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10. 命令の実行

「ピーター・カートライトの息子のハロルドは君のことが好きだろう?そこからアプローチすればいいじゃないか」

ヘンリー殿下はいつもと同じ美しい笑顔で、天気の話をするように提案した。

「ハロルドお兄様も有罪にするんですか?」

「いや、ハロルドまで有罪にすると王家が乗っ取ってるみたいだからね、彼は残すよ。次期当主じゃないけど、彼の立場は悪くないと思うな」

いやいや、乗っ取りですよ、と言いたくなったがグッと堪えた。

「なるほど」

「だから君は遠慮なく彼を騙してくれて良いよ。僕、嘘はつかないから。」

胸に手を当てて偉そうに言うけど、嘘の証拠で叔父様を告発しようとしているこの男は全く信用ならないと改めて感じさせる発言である。


しかしこちらも綺麗事を言っていられない。

王子の執務室からそのままハル兄様の教室に直行した。

ヘンリー殿下が何をしたのかわからないが、今日は下心丸出しの男どもに追いかけられないし、レティシアにも会っていない。

一応、それなりに誠意を示してくれているのか、任務の邪魔になるから排除したのか…


「アンジェラ!」

ハル兄様は扉にいた私を見つけるとすぐに駆け寄ってきた。

「ハル兄様、今日は一緒に帰れませんか?」

「もちろん!どうしたの?」

「実は昨日悪い夢を見て、お昼になってもなんだか怖いんです。一緒にいてくださると心強いです」

少し上目遣いにハル兄様を見つめる。

「可哀想に、大丈夫だよ。俺がアンジェラの教室に迎えに行くから」

「ありがとうございます」

私が切なそうに微笑むと、ハル兄様は少し顔を赤くした。


ハル兄様と「仲良く」なるのに時間はかからなかった。

捧げたものは私のファーストキス。

それからちょっと身体をまさぐられること。


「ハル兄様、お父様が生きていらっしゃるときに、お姉様のイジメから逃げるために、お父様のお友達のフォークナー男爵の養女になる話をして下さっていたんです。ある程度の合意に至った書類があるはずなんですが、それさえあれば私はハル兄様のお嫁さんになれるかもしれません」

真っ赤な嘘である。

そもそもお父様はイジメに気がついていなかったし、私も言わなかった。

なのでこのような話は存在しないが、そんな書類が存在するとすれば、金庫の中である。

ハル兄様には、金庫にアクセスしてもらわなくてはならない。


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