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8話 ポーション錬成

 錬金術で回復薬(ポーション)を作る。そのために必要な素材は薬草と精製水。


 俺はさっき【基礎魔法】で水を生み出した。

 次に必要な工程は、ただの水を精製水することだ。


 ここから先はいよいよ錬金術の出番だ。

 

「……よし」


 集中して、目の前のビーカーに注がれた水を見つめる。

 そして意識を水の中に落とし込むように、ゆっくりと深呼吸した。


 錬金術の工程は、三段階に分けられる。

 第一工程は【分解(ニグレド)】。これは名前の通り、錬金術において、対象の()()()()()をする工程だ。


分解せよ(ニグレド)――」


 俺が詠唱すると、ビーカーの周囲を青白い光の真円が囲み、その中が眩い光に包まれた。

 これは物質が錬成の対象になったことの合図だ。光の中では現在、純水とそれ以外の不純物とに分離されている。

 

 第一工程(ニグレド)は無事成功。


 次なる工程は【再結晶(キトリニタス) 】。

 分解した物質から、その後の錬成に必要な物質だけを選びとらなくてはいけない。つまり()()()()()。それがこの工程で行うべきことだ。


再結晶せよ(キトリニタス)――」

 

 そう呟くと、分解(ニグレド)によりできた青い真円に沿うように、更にもうひとつの真円が描かれた。

 そうして出来上がった円環(アニュラス)の中で、光はますます強まっていく。その輝きの中でただの水は純水として変容していった。

 

 こうして第二工程(キトリニタス)も無事成功。

 

 さあ、いよいよ第三工程だ。

 このまま俺が錬金術を解いてしまうと、せっかくの純水がもとのただの水へ戻ってしまう。

 

 分解(ニグレド)再結晶(キトリニタス)の工程を経て、変容した物質を、()()()()()()()()()()()()する。


 それが錬金術の最終工程――【大いなる業(アルス・マグナ)】。


大いなる業は至れり(アルス・マグナ)――!」


 俺が力強くそう唱えると、二重円を繋ぐように、幾何学的な光の紋様が浮かび上がった。

 

 こうして描かれたのは錬成陣。

 その陣の中で、輝きは更に強さを増していった。

 錬成の対象物に質量と自然法則が与えられていく。

 

 やがて光が収束するとビーカーの中には並々と溜まった純水――つまり錬金術の力で、ただの水から再構築された()()()があった。


「あとはこれを薬草と一緒に錬成すれば回復薬(ポーション)の完成だ」


 俺はビーカーの中に薬草を追加で入れてから、先ほどと同じ要領で錬金術を行使した。


分解せよ(ニグレド)再結晶せよ(キトリニタス)――!」


 ビーカーの周囲に円環(アニュラス)が描かれる。

 輝きに包まれながら、薬草はサラサラと砂のように崩れていった。粉末状態になった薬草に対して徐々に精製水が浸食していき、やがてそれらは一つに溶け合った。


大いなる業は至れり(アルス・マグナ)――!」


 それらを完全なる物質として固定化する。


「よし、成功」


 俺はビーカーを手に取り、その中に入っている回復薬(ポーション)の出来を確認する。

 

 スキル【分析(アナライズ)】を使用。


――――――

――――――

 【回復薬(ポーション)

 効果/飲用することで傷や病の回復を促進することができる。

 品質/A +

付加効果(エンチャント)/なし

――――――

――――――


「うん、いい感じ」


 大きな失敗もなく、品質も上々。ビーカーから薬ビンに移し替えたら封をして完成だ。


 俺はこの調子で回復薬(ポーション)を量産することにした。


 だいたい五〇個くらい錬成をしたところで、自分の集中力がほんのちょっとだけ途切れてくるのを感じた。

 時間にして二時間くらい経っただろうか。一旦休憩しよう。俺は錬成を切り上げて、ひと心地ついた。


「ニコ……」


 ミステルが呆気にとられたような表情で俺のことを見つめている。


「ん? どうしたの?」

「どうしたのじゃなくて、体調は平気なんですか?」

「へ? 全然平気だけど、なんで?」

「なんでって……」


 ミステルはなにやら驚いている様子だった。


「スキルをこれだけ長時間連続使用するなんて――普通できませんよ? いつ倒れるんじゃないかとヒヤヒヤしました」

「え? いや、錬金術のスキルは消費魔力も少ないし、そんな大したことじゃ――」

「大したことあります。スキルで消費するのは何も魔力だけじゃありません。集中力や体力だって消耗します。だから、こんな風に連続で使用するのは、普通の人には無理です。もちろんわたしだって……」

「そ、そうなんだ。青の一党にいたときは、それこそ一晩中ぶっ続けで錬成することもザラにあったから」

「やっぱりアナタは只者じゃありませんね」

「ありがとうミステル。やっぱりキミはホメ上手だね」

「もう、本心ですってば……とにかく、お疲れ様でした。よかったらコレどうぞ」


 ミステルがお茶を差し出してくれた。

 俺はお礼をいってからノドを潤す。


 (うん、おいしい)


 こうして馬車での旅の時間は和やかに、だけど有意義に過ぎていく。気づけば日も傾き、夜の帳が辺りに下りようとしていた。


***


錬成の成果

――――――

――――――

回復薬(ポーション)】50個

 効果/飲用することで傷や病の回復を促進することができる。

 品質/A +

付加効果(エンチャント)/なし

――――――

――――――


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