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第2章 第4話 デート(仮)の開始

 落ち着け。落ち着け落ち着け落ち着け。日曜日、駅前に佇む俺はそう念じ続けていた。



 新泉さんから買い物に誘われた。が、それだけだ。ただ買い物に行くだけ。ようするに荷物持ちだ。



 だからこれは決してデートなんかじゃない。緊張する必要なんかないんだ。



 それに新泉さんとにこぴーは同一人物だが、別人。仮に。仮にデート展開になったとしても、別に推しとデートするわけじゃないんだ。だから、落ち着け――。



「おまたせー」

「かわいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい」



 新泉さんが来た瞬間、叫んでしまった。駄目だ。頭ではわかっていてもそれ以外の俺の全てが全力でにこぴーのかわいさに完全敗北している。



「あのその……服とか髪型とかカバンとか、全部、似合ってて……その……」



 髪を下ろし、眼鏡をかけた新泉さんの姿。記号だけで言えば正体を隠していた時のものと一緒だが、違う。髪先はくねっと遊ばせていてこなれ感が出ているし、伊達眼鏡も大きな丸型でおしゃれな感じだ。



 服もなんか、やばい。白色のもこもことしたベレー帽に、ピンクのブラウス。そしてそのファンシーさとは対照的な黒いリボンとミニ丈のジャンパースカートにニーソックス。小柄だが大きめの胸が際立っていてこれは……。鹿島さんが見たらひどい言葉を浴びせそうなほど地雷系ファッションと言えば地雷系ファッションだが! にこぴーの地雷なら喜んで踏んで爆発したい……!



「ありがとう。ところでなんで風人くんは制服なの?」

「や……新泉さんと歩くってなったらその……浮きそうで……もうこれくらいしか選択肢が……」

「そっか。じゃあわたしが選んであげるね。これでも一応芸能人だからファッションはわかるし」



 ……マジで? 推しに服選んでもらえるの……? ほんとに言ってる……?



「その前にカフェにでも入ろっか。待たせちゃ悪いって思って待ち合わせより1時間早く来ちゃったから疲れちゃったんだよね。風人くんはいつからいたの?」

「始発」


「あー……。ごめん、ちょっと引いちゃった……」

「だってにこぴ……新泉さんを待たせるなんてありえないし……」


「じゃあ一緒だねっ」

「かわ……!?」



 ふわっと微笑むすの姿はもう天使としか言いようがない。いや睨んでても天使なんだけど……ほんとにかわいいなぁ……。もうこれだけで俺死んでも……。



「えいっ」

「!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?」



 新泉さんが突然腕に抱きついてきて。俺の心臓は確実に5秒くらい止まっていた。



「な、なななななにを……!?」

「実はね、今度ドラマ出ることになったんだ。その練習?」


「ドラマ!? すごいっ! おめでとうっ! どんな役っ!?」

「……主人公の親友の友だちCの妹のクラスメイトE……」


「すごいじゃんっ! うわー……楽しみだなぁ……!」

「ほんとにちょい役なんだけどね……。でも役をもらえたのは風人くんのおかげだよ」


「え?」

「風人くんがファンだって言ってくれたから……風人くんのためにももっとがんばらないとって思ってプロデューサーさんにお願いしたの。だから……」



 少し顔を紅潮させて見上げてくる新泉さんに、俺は。



「でもアイドルなんだからこういうのは……」

「大丈夫だよ。一応変装してるし、誰もわたしのことなんか知らないし。さぁ、いこう?」



 …………。まぁそれがにこぴーの演技に活きるのなら。これは新泉さんのためになるんだろう。



「わかった。いこうか」

「うんっ」



 そう納得し、俺たちのデート(仮)は始まった。



「あ、あの泥棒猫ぉ……! ふーくんに色目使いやがってぇ……!」

「まぁまぁ。それよりももう帰りませんか? 制服を着てるってことは変なことにはならないでしょうし、始発から監視していてもうねむ……」


「なに言ってるの椿! このまま尾行続けるよ! だいたい椿が止めてればこんなことには……!」

「そんなこと言われても……」


「あ、移動し始めた! いくよ椿!」

「……はーい」

デート編開幕です! おもしろかったら評価とブクマよろしくお願いします!!!

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