2. 白馬に乗った王子様?
「何をしている?」
そう声をかけたのは、スラリと背の高い、黄金のような金髪の美貌の男だった。
ヴァイオレットの瞳は、この国の王族の象徴でもある。
「ヘンリー殿下!」
レティシアはサッとカーテシーをした。
アンジェラも立ちあがろうとすると、ヘンリー殿下が手を貸してくれる。
「大丈夫か?」
「はい、申し訳ございません」
「何があったんだ?」
切れ長のヴァイオレットの瞳がアンジェラをとらえた。
宝石のようね、美しいわ。
アンジェラは思わず見惚れてしまった。
髪も瞳もキラキラで、何だか眩しい人ね。
黙り込んでヘンリー殿下を見つめているアンジェラにレティシアが焦って何かを言おうとしたが、アンジェラが先に答えた。
「立ちくらみがしまして、思わず尻もちをついてしまいました。お目苦しいところを大変申し訳ございません」
「そうか」
ヘンリー殿下はそういうと、サッとアンジェラを抱き上げた。
「キャッ」
「しっかり掴まっているといい。医務室に行こう」
「大丈夫です、歩けますし、医務室に行く必要はございません」
「立ちくらみがするのは良くない」
ヘンリー殿下はレティシアに目もくれずに立ち去ろうとした。
「で、殿下!」
レティシアは思わず声をかけた。
「何かな?カートライト嬢?」
「そ、その者はカートライト家の者でございます。我が家の従者を呼びますので・・・」
「カートライト家の者というか、君の妹のアンジェラ嬢だろう?」
「ご・・・ご存じでしたか」
「学園一の美貌の女性のことは、僕でも知ってるよ」
「学園一・・・。アンジェラが・・・」
「姉妹仲が良くないようだから、僕が医務室に連れていくよ。異論があるのか?」
「ご・・・ございません」
アンジェラは一連のやり取りをぼんやりと眺めていた。
この王子様は、キラキラで明るい光で周りの影を全て消し去るような方ね。
眩しすぎて、私の心の中のドロドロが余計黒く見えるわ。
でも、レティシアは王子様と同学年だけど、王子様が私のことを知っていたなんてちょっと嬉しいわ。
フフフ。
王子様にお姫様抱っこされるなんて、こんな機会滅多にないからラッキーだわ。
ちょっとくらい楽しまなきゃ。
アンジェラはヘンリー殿下のブレザーの襟をそっと掴んだ。
「行こうか、アンジェラ嬢」
ヘンリー殿下の切れ長のヴァイオレットが再びアンジェラをとらえた。
「はい、それではお言葉に甘えてよろしくお願いいたします」
アンジェラはにっこりと笑った。
ヘンリー殿下は、とくにアンジェラに話かけることもなく、淡々と歩いていく。
そんな王子様の腕のなかは、心地が良かった。
妾の子で嫌われ者の私にも、いつか王子様が現れるのかしら。
私の肉体に惹かれてたっていい。
暗いドロドロのなかにいる私に手を差し伸べて、「もう大丈夫だよ、僕が守るよ」って誰か言ってくれないかしら。