引きこもりの女の子
20XX年に発売されたゲーム機、「ヘッドグリント」は世界的大ヒットを果たした。
ヘルメット状のコントローラーを頭に装着することで脳に特殊な電流を流し、身体を仮眠状態にして精神を仮想空間に繋げることが出来る。
「ブレインアドベンチャー」はこの特徴を最大限に活かしたオンラインゲームである。
まるで本当にその世界にいるようなリアルさのもと、仲間と共に協力しながらモンスターを倒すのがこのゲームの醍醐味だ。
しかし、発売されたばかりのこのゲーム、同時に様々な問題を抱えていた。
◇◇◇
年頃の女子の部屋とは思えないほど、スナック菓子の袋やくしゃくしゃに丸められたプリントが床に散乱している。
その部屋の主は、ゲーミングチェアに座りパソコンを動かしている。
葛原瑠音は中学2年生、こうして毎日引きこもりの生活をしている。
ぼさぼさの髪を掻きながら、時刻を確認する。
「もうこんな時間か……」
瑠音は椅子から降りると、ベッドの枕元にある「ヘッドグリント」のコントローラーを装着する。
スイッチを入れ、しばらくすると頭の中にピリピリとした刺激が伝わってくる。
ベッドに仰向けになり、ゆっくりと目を閉じる瑠音。
人体の様々な感覚が、機械を通して送り込まれていくのであった。