思いついたまま殴り書き⑥
子どもは皆、石を握りしめて生まれてくる。赤ん坊の小指の爪ほどの小さな石だ。その辺に落ちている石ではない。それぞれ違う色の宝石みたいな綺麗な石だ。
宝石ではないのかって?うーん、宝石と言えば宝石だけど、該当する宝石はこの世界にはないのだよ。だからみんな「石」と呼んでいる。生石なんて呼ぶ人たちもいるらしいがな。
え?その石がどうしたかって?お前は不思議に思ったことはないのか?石を握りしめて生まれることもそうだが、ある程度の年齢になるとその子に合ったモノになるなんて不思議以外の何でもないだろう?
いや、そう言うモノだってのはわかってんだけどよ…
あー、話を聞いてくれてありがとな。忙しい時に悪かったな。
…みんな何で不思議に思わねぇんだろうな…当たり前だからっちゃあそれまでなんだが…モヤっとすんなぁ…まぁ、学者でもねぇ俺が考えたってしゃーねーか…はぁ、俺の石はいつまで石なんだろぉな…
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俺が生まれたのは田舎も田舎の村だ。村長の家と教会の違いがわからないくらいの閑散とした、よく言えば長閑な村だ。どの家もご近所さんだし、だいたい自給自足で稀に行商人が来てくれて成り立つ村だ。
何にもない村だけど、子どもの声は絶えなかったし、皆穏やかな人ばかりで、年長の者が隔てなく読み書き計算やその他色々なことを教えてくれる、理想の村とも言える故郷を誇らしいと思う。
そんな生まれ故郷を出なければならなかったのは、ひとえに俺の石のせいだ。遅くても13歳までには皆それぞの将来に沿ったモノになると言うのに、俺は15歳になっても石のままで、いくら末っ子と言っても、むしろ末っ子だったからこそ心配された。親兄弟どころか村中から心配された。村長や神父には力及ばずなんて頭を下げられそうになった時には、申し訳なさで心が潰れるかと思うほどだった。なんだよ、力及ばすって…大人がどうしたって個人のモノなんだから本人以外に理由はねぇってのにな。
で、その年に来た行商人ってのが若いやつを連れてきてたんだ。そいつが同じ歳で、見習い行商人だって笑ってんの見て羨ましくて悔しくて、俺は一晩中考えたんだ。石の事や今後のことを。いや、今までも散々考えてたんだから、村を出ようと決めるための一晩だった。もっと早く決心出来てればと思わなくもないが、俺としては出来れば一生この村に居たかったのだから、よく決心したなと褒めて欲しいくらいだな。