ゲーム、そしてギルド
俺は自分の部屋でチラシを眺めていた。
なぜ瑠音のお母さんはヘッドグリントのことを言ったのだろうか。
もしかして、これが原因で瑠音がおかしくなってしまったのか?
だとすれば、このゲームをプレイすれば瑠音と接触出来るかもしれない。
そうだ、きっとそうに違いない。
俺は一階に降りるとリビングにいたお母さんに対してこう言った。
「誕生日プレゼントはヘッドグリントがいい!」
◇◇◇
鬱蒼とした森の中、ベリルとGOGOは茂みをかき分けて進む。
「ねえ、本当に雑魚モンスターしかいないんでしょうね?」
「デストロイさんの情報によるとそうらしいっす」
「ちゃんと守ってよ」
ベリルを含め、ギルドのメンバー全員がLv999と最高値になっている。
しかし、ベリルは戦闘が苦手だ。
それなのになぜ、ここまで成長出来ているのか。
答えは単純だった。
「モンスターが出たっす!」
「怖~い! GOGO、助けて!」
体長1.5メートルほどの、カエルのモンスターが現れた。
「任せてください!」
GOGOは武器の巨大な斧を使って敵をなぎ倒す。
一瞬にしてカエルは光の粒子となって飛び散り、GOGOに経験値が入る。
「ありがと~! さっすがGOGO! 頼りになる!」
ベリルはあざとくGOGOの腕にくっつく。
GOGOもまんざらではない様子だ。
ベリルが高ランクのギルドに居られる理由は彼女の声と甘えである。
このゲームではコントローラーに直接声を吹き込むことで、本人の声に酷似した機械音声を作り出すことが出来る。
彼女自身、自分の声が甘ったるく、男受けのいい声であることは何となくわかっていた。
そこで、女性慣れしていない今のギルドメンバーと接近し、さらにぶりっ子の仕草を見せることによって、実質ベリルがギルドの長となっているのだ。
強い武器や装備が欲しい時は、三人にあざとくねだればすぐにくれた。
大人を上手く利用して、ベリルはここまで上り詰めてきたのだ。
学校での居場所を無くした瑠音は、新たな場所で地位を確立していた。