さくら
このまま時が止まればいいと
ありふれ過ぎた願いをかけた
雪解け水が空を映して
名残惜しげに小さく揺れた
教室、机、着慣れた制服も
明日になったら誰かのものに
いつも通りと当たり前とが
ゆるりと吹いた風に連れられ
飛んでいく
桜の花びらが 咲いて咲いて咲き誇って
散っていくよりも早く 僕はペダルを漕いだ
咲くなと言われても 咲いて咲いて咲き乱して
閉ざした蕾に春を告げにくるんだ
伸びた背丈に幼い心
ごまかすように尖って見せた
部活帰りの暗い夜道を
一番星が照らしてくれた
校則、試験、教師の小言
「ありがたみ」など言いたくはない
畳んだ翼広げてみても
望んだ自由 いざ手にすると
あっけない
桜の花びらが 舞って舞って舞い上がって
千切れる思い抱え 僕は一人で泣いた
咲くなと言われても 舞って舞って舞い踊って
濡れてる頬をふいに掠めていった
花びらひらり、散り終えた木は
変わらぬ場所で また春を待つ
散り散りになる友と僕とも
またいつの日か 変わらぬままで
会いたい
桜の花びらが 咲いて咲いて咲き誇って
散っていくよりも早く 僕はペダルを漕いだ
散るなと言われても 散って散って舞い散って
駆け抜けたアスファルトの上を彩る