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第1章 第1話 関係

「はぁー……」



 努力の末入学した学校に到着した俺は、思わずため息をついてしまう。本当なら授業料タダの特待生になれるはずだったのに、名前の書き間違えで一般入学になってしまうなんて。俺が悪いとは言っても悔やみきれないミスに、新生活早々ネガティブが溢れ出してくる。



 でもいつまでも気にしていても仕方ない。俺は一度頬を叩き、1年間過ごすことになる1年A組の教室に入ると黒板に書いてある通りの席に座った。最後列、窓際から二番目の席。教室も合わせ、奇しくも特待生入試の時に座っていた時と同じ席だ。



 となるとやはり思い出すのは、俺が消しゴムを貸した女子。彼女のせいで不合格、なんていう風には思っていないが、純粋にあのかわいい女子と同じクラスだったら嬉しいな、という感情だ。いや下心だな全然純情じゃない。



 でもよく考えると会ってしまったら困るな。たかが消しゴム一つで責任を感じてほしくないし、たかが消しゴム一つで恩着せがましいとか思われたくない。そもそもあの時一度顔を合わせただけの関係。向こうが覚えてるとも限らな……



「おはようございます。文月風人くん」



 そのはずだったのに。あの時と同じ俺の左隣に座った女子は、俺の名前を呼んで微笑んだ。



「な……あ……!」

「先日はありがとうございました。おかげで助かりました」



 俺のことを覚えてる! しかも、え、同じクラス!? 隣の席!? フラグ立っただろこれっ!



「いや全然! あんなの気にしなくていいからっ!」

「そういうわけにはいきません。本当ならあの後返却したかったのですが、風人くんすぐ帰ってしまったので……。明日返却しますね?」


「大丈夫大丈夫! 消しゴムも君にもらわれた方が喜ぶと思うし……!」

「ふふ、風人くんはおもしろいですね。そういうことならありがたくいただきます。本当に、ありがたいです」



 やばいやばいやばい! めちゃくちゃ、かわいい! しかもなんか好感度高そうだし……これマジいけるぞ! えーと、何すればいいんだ連絡先……? とりあえず名前を黒板で確認して……。



「……夜照さん?」

「はい、どうしましたか?」



 いやどうしたっていうか……黒板に書かれてるの、苗字だけなんだけど……。



「なんで俺の名前、知ってるの……?」

「回収の際に答案の名前が見えてしまったんです」

「あぁ、そうなんだ……」



 にこっとそうかわいらしく微笑まれたら、そうだと受け止めるしかない。あれ、でも……。



「答案の名前って俺……」

「そんなことより風人くん。試験の結果はどうでしたか? ここにいるんですから無事に特待生枠に入れたんですよね?」


「え……いや……」

「私とても心配だったんです。試験終了間際の風人くんすごい慌てててかわいかっ……そうだったので、もし私のせいで落ちてしまったらと思ったら……」


「あ……その……落ちちゃったんだけどそれは夜照さんのせいじゃないっていうか、俺のミスだから全然気にしないで……」

「そんな! 私のせいでそんなことに……」


「いやだから……違くて……」

「そうですか、わかりました」



 ……あれ? 何の話してたっけ……。なんか早口でまくしたてられたと思ったら話が終わってた。まぁいいや。



「ですが私は一つ風人くんに借りがある。これは変わりません」

「まぁ……そうだね……」



 別に目を離していたわけではない。ずっと彼女の顔を見ていた。それなのに、



「つまり、風人くんは私に一つ命令をすることができるということです」



 夜照さんの笑顔が、俺の目の前に来ていた。



「私は消しゴムがないと試験に落ちてしまっていたかもしれません。それは学費で換算すると数百万円にのぼる恩。そして私の家では恩は倍にして返すことにしています」

「あぁ……そうなの……?」



 とてもかわいい顔だ。一目惚れ、とまでは行くかわからないが、誰でも異性として意識してしまうほど、魅力的。それなのに、



「その範囲でしたらどんな命令も無条件で頷きます。なんでも命令してくださいね? ふーとくん」



 手で口元を隠しそう笑う夜照さんの笑顔は、かわいい以上に怖いと思った。

 お読みいただきありがとうございます。


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