21話 勇者のリベンジ! VSナハト【勇者視点】
ワルプルギス大幽林のリベンジを狙うラインハルトたちは迷宮の深層へと足を踏み入れる。ちょうど前回の探索でナハトの襲撃を受けた地点の辺りだった。
「ふむ、マッピングができてるのはここまでか……」
「ラインハルト様、いかがしましょうか。未踏エリアにおいては、まずはマッピングから始めるのが賢明かと思われますが……」
「ふふ、マーガレット。凡百の冒険者なら確かにそうだろうね。だけど僕にはそんなもの必要ない。なぜなら……」
「エクスカリバーがあるからだよねッ!?」
「そのとおりだ。リリアン」
ラインハルトはご褒美と言わんばかりにリリアンの頭を撫でつける。リリアンはうっとりしたような表情でラインハルトにすり寄った。
その姿を見てマーガレットはジェラシーを覚える。
「も、申し訳ありません、ラインハルト様。ワタクシったらラインハルト様の力を疑うようなことを言ってしまって……!」
「いや、構わないよ。マーガレット。キミが僕のことを心配してくれている気持ちは痛いくらい伝わってくる。いつもありがとうマーガレット」
「ラインハルト様ぁ……♡」
マーガレットはウットリとした表情でラインハルトを見つめた。
「どんな魔族が現れようと、聖剣でたちどころに一刀両断してやる! さあ二人とも! 僕の後についてきて。迷宮の制覇まであと少しだ!」
ラインハルトは仲間たちを先導するように歩き出した。
(ナハトは現れないか。ヤツめ、この僕相手に不意打ちは二度は通用しないことを理解しているのか? フン、魔族のくせに小賢しい)
ラインハルトは暗がりの中をずんずん進んでいく。
(ふぅ……かれこれ一時間は歩いているな。まだ、最深部にはたどり着かないのか? 相当深い迷宮なんだな)
さらに一時間。
(おかしい。さっきから景色が一向に変わらない。どういうことだ……? まるで同じところをグルグルと移動しているような……)
ラインハルトは自分たちの身に降りかかった異変をようやく自覚した。
「ラインハルト様……ワタクシたちは迷ってしまったんでしょうか……?」
おずおずとマーガレットが口を開く。
「そ、そんなバカなことあるか! だってずっと一本道だったじゃないか。道に迷うなんて……」
「もしかしたら、領域魔法が張られているのかもしれませんわ」
「は、領域魔法……?」
聞きなれない言葉を受けてラインハルトが問い返すと、マーガレットが怪訝な顔をした。
「ご存じないのですか?」
(何だその目は⁉︎ この僕をバカにしているのか⁉︎)
「そ、そんなことはないッ!」
「も、申し訳ありません!」
思わずラインハルトは声を張り上げてしまった。
険悪なムードが漂うパーティ。そんな空気を敏感に察してか、慌てたようにリリアンが口を挟んだ。
「魔法スキルの一種で、モノやヒトじゃなくて、空間に作用するスキルのことだよね!?」
「そう、そうですわリリアン!」
「フンッ! そんなこと僕だって知っているとも!」
ラインハルトは強がってウソをつく。
彼は強力なユニークスキルにかまけて、自身の技能や知識の研鑽を怠っていた。
ユニークスキルを除いた冒険者としての能力は、初心者と大差がない。
そのことに周囲はおろか、ラインハルト自身さえ気付いていなかった。
「とにかく、仮にワタクシたちが道に迷っているのが領域魔法のせいだとしたら、気をつけたほうがいいですわ。領域魔法は高い魔力を必要とする高度な魔法ですわ。仮に魔族が使用できるとしたら、その魔族のランクは――」
「だから、どんな魔族相手だろうと僕の聖剣があれば――」
そうラインハルトが反論しようとした瞬間。
ぞわり。
突如として全身を襲う強烈な悪寒。肌に突き刺さるようなプレッシャー。
ラインハルトたちは本能的に悟る。
敵と遭遇したことを。
名を持つ魔族――暗幕のナハト。
かつてラインハルトたちを全滅のふちに追いやった魔族が再びその姿を現したのだ。
しかも、ラインハルトの真後ろに。
「う、うわあああああ!」
ナハトの存在に気づいたラインハルトは恐怖のあまり絶叫し、ナハトに向かってやみくもに聖剣を振り回す。
しかし、そんな無様な攻撃がナハトに通用するはずがない。ナハトはその攻撃をなんなく避けると、ラインハルトに肉薄し、手にした片手剣で一閃した。
ズバッ!
「ぶひィ!」
ラインハルトはボロ屑のように吹き飛ばされる。
そして、そんな彼に追撃を加えようとナハトはラインハルトに肉薄した。
その瞬間。
「テレポーション――!」
マーガレットが【緊急脱出】の魔法を使用する。それは前回の探索失敗を受けて、彼女なりに念のため準備しておいたスキルだった。
間一髪のところでラインハルトたち三人は輝きに包まれて迷宮から脱出することができた。
こうしてラインハルトたち一行は、二度目の失敗を犯した。
彼らが三度、この迷宮に足を踏み入れることはなかった。
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