表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/6

思いついたもの殴り書き⑤

少々加筆してみました。

 ここは帝国の都から馬車で5日程のところにある街らしい。らしい、と言うのはワタシがここから動いた事がないこと、人々の話から得た情報だからだ。


 日々行き交う人々を眺め、会話を聞くでもなく聞き、変わらずここにいる。「肉屋の親父が狩に出た息子の心配をしている」とか、「そろそろ冬支度をしなければ」とか、「都では新しい商会の勢いがすごい」とか笑ったり忙しそうだったり怒っていたり、人々の生活の一部を見聞きして過ごしている。


 ワタシは生まれた時からずっとここにいる。帝国の都から馬車で5日ほどの距離にあるらしい街のほぼ真ん中、色とりどりの花に囲まれた花壇の真ん中の木、街の2階建ての建物と同じくらいの大きさの木が『ワタシ』であり、『ワタシの親』であり『ワタシの家』だ。

 気づいたら人と同じような形をした()()()が出来ていた。気付く人はほとんどいないようだ。ごく稀に子どもが()()()を指()して驚いた顔をしていることがある。しかしそんな子も、そのうち忘れるのか、見えなくなるのか、()()()に反応をすることがなくなるのだ。そんな時はいつも周りの花がそよそよと揺れている、と気づいたある日、『ワタシ』の枝葉が風もないのにさわりと動いた。



 ふと、ふよふよフラフラと危なっかしく飛ぶ光が視界の端に映ったことに気づいた。じっと見ていると、どうやらワタシのほうへ向かって来ているようである。

 周りを見渡してみても、気づいていないのか誰も視線すら向けていない。まぁ悪いモノではなさそうだしと光に視線を戻し、ボーッと眺めているとワタシの胸あたりにぶつかってそのままゆっくり落ちて行った。

 慌てて手のひらで受け止めると、その光は突然飛び上がった。フラフラしていたのにどうしたのかと言いたくなるほどの勢いでワタシの周りをぐるぐる何周かした後、光が消え、ワタシの人差し指ほどの小さな女の子の姿になった。

 4枚の羽の向こう側がうっすら透けて見え、日の入りや明け方を思わせるような紺から東雲色のグラデーションのロングワンピースを着ている。月白(げっぱく)の短いかみに、真夜中の空を思わせる留紺(とまりこん)の瞳には朱や水色が小さく煌めいている。


『縺ゅk縺假シ∬オキ縺阪◆?』


 とても可愛い声で、だけども凄い勢いで何か話しかけられたようである。

(ジロジロ見すぎたかな?)と思いつつ、口から出たのは


「ごめんね、ワタシにはキミの言葉をわかってあげる力が残ってないんだ。でもおかえり。無事でよかったよ」



(…え?ワタシ今、何を言った??)



ちなみに


月白とは、月の光を思わせる薄い青みを含んだ白色のこと。


留紺とは、これ以上染まりようのない濃い紺色のことです。

「とまこん」とも読むそうです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ