ごすことも可能よ!お部屋なんていくらでも空いているもの!」


「あ、えーっと……王子様に頼めば、融通してくれるからって……えっと、王子様って……?」


 フェイはこの国の王子様って知らないのね……。


「アーロン!ちょっとこちらへ!」


「どうしました?……おや、先ほどの。医者からの診断は無事に終わったようですね」


 ちょっと声を少しばかり大きくすればさほど離れていない場所にいたアーロンには私の声は聞こえたらしく、すぐに手招きをしていけば私の近くへと歩み寄ってきてくれた。そして、医師の診断を受けていたフェイとその母親の様子を目にしていくと安心したように、キラキラと音でもしてしまいそうなほどのオーラを放ちつつ優しい笑顔をフェイ親子に向けていったのだった。

 さすがに幼いフェイにはアーロンの王子様モードというものは効果が無かったようだけれど、近くにいた母親にはアーロンのキラキラ王子様モードというものは刺激が強かったらしい。失神……するまでにはいたらなかったようだけれど、ずっと目にしているのはツラいものがあったらしく、そっぽを向いてしまった。決して母親の態度が悪いわけではないのよ。これは、アーロンのオーラが強すぎるあまりに、視界に入れ続けていくことが難しいからっていう仕草の一つってわけ。


「……もしかして、お兄ちゃんが……王子様?」


「?えぇ、そうですよ。私が第一王子、アーロンです」


 フェイが何気なく問いかけていけば、ちょっとばかし疑問を持ちながらも満面の笑顔でそう応えていくアーロンに目を一気に輝かせたのはフェイだった。まさか、さっきお世話になった人が、そして目の前に当たり前のように立って話をしてくれている人が国の王子様だっただなんてフェイは想像も出来なかったんだろう。まあ、普通に考えていけば一国の王子様が貧困層の人たちのためにあれこれと動いていくなんて普通は考えられないものよね……。もちろん国民想いの王子であれば、自分のことよりも国民を優先して動いてくれるかもしれないけれど、こんなに目の前で気軽に話が出来る王子なんてそうそういないだろう。


「!え、えっとね!せんせ……お医者さんが、王子様に頼めばいいって言ってくれたんだけれど……その、僕たちのこれから暮らしていくところとか……」


「あぁ。そのことですか。もちろん城下町に住む場所があるのであればそちらに住んでいただいても構いませんよ。でも、フェイたちにはそれが無かった。……それに、母親を落ち着く場所で安静にさせることも必要でしょう?なら、落ち着くまで城の空いている部屋で暮らしていただいて構いません」


「!ほ、ほんと!?」


「本当ですよ。もちろん城にいれば何かあったとき、すぐに具合を診てもらうことも出来ますからね。……フェイは、体の具合はどうだったんですか?」


「……えっと、好き嫌いせずにもっと食べなさいって……」


「はは、それはそれは。そうですね。苦手なモノがあったとしても今は我慢して栄養を付けろって先生は言いたかったんですよ」


 な、なんだか……和むわ~。

 って、不意にフェイのお母さんと目がバチッと合ってしまったのだけれど、もしかしたらお母さんも同じことを考えていたのかもしれない。アーロンとフェイとの会話のやり取りを傍から耳にしていくと、なんとも和む王子と国民との会話って感じがしてついつい頬が緩んでしまいそうになってしまった。もしかしたら、既に緩んでいたのかもしれないけれど。それはお母さんも一緒だったようで、慌てて頬辺りに両手を当てていたのだけれど……お母さん!そこは、もっとニコニコしていて良いと思いますよ!


「……レン、レン?聞いていますか?」


「!は、はひ!」


「はひ?……ごほん。フェイ親子は、取り敢えず城で預かりましょう。フェイも母親にも栄養は必要ですし、母親には歩けるようになってもらうようリハビリが必要とのことですから城にいればいつでも専門医に診てもらうことが出来ますので」


「!そうなんですね。じゃあ、しばらくの間、いつでも会えますね、フェイ」


「……お姉ちゃんも、お城にいる人?」


「あー……えっと、実はそうなのよ。私も、お邪魔させてもらっているような身……というか……えっと……」


「こちらの女性は、私の許嫁なんですよ。許嫁……分かりますか?将来、結婚をする大切な人のことをいいます」


「結婚する人!凄いね!」


 ど、どういう意味で凄いと言ったのかちょっと分からなかったのだけれど、そんなに純粋な目でキラキラさせて見られるとちょっとばかし気まずい……。それに、一応私がフェイ親子に声を掛けにきたのには理由があるんだもの。


「お、落ち着いたらで良いのだけれど……良ければ、フェイ。裏通りのときの生活のこと……そうね、周りにはどんな人たちがいたかを聞いてみたいのだけれど……良いかしら?もしも気分が悪くなるようだったらもちろん無理に話してくれる必要は無いからね?」


「生活していたときの、こと?……女の子がいたよ!時々、食べ物とか持ってきてくれた!」


「……確か、紫色の瞳をしていたという女の子でしたか……身なりなどは覚えていますか?」


 誰かに助けてもらっていたのだとは思っていたのだけれど、もっと……もうちょっとでも良いから情報が欲しいわね。アーロンが身なり……どんな服装をしていたのか、ということを聞いていけばフェイからは思わず目を丸くしてしまうような驚きの発言を耳にしていくのだった。


「えっと……あれって、フードだよね?お母さん」


「そう、ですね。フードが付いたパーカーみたいなモノを着ていて……金髪の女の子でしたけれど……」


 フード付きのパーカーって……それって、カトルのような服装に似ていない?もしかして、カトル?いや、遠くだったからはっきり目にしたわけじゃなかったけれど、カトルは紫の瞳じゃなかったと思う。それに、カトルの髪色は金髪……だけじゃなかったものね。他の誰かが、フェイ親子を助けてくれていたのかしら……?

 おお!?だんだんと情報が集まってくるくる!でも、カトル……ではない!?もしかしたら、新たな第三者の可能性があるかも!?


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