No.○○番目 転生
どの物語も、裏表が存在する。
そして、私は目を覚ます。
「ん…………………………ぅ……………………あ、あれ?ここどこ?」
そこは白い空間だった。風は吹かず、影もなく、ただただ広く、白に満ちた世界。
「…………ぅ、そっか……私、死んじゃったのか。」
周りを見渡してるうちにだんだんと脳が活動していき、思い出していく。先程の痛みを、絶望を。
「死んだ後ってここに来るんだ。」
「いや、お主はまだ死んでおらん。」
諦めながら呟くと、声が聞こえた。急な声に驚きながら振り向くと、
「はじめまして……………かの?お嬢ちゃん。」
「………………もう迎えが来たのね。閻魔様ってどんな姿をしているんだろう?」
「だから死んでおらんと言ってるじゃろ。少しは落ち着け!」
するといつの間にか持っていたハリセンで頭を叩かれた。
「ちょ、痛いです!止めてください!!」
そのハリセンはそこそこ大きいため、普通に痛い。
「ほら、生きてるじゃろ?痛覚は死んだら無くなるからの。お主の身体は既に死んでるが、魂は死んでおらん。」
「………………………わかりましたよ。信じますから。」
これ以上痛みは経験したくないので、とりあえず表面上は信じることにした。
「そうかの。では転生させてやろう。まずはこれを………」
「ちょ、ちょっと待ってください!?」
今、かる~くやばいこと言ってた!え?何?転生?なんで?どうして?………いや、落ち着くのよ私、真偽はともかくとして、まず理由を聞くのよ。
「とりあえず、理由を教えてください。」
「ふむ………………未来ある若者がこんなところで力尽きるのは、少し可哀想での。故にもう一度チャンスを与えるのじゃ。」
「……………なるほど。では、私はどうすればいいのですか?」
「では、能力を選んでくれ。」
………………………能力?時間操作能力とか天候操作能力とかかな?
でも……………………選ぶ?
「なんで能力を選ぶんですか?出来ることなら自分で考えたいんですけど。」
「………。儂も出来ることなら好きなのを考えて与える。じゃがあまりに強い能力だと世界のバランスが崩れるんじゃ。」
私が質問すると、少し考えるように黙ってから答えた。ただ、建前のようにどこか取って付けたかのような感じがする。
「………わかりました。その能力とやらを選びましょう。」
そして3つの選択肢を提示された。私はその中にあった《軌道を操る程度の能力》を選んだ。
「!……………………ほう。良ければ理由を聞いてもいいかの?」
「理由は特にありません。強いて言うなら、勘です。」
こればかりは本当に勘。だって、何故かこれにしなければならない。と思ってしまったんだもの。あ、そういえば、
「あの………どうして"程度の能力"なんですか?普通に○○する能力でいいと思いますけど………」
「仕方ないじゃろ。その世界特有のルールなんじゃから。ほら、とっとと転生させるぞ。」
「わかりました。お願いします。」
「ウム、では行くぞ。達者でな。」
その言葉を聞いた直後、意識が暗転していく。ただ、不思議と恐怖心はまったくない。……………………どんな人生が待ってるのかな?とっても楽しみ………………
少女が転生先に送られた直後、
「……………………そろそろ出てきて良いんじゃないかの?✳✳…………いや、『結果を見守る者』よ。」
神は自分以外何も無い空間でそう呟く。すると声が聞こえた。
「ふふ、知ってるでしょ?私はかなり用心深いって、ねえ?
『セイテン』さん?それともこっちの方がいいかしら?『終始を繋ぐ者』よ。」
その者は姿を見せずに声だけを響かせている。それに驚くこともなく神………いや、セイテンは返答する。
「どちらでも構わんよ。……………………あやつは、うまくいくと思うかね?」
「そうね……………………新しい可能性は出て来たけど、正直まだわからないわ。」
「そうかの………………儂等に出来るのは、ただ見守り、繰り返すのみ。じゃが、そろそろ限界に近い。」
「………………わかってるわ。」
「「今回でこの『地獄』を終わらせる。」」
二人の決意を聞いたものは本人達以外、誰もいなかった。
第二の人生が『表』だとしたら、『裏』はどこに当たるのか?